イシノラボ/マスターズ店長の連載
第2弾 オーディオアンプ講座
第9章 オーディオアンプと商用電源との関連
商用電源との関係
【第20図】に示すように、プリアンプとパワーアンプと商用100V電源との関連は少し複雑になります。
そもそも、日本の商用電源は3相6600Vから柱上トランスによって、100V(巻線タップは110V)に降圧されて、各家庭の配電盤に入ってきます。
漏電感知器、電流ブレーカーと通って、壁コンセントにきています。通常の家庭用ACコンセントには極性表示はありませんが、片方がLIVE(+側)、NEUTRAL(-側)となっています。
NEUTRAL側は柱上トランス中点から、その電信柱地面にアースされています。
従って、NEUTRAL側をタッチしても、普通は感電しません。
そして、AC100V回線は電源ケーブル、電源スイッチを介して、電源トランスの1次側に入ってきます。
電源トランスの2次側でDCに整流されて、アンプ電源起点は2次巻線の中点になり、中点はアンプ全体の静電シールドを施すために、アンプケース(シャーシ)に接続されます。いわゆる“ケースに落とす”と言います。
【第20図】に示すように、プリアンプとパワーアンプとはRCAピンケーブルによってアース(グランド)接続されており、その電磁界ループは小さく、問題ありません。
近年、グランドケーブル付き3線式の電源ケーブル方式に合わせているアンプが大部分になりました。
これに合わせて、アンプの電源インレットのグランド端子から、シャーシにケーブルで接続したらどうなるでしょうか?
そうしますと、(【第20図】参照)プリアンプとパワーアンプとの間にもうひとつのグランドループができてしまいます。その磁界から発生した電圧がアンプ入力に入って、スピーカーから“ブーン”というノイズが出てしまいます。
その防止法は、アンプの電源インレットグランド端子に配線しないことです。これで解決です。
従って、市販の3芯→2芯電源ケーブルを使用することが問題をおこさない方法とも言えます。
数年前、電源ケーブルのグランドケーブルとオーディオ用テーブルタップを使うことによって、上述のトラブルが多発し、慌ててオーディオ誌が注意を呼び掛けた騒ぎがありました。
なお、プリメインアンプでは、グランドケーブルを使ってもグランドループをつくらないので、ノイズ発生がないことがありますが、CDプレーヤーとの間で同じようなトラブル現象を起こすことがあります。
要はグランドループをつくらないことがトラブル防止のポイントです。
参考に、【第21図】に示すように、パッシブプリアンプとバッテリードライブパワーアンプとの組み合わせでは、全く電源による電磁波ノイズが無くなり、さらにグランドとの問題が無くなり、S/N比がぐんと上がったように感じられるサウンドになります。
【第21図】パッシブプリアンプとバッテリー電源アンプとのグランド関係
少なくともプリアンプは【第22図】に示すようにパッシブプリアンプでも電源問題が半減します。
【第22図】パッシブプリアンプとパワーアンプとのグランド関係
但し、パッシブプリアンプではないときは電源コンセントからのグランド線は接続しないこと、ハムノイズが出る
要は、電源コンセントのグランドは不要、3線→2線変換電源ケーブルの使用が良い
さらに、【第23図】に示すように、Zバランス増幅回路では、グランドに関係なくスピーカーをドライブできますから、商用電源ドライブにおいても、理想的なアンプに近づきます。
【第23図】グランドフリー動作のZバランス回路の電源との関係
Zバランス増幅ではグランドフリー増幅になるので、グランドは増幅基準点の役目だけで増幅には関係しないため、電源電磁波ノイズの侵入がない性能になる。
商用電源の極性とは
【第20図】に示すように、日本の電源供給方式は2線式、そして、片側がグランド(アース)電位になっていることを前提としています。
けれども、壁コンセントにきている電源はどちらがグランドであるか?どうかは分からないようになっています。
しかし、屋内配線工事士はライブ(+)を黒か赤で、ニュートラル(-)は白で配線されていますから、壁コンセントのカバーを外してみると判明します。
また、そうしなくとも、検電ドライバー(ネオン放電方式)を壁コンセントに差し込んでみれば、ネオンが放電したほうがライブ(+)です。
但し、電源極性とアンプのアース電位とは直接の関係はありません。電源トランス漏洩磁束の向きは反対になります。
残留ノイズがそれにより変化することがあるので、使ってみて、良い方を選択下さい。電源極性はどちらにしてもアンプが不具合になることはありません。
2020年2月13日掲載
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