このところ、Zバランスアンプやバランスパッシブプリアンプのご注文が多く、最近のDAコンバータにバランス出力を装備した機種が増えてきたことと、やはり、バランス増幅によるサウンドを支持する方が増えてきたように思えます。最近のヘッドフォン、さらにはMCカートリッジのバランス伝送・増幅が注目されるようになってきました。
さて、マスターズではMOSFETデバイスとして、東芝2SK405/2SJ115を採用してきました。
このたび、旧日立(現ルネサス)のMOSFET、2SK1056/2SK160のコンプリ・ペアの組み合わせによるZバランスアンプの試作をおこない、良好な結果を得ましたので、ご報告すると同時に、この組み合わせをご希望の方に対するご注文をお受けいたします。
なお、マスターズアンプのユーザーの方で、MOSFET交換希望の方への対応も致します。良心的な料金でおこないますので、お問い合わせください。
2SK405/ASJ115と2SK1056/2SJ160との特性比較
デバイス |
耐圧 |
Idmax |
Pd |
Cis |
外形 |
2SK405 |
160V |
8A |
100W |
430pf |
TO-3P |
2SK1056 |
120V |
7A |
100W |
600pf |
TO-3P |
2SJ115 |
-160V |
8A |
100W |
800pf |
T0-3P |
2SJ160 |
-120V |
7A |
100W |
900Pf |
TO-3P |
ちなみに銘品と評価された日立2SK175/2SJ56は、耐圧±180V、Idmax8Aと高いですが、入力容量(Cis)は800pf,1200pfです。従って、2SK1056/2SK160は入力容量が東芝と同じ程度に改良されています。
電気的にはそれほどの違いはなく、同じ回路で、一部定数を変更することで動作します。
オーディオは面白いもので、そのサウンドは微妙に違います。
どちらかというと、2SK405/2SJ115は華やかで、暖色系であるの対し、2SK1056/2SJ160は寒色系で、引き締まった感じを受けます。
けれども、この感想は私個人のものなので、興味ある皆様にこのあたりは楽しんでもらいたいと思っています。
ルネサスの2SK1056/2SJ160も製造完了と思われ、市中在庫のみになっています。

ルネサス 2SK1056/2SJ160
フルバランス増幅モノラルパワーアンプ“MASTERS BA-999ZB/M”から、アドバンストZバランス回路へアップグレードされたユーザー様のKさんから感想をいただきました。
匿名での掲載許可をいただきましたのでご紹介いたします。
Kさん!ユーザーレポートをいただき、ありがとうございます。
開発者たる私からのコメントは、自己陶酔的にならないように規律を持って記述しておりますが、ユーザー様から、率直な感想を頂き自分では気がつかなかったサウンド要素を発見した感じがあります。
アドバンストZバランス回路にアップグレードのリクