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プリアンプのあるべき姿とアクティブアンプ設計の難しさ

きっかけ

プリアンプはCDが登場して、CDプレーヤーの出力が2Vmaxと高いので、従来のプリアンプのように、17.6dBのゲインを持つ必要がなくなった。
むしろ、パワーアンプへ送り込むオーディオ信号の調節に主たる役割があると言えましょう。
それでも、アクティブアンプ方式のプリアンプは、ラインアンプゲインを12~18dB程度のゲインを持たせて、構成しているところが多いようです。
実際の使用に際しては、減衰器としての動作がほとんどです。むしろ、プリアンプゲインは0~6dBもあれば充分です。
それでも、上述のようにゲインを持たせてしまうのは、半導体アンプのオープンループは80~110dBも取れてしまうので、プリアンプとしてもゲインを得るためには、例えば、オープンループゲイン:80dB、プリアンプゲイン:18dBとすると、80-18=62dBもの多量NFBを掛けているのです。
NFBは、S/N比は改善出来ませんが(NFB量だけゲインが減るから、何処までいってもS/N比はアンプ基本回路で決まる)、残留ノイズとひずみと出力インピーダンスを下げることができます。
すべての現象は、必ず作用をさせれば、反作用があります。プリアンプでは、それは何でしょう。パワーアンプなら、スピーカーからの逆起電力などの反作用があります。プリアンプは負荷がパワーアンプの入力インピーダンス分だけですから、発振安定度にも問題ないように見えます。
連続波による電気的性能を見てみると、多量NFBにより、ひずみは極小に収まります。普通に作れば、プリアンプは簡単にできそうに見えます。
(バランス回路についてはこの際、考えないとします。)
それでは、皆さん、プリアンプについて、悩むことはなくどれを選んでも良いように思えます。一方、どのプリアンプも使う気にならないというオーディオファイルもおられます。その言い分は音質がいまいちと言うものです。

NFB量とNFBの正しい掛かり方

NFBアンプはNFBを掛けた分、ゲインが下がり、また、入力と出力との位相差は高域にいくほど大きくなります。
NFBは入力と出力との位相差がなければ、NFBの作用が理想的に作用し、副作用的な現象は起こりません。
具体的に、2段構成(ほとんどのアンプ)アンプですから、高域端では、その位相偏移は180度に達します。そのとき、そのアンプが、ゲインがあれば発振します。一応、アンプ設計の常識では、位相偏移が135度以内なら、問題ないと言われて、多くのNFBアンプはそうなっています。
果たして、位相差が大きな信号が入力の演算(サミングポイント)がうまく作用して、うまくいくのでしょうか?連続波でひずみを測定してもうまくいっているのです。
ところが音楽は複雑な不連続波ですから、NFBが正しく動作していると言うことは断言できません。特に、近年、高周波ノイズ(電磁波ノイズ)がまき散らされています。高周波ノイズが入力すれば、さらにさらに、NFBはおかしな作用しかしなくなるでしょう。
だから、アンプは聴いてみないと分からないと言われてしまうのです。
このあたりの問題を追究した方はごく少数の方だけです。
このように検討の行き場を失ったアンプ設計は、部品を選択したり、配線材を変えたり、振動防止をしてみたりして、結果として音調を変えたに過ぎない努力をしているという見方もあります。
むしろ、もう少し、NFBをオーディオ的に考えるべきと思います。
究極な方式は、NFBを掛けない無帰還アンプにすることです。オープンループ特性では、真空管は徐々にひずみが取り扱う電圧が大きくなるにつれて増加しますが、入力が小さいときは0.02%くらいの値を示します。
だから、大きな信号時にはひずみが0.5%と大きくなっても、愛好するオーディオファイルは少なくないのです。

NFBに関係なく、高音質プリアンプを実現

もっと、方向を変えて、アンプを用いないトランス式プリアンプはNFBまるでなく、磁気素材の性能と巻き線技術で出来ています。
その結果、我田引水になりますが、MASTERSのトランス式パッシブプリアンプは、連続波であろうとオーディオ信号であろうと、ひずみは発生しません。ですから、まったく次元の異なるサウンドなのです。幸い、高い評価をいただき、私はせっせと製作しております。

NFBアンプを高音質化する方向

さて、もう少し、NFBアンプを見捨てずに考えると、NFBにより位相偏移をより小さくすることを考えるべきと最近思い始めました。
具体的には、位相偏移が大きいと、アンプの入力インピーダンスは負性抵抗分が発生します。この防止対策には、入力に抵抗を付加して、負性抵抗を打ち消したり、位相偏移を小さくするために、位相補償を施して、対策する方法があります。振り返れば、かつて、山水のAU-607以来、2ポール位相補償回路によって、少なくともオーディオ帯域(~20kHz)まではオープンループをワイドして、NFBが位相偏移を起こさないよう考慮していたのです。それ以上の高域はフィードフォワード回路で、ひずみ低減を図っていたのでした。
このような方策によって、音質が確かに向上します。
けれども、近来のインバータ、スイッチイング電源、パソコン、携帯、スマホ等から発する電磁波ノイズがアンプに入り込み、NFBの弱点である位相偏移の大きい高周波領域(100k~10MHzあたり)で、NFBを混乱させます。このような現象によって引き起こすひずみ(NFBひずみと言うべきか)が発生して、その成分がフォールダウン現象によってオーディオ帯域に降りてきます。そこで、濁った、抜けの悪い、詰まった、というようなヒアリング現象を引き起こす可能性があります。一方、このようなサウンドがある種のプログラムソースではプラスに作用して、パワフルと言う方もおられます。
結論として、厳しく考えると、NFBアンプの位相偏移は90度以内に収めることが最低限度必要と考えます。

なお、近年、上記のような電圧帰還ではなく、電流帰還(カレントフィードバック)回路を採用しているアンプがありますが、これは後日、記述したいと思います。

お知らせ

マスターズのパッシブプリアンプ・ヒアリングをご希望の方は、いろいろなパワーアンプ、スピーカーと組み合わせることができる“サウンドハイツ”(千葉県市原市)にセットされておりますので、そこで、存分にお聴きください。


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