昨年EL34を採用したSTAX専用アンプをお買いになったユーザーさんからうれしいお便りをいただきました。そのアンプは元気に動作しているとのことです。
さて、あれから2台のSTAXアンプの注文があり、納入し、健在で動作しています。
こちらのアンプはメイン回路は純真空管回路なので、STAXさんのアンプと味わいが異なるようです。それは、オーディオを楽しむことにおいて、興味が尽きないことです。
今年の3月末に、STAXアンプのカスタム仕様アンプの注文を受けました。
今度は、電源部とアンプを分けたアンプとのリクエストです。やはり、電源部を別筐体とすると、電源トランスの振動、漏洩磁束の問題がフリーとなるので、良質なアンプを作る上には有利になります。アンプの振動対策にいろいろ工夫するよりも、電源別にするほうがはるかに効果があり、完璧を期すことができます。増幅部では、ドライバー管は6350のパラプッシュプル、プリドライブ管も5963のパラレルという豪華さです。また、コンデンサースピーカのバイアス電圧は、高くすると切れ味がアップし、低くすると音圧が下がりつつゆったりサウンドになります。このあたりの音質の変化を楽しめます。
写真に示しますように、筐体は“MASTERS BA-225FB/MOS”をベースにしています。これが電源部とアンプ部と別になると壮観です。なお、価格は、できるだけリーズナブルな価格となるように努力していますのでご安心下さい。納期は40日くらいかかります。
高効率ホーンの切れ味シャープなサウンドはそのユニットが高価にも関わらず人気が高く、チャンネルアンプ方式でホーンシステムを構築している方は全国では推定400~500人位いらしゃるようです。
私もいくつかのシステムを聴かせていただきましたが、ノーマルな完結したスピーカーシステムとは一線を画すサウンドを感じました。特に、強力な磁気回路でダンプされるサウンドはあいまいさを許さない再現力があると思います。
アンプにはどの程度のパワーが必要でしょうか?
- ホーンドライバーの効率は非常に高いです。ホーンドライバーの効率を110dBと仮定しましょう。この意味は、1Wの電力をホーンドライバー加えたとき、1m離れた地点で110dBの音圧(無響室)があるということを示します。ホーンから2m離れた地点でヒアリングすると、音圧は6dB下がり、104dBになります。4m離れて聴こうとすると、さらに、6dB下がり、98dBになります。(音圧は距離が2倍になると6dB低下します。また、アンプのパワーは3dBさがると1/2になります。)
- 110dBという音はとても大きく、平均レベルでは聴覚を痛めてしまう音です。ジェット機の騒音に近いものがあります。したがって、4m離れた地点で、98dB以上の大きな音を出さないことと仮定して話を進めます。
- そうなると、アンプの出力は1Wあれば良く、マージンを見ても5Wあれば、充分過ぎるほどです。(2Wになれば3dBのマージン、4Wになれば3dBのマージンがあります。)
- 戦後のオーディオ界に大きな影響を与えた、故、高城氏はホーンドライバー用のアンプは自作した5Wアンプをずっとお使いになられたことは良く知られています。
- そのような観点からアンプを探すと、いわゆるメーカー製のアンプはいずれもパワーが大きすぎ、最近のAクラスアンプでも25Wあたりが最低で、みな、それ以上のパワーが出てしまいます。ホーンドライバー用のアンプはなかなか見つからない現状です。
- それでは、パワーの少ない真空管アンプ(例えば、2A3Bシングルの3Wアンプ)はホーンシステムに使えるでしょうか?おそらく、お使いになっている方はいないと思います。それはなぜか?その理由はハムを含む残留ノイズが大きいから、ホーンドライバーから、ノイズが聴こえてしまうからです。この手の真空管アンプの残留ノイズは1mV以下であれば(いわゆるAネットワークでは測定しない。高域は80kHzくらいでカットしたワイドバンドフィルターで測定する)、合格とされています。
- ところがホーンシステムでは、効率が高いために大きな音になってしまうのです。
上述した、最大レベル98dBとした場合、平均的に聴く音量は20dBダウンの78dBとすると、アンプのパワーは1W/100の10mWしか必要としません。
1W/100=10mW→0.28V(8Ωのホーンドライバーの場合)→280mVで、充分な音量が得られるのです。
