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半導体アンプの電源操作時のショックノイズの原因

半導体アンプの電源ON/OFF時のショックノイズの原因について、解説します

通常、半導体アンプは+電源とー電源で動作します。

例えば、+30V、0V、-30Vで設計したアンプを電源ONすると、+電源と-電源とが時間をずれて立ち上がります。
仮に、+30Vに0.8秒、-30Vに0.5秒とすると、その差0.8秒-0.5秒=0.3秒間、±電源がアンプに掛かる電源電圧がアンバランスになりますので、NFBによって出力0Vにしようとしても、間に合いません。パワーアンプなら、大きなショック音がスピーカーから出ます。

この現象は、主に初段回路の+、-電源の立ち上がりの時間差が主な原因です。オシロスコープでその様子を観測すると、はっきり分かります。

この現象を防ぐ意味で、音質には良くないですが遅延リレーを付けて、0.3秒以上経ったら、SPに接続されるようにします。

アキュフェーズのアンプも原理は同じですが、リレーの代わりにMOSFETをリレー代わりにして、遅延回路で遅らせて、スピーカーに接続させています。

いわば、必要悪なのです。

マスターズのZバランス回路、Xカレント回路は±電源電圧が電源ON時、時間のずれがなく立ち上がるように設計しているので、理論的にショック音が出ません。

具体的には、初段回路をコンプリメンタリー上下対称差動回路で構成しているからです。
仮に発生するとしたら、初段回路での立ち上がりのわずかな時間差が原因ですが、「プチ」と小さいショック音です。
その発生電圧は小さく、短時間なので、スピーカーには悪影響を与えることはありません。

ちなみに、真空管アンプは立ち上がりにおいてノイズが出るはずですが、立ち上がりがゆっくりしているので気にならず、また、スピーカーに悪影響を与えることもありません。

但し、気になさる方には、スピーカー出力回路にON/OFFスイッチを付けて、マニュルでおこなうか、遅延リレーを付けて、解消することもおこなっています。

また、回路抵抗のわずかな誤差がないように、0.1%レベルで、初段デバイスを選択して調整することもあります。


高効率ホーンドライバー用パワーアンプについて

パワーアンプとスピーカーとの関係

パワーアンプとスピーカーとの関係をシンボルに使って、【図1】に示します。パワーアンプは一般的な半導体パワーと仮定します。仮に、接続するスピーカーのインピーダンスを8Ω、効率90dBとします。効率90dBとは、スピーカーに1Wの入力(2.83V/8Ω)を加えたとき、1m離れた時点に発生する音の大きさを音の単位をデシベル(デシベルとは、電話発明のベルのあたまにデシ(1/10の意味))を付けて表します。

音の単位は、フォンということがかつて一般的でしたが、現在ではデシベルで表します。静かな部屋の暗騒音は30dBくらいなら、大変良好なリスニングコンディションと言えます。ちなみにスピーカーの特性を測定する無響室の暗騒音レベルは20dBがやっとです。(厳重な防音設備が施されます。)イシノラボのリスニングスペースの暗騒音レベルを測定してみました。48dBでした。一般的にエアコンをつけると暗騒音レベルは10dB以上、上昇します。夏のオーディオリスニングは不利な条件です。
ところで、90dBの音はかなりうるさい大きな音です。連続音ですと、5秒も続けば近所迷惑になります。
このとき、アンプに必要な入力電圧は、このパワーアンプの増幅率を10倍(20dB)とすると、2.83Vの1/10の0.283Vになります。プリアンプから、0.283Vをパワーアンプに加えればそうなります。
そこで、高効率ホーンドライバーをこのアンプに接続したら、どうなるでしょうか?ホーンドライバーは非常に高効率です。ここでは110dBとします。110dBの音はジェット機離陸を近距離で聴いたことに相当するくらいの大音量です。長時間聴くと、難聴になります。ちなみにオーケストラのFFFでも指揮者の位置で110dBを超えることはありません。例外として、グランカッサの一撃では110dBを超えることはあるでしょう。
“ちょっと待って!”という声がかかりました。“私は1mという近距離で聴くことはないです!”、“スピーカーから4mくらいの距離で聴きます。
110dBという音量は2mと倍の距離で聴くと、6dB下がり、104dBになります。4mとなると、さらに6dB下がって、音量は98dBになります。これくらいの大音量では、少なくとも、難聴になることはありません。それなら、ホーンドライバーから出る音量はもう少し大きくでるようなマージンがあっても良いとなると、1m距離で6dBアップさせると110dB+6dB=116dBの音量になります。ホーンドライバーに入る電圧は2倍になり、電力に換算すると4倍の4Wになります。ちなみにホーンドライバーの耐入力は4~5Wに作られています。パワーアンプの最大出力は4Wもあれば充分過ぎることになります。私は、ホーンドライバー用アンプの最大パワーは2W~3Wが最適と思っています。
ところが、オーディオアンプメーカーからは小出力のパワーは販売されていません。例えば100Wアンプで、ホーンドライバーを動作させることは、ホーンドライバーを破壊させるかも知れない恐ろしく乱暴なことだと思います。

パワーアンプのゲインと残留ノイズの関係

前述の事項をパワーアンプの性能面で記します。10倍(20dB)のゲインを持つアンプに110dBのホーンドライバーを接続すると、少しの入力で、大きな音が出てしまいます。プリアンプのボリウムを少し上げただけでそうなってしまう現象が発生します。それは我慢するとして、アンプのノイズ成分は90dBのスピーカーを接続したときより、10倍(20dB)も大きなノイズが再生されます。これでは、音楽成分にノイズ成分が相対的に大きく聴こえてしまいます。せっかくの高効率もノイズが大きく聴こえてしまっては困りものです。
その解決法は、パワーアンプの増幅度を上がった分だけ下げれば、ノイズ成分は下がってきます。簡単で多くの場合、なされる方法はNFB量を増やすことです。NFB量を増やせば、ゲインは下がります。けれども、パワーアンプのS/N比はノイズ成分が下がった分だけ増幅度が下がるので、S/N比(ノイズ/再生信号レベル)は変わりません。
NFB量を増やすことは、アンプ自体(オープンループと言う)の周波数レンジを広げないとアンプとしても発振安定度を悪化させます。具体的には電圧フィードバック方式のパワーアンプでは必要な再生帯域のゲインを維持して、超高域の周波数特性を落とす(位相補償)ことでかろうじて、実用化できています。真空管アンプではNFBループにコンデンサー時定数、出力トランスが入っているので、発振安定度は悪化し、位相補償することでそのアンプの音質が劣化してしまいます。故、上杉氏はNFB量14dBくらい限度という持論で、私も支持します。

半導体アンプは直結回路ですから、すぐ感知できる音質劣化はないものの、位相補償を施しても、どこか音質がイマイチということで、NFB量50~60dBくらいが限度と認識している設計者が多いようです。その面からも著しく増幅度の低いアンプは販売されていないことをみても分かります。市販アンプ自体の増幅度は20dBから30dB、大きくても38dB(65倍)くらいに収束します。

マスターズの考えるホーンドライバー用パワーアンプ

ちょうど、現在製作している上記使用目的のパワーアンプについて述べてみます。バランス増幅アンプで実現させると基本回路はZバランス回路を採用します。そして、このパワーアンプ部の増幅度を18dBとわずかに低くしました。NFB量を多量に増やして、増幅度を下げることはしていません。(この時のノイズレベルは80μV(LPF:80kHz)
そうして、トランス式パッシブプリアンプで高音質を得ているスーパーパーマロイコア採用のマッチングトランスを、パワーアンプとホーンドライバー間に設置することにしました。このマッチングトランスの巻線方法は1次/2次巻線を2本同時に巻くバイファイラー巻きを施して、かつ、巻線比は3:1としてあります。(【図4】参照)
ホーンに掛かる電圧は1/3に低下しますから、マッチングトランスによる増幅度の低下は9.5dBになり、このパワーアンプの仕上がり増幅度は18-9.5=8.5dB(2.68倍)となり、高効率ホーンドライバーを動作させるには具合の良い増幅度になります。ですから、プリアンプのボリウム位置は少し回して大音量になることなく使いやすくなります。(0.283÷2.68≒0.11V入力で、90dBの音が出てくる。)そして、ノイズレベルは80μ÷3≒26μV(LPF:80kHz)と超低ノイズのパワーアンプができます。(【図5】参照)
さらに良いことに、ホーンドライバーのインピ―ダンスは8Ωですから、パワーアンプの負荷インピーダンスは8×3×3=72Ωなります。このパワーアンプは負荷抵抗72Ωなりますから、パワーデバイスに流れる電流が同じ分だけ減少し、MOSFETのリニアリティ(ひずみ)がアイドリング電流を増やすことなく改善されるAクラス動作になっています。
最大パワー電圧はトランスなしの直結条件では8Ω/14V出ますから、計算上14V÷3≒4.67Vになりますが、負荷抵抗が大きくなる分、アンプ電源供給電圧の低下が少なくなるので、実際は5V以上(3.12W)出ます。
パワーが下がった分、ホーンドライバーにとって安全になり、さらにマッチングトランスによりDC成分はホーンドライバーには加わりませんのでさらに安全になります。
もちろん、そのサウンドはTANNOYアーデン(93dB効率)で聴いてみました。混濁感は全くなく、澄み切ったサウンドが出てきました。
まだ、実験していませんが、電源をバッテリーにすればさらに素晴らしいサウンドのアンプになるでしょう。
最後に、アンバランス増幅で制作するときは、Xカレントアンプを採用すれば、同等の優れたアンプができると思います。その費用はバランス増幅アンプに比べてお安くなります。
ニア・フィールドで聴きたい方にもお勧めです。(【図6】参照)

【図1】パワーアンプとSPの接続

【図1】パワーアンプとSPの接続

【図2】パワーアンプ、ホーンドライバ、リスナーとの関係

【図2】パワーアンプ、ホーンドライバ、リスナーとの関係

【図3】Zバランス増幅アンプとスピーカの関係

【図3】Zバランス増幅アンプとスピーカの関係

【図4】Zバランス増幅アンプとホーンドライバとの間に挿入されるマッチングトランス

【図4】Zバランス増幅アンプとホーンドライバとの間に挿入されるマッチングトランス

【図5】ホーン、ドライバとリスナー位置による音圧との関連

【図5】ホーン、ドライバとリスナー位置による音圧との関連

【図6】Xカレントアンプによるホーンドライバを構成する方式

【図6】Xカレントアンプによるホーンドライバを構成する方式


プリメインアンプ“MASTERS AU-888TR/L custom”が完成

ホームーページの特別ご提供品に、プリメインアンプ“MASTERS AU-888TR/L custom”を掲載いたしました。
既にこのアンプが完成しましたことをお伝えいたします。

Aクラス用マッチングトランスを搭載したこともあり、このアンプは割と重く、ぎっしりとした構成になりました。
パワーは充分な12W、マッチングトランス負荷によるAクラス動作では1.2Wと、通常リスニングではうるさいくらいの音量が出ます。

そのサウンドは、なめらかで、パワフルでダイナミック、低レベルの音量でも見事です。
どうしてそうなったのかは、オーディオアンプでは断言できませんが、以下の要因といえるでしょう。

  • 回路(Xバランス回路):料理で言えばレシピ。
  • 部品(サンスイカスタムトランジスタ):料理で言えば、食材。
  • 設計製作者のパフォーマンス: 料理で言えば、シェフの腕前。

聴いて良い(食べておいしい)のかは、ユーザーの好みもありますが、客観的に感じ取ることは可能でしょう。

なお、近郊の方はこちらの工房で視聴することもできます。

※試聴をご希望される方は、必ずご予約をお願い致します。


MASTERS AU-888TR/L custom


MASTERS AU-888TR/L custom


MASTERS AU-888TR/L custom

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