イシノラボ/マスターズ店長の連載

第2弾 オーディオアンプ講座

第7章 電源部 - 電気2重層による電源

電気2重層(Electric double-layer capacitor)コンデンサーは1970年代から商品化開発が活発になり、近年では、1F(100万μF)/5Vは@¥100で入手できるようになりました。サイズは500円硬貨程度です。

コンデンサーはバッテリーと異なり、化学反応により電気エネルギーを蓄えるものではないので、その寿命は長いです。イオンそのものが蓄えられます。
充放電の反応は早く、10万-100万回程度の充放電サイクルが可能だと考えられています。
電解コンデンサーに比べ、静電容量は数千倍も大きいです。但し、耐電圧は低く、2.5Vが標準で、3Vくらいが限度ですから、直列接続で、アンプ電源として対応します。
(参考)ニッケミ(株)による電気2重層(ニッケミではDLCAPと呼んでいる)の解説によると、その用途は電力の貯蔵、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車の回生ブレーキやアイドリングストップ用に使われ始めています。

オーディオアンプへの応用

オーディオ界は保守的ですから、このような電気2重層をオーディオアンプ電源に応用しようとする動きはありません。現在、マスターズだけといえます。
最も手軽に応用できるのは、真空管アンプのDCヒーター点灯といえます。
300Bや2A3などの直熱3極管には、ハムノイズ低減にヒーターDC点灯は有効です。
これまでは、大容量ケミコン(1万μF)や安定化電源でおこなってきました。スペースを取られたり、回路が複雑となる面倒さがあります。
その点、上記、1F/5Vの電気2重層を平滑用に使用すれば、安価にかつスペースをセーブして実現できます。

耐圧が2.5Vと低いので、半導体アンプへの応用は電源電圧が±12V程度の少出力アンプへの採用が考えられます。
1台に8~10本使えば、充分バッテリー電源に匹敵する電力を充電でき、また放電できます。

参考のため、計算してみましょう。
800F/2.5Vを5本シリーズ接続すると、その静電エネルギーは、1/2×C×V×Vで表せます。
電源電圧を±12.5Vを代入すると、1/2×(800÷5)×12.5×12.5=12500ジュール(W)/secになります。
さらに、±2電源ですから、総量は25000W/secに達します。
実際、聴く音量はせいぜい平均0.1W、アンプの効率を25%とすると、0.5W/secとなります。
25000Wを0.5W/secで割ると、50000秒≒14時間連続使用できることになります。
実際、この条件に近い試作アンプを実験すると、2時間以上軽々と連続使用できました。
従って、一度充電しておけば、電磁波ノイズのない、低内部抵抗、リップルゼロの優秀電源搭載アンプができることになります。
現在のところ、800F/2.5Vの電気2重層の価格は@¥3,000以上するので、安価なアンプとはなりませんが、インバーター付きのバッテリー電源を用意するより、安価で理想電源搭載アンプになる可能性があります。

2019年12月10日掲載