このときのS/N比を計算してみると、残留ノイズ÷アンプの出力=1mV÷280mV≒50dBくらいになりますので、悪化していますが、ヒアリングにはそれほど障害にならないかも知れません。
- 音が小さくなったとき(ppになったとき)や、音が途切れて、静寂が音楽にとって重要な意味を持つとき、それは、平均レベルから、さらに20dB下がった音量としましょう。
- そのときの、アンプの出力はさらに1/100になり、0.1mW→28mV(8Ω)で済みます。そのときのS/N比は、1mV÷28mV≒30dBしか取れません。大変残念な値です。
- そのようなわけで、真空管アンプでホーンを鳴らしている方がおられるとしたら、ノイズを気にしない大らかな方と言えましょう。
- そこで、残留ノイズの少ないアンプは当然、半導体アンプになります。半導体アンプのノイズは平均的アンプでは0.3mVくらいです。従って、残留ノイズ1mVの真空管アンプに比べれば、1/3の残留ノイズに、10dBのS/N比の改善になります。
多くの、ユーザーさんは、pp時のサウンドでは、40dB程度のS/N比で聴いていることになります。(具体的には、オーディオ信号のなかに1%のノイズ成分が混ざっていることになります。)
- さて、もっとS/N比上げれば、さらにホーンドライバーの切れ味良い、クリアなサウンドが得られると思いませんか?
ところで、そのときの残留ノイズの音の大きさを考察してみましょう。
1m離れた地点では、
1W→110dB
0.1W(100mW)→100dB
10mW→90dB
1mW→80dB
0.1mW→70dB
1mVの残留ノイズは30dBダウンとなるので、70dB-30dB=40dBの雑音がでることになります。
0.3mVの残留ノイズでは、10dB下がって、30dBの雑音がでます。
30dBの音を4m離れたところで聴けば、12dB下がるから、これでよしとすれば、それで良いと思います。
- ところが、ユーザーの皆さん、わたしもそうですが、どのくらいノイズが出ているかをチェックするために、耳をホーンに近づけます。近づくと、どのくらい音が大きくなるかを計算してみましょう。
0.3mVのノイズがあると、1mの地点で30dBの音は、50cmに近づけば、6dBアップの36dBに上がります。
25cmになれば、42dBの音になります。
12.5cmになれば、48dBになります。
6cmに近づけば、54dBになります。
この音の大きさはパソコンのファン騒音に匹敵します。
- 細部にこだわるオーディオファンの方がこのようなノイズを許せるのかどうかはどうでしょうか?
すばらしいサウンドを得たいとすれば、いろいろなアクセサリー(ケーブルとか)に走る前に、まずはノイズの少ないクリアなサウンドにするのが基本ではないでしょうか?
このような使い方はマスターズのウルトラローノイズ・高音質パワーアンプ“MASTERS BA―225FB/MOSj”だけが可能です。このアンプの詳細はリンク先の記事をご覧になっていただければと思います。
このたびアメリカから入荷したGE製オイルコンは、ウエスタン・エレクトリックに納入されるコンデンサで、その証しにKSナンバーがつけられています。
さて、このコンデンサの効果を確かめるべく、こちらにあるバランスパワーアンプEL34ppアンプの整流回路についているケミコンを外し、GEのオイルコンを2個代わりにつけてみました。アンプからケーブルを引き出しそれに接続したのです。
ケミコンのもつ、やや粒が粗いところが取れた感じで、奥行き感が増し、透明感や鮮明感も向上したように感じました。それでいてパワフルさが減ったような感じはまったくありません。
これまでは日本製フィルムコンをBA-218に搭載して好結果を得ていました。フィルムコンでは、綺麗で透明で汚れのないサウンドです。
どちらが良いかは簡単には申し上げられませんが、POPSやジャズ系がお好きな方にはGE製オイルコンがぴったりマッチすると思います。
興味のある方はアンプへの取りつけ方法を工夫して搭載されるもよし、私のようにケーブルを引き出してとりあえず聴いてみる方法もあります。
実を言うと、このオイルコンは3年くらい前に数本入荷しましたが、気に入った方にすぐにほとんどご購入いただき、ここしばらく入荷しなかったものです。いずれせよ、ビンテージものですので、常時在庫にはなりません。
現在、「ユニーク・オーディオ・パーツ!」コーナーに掲載していますので、ご希望の方はお急ぎください!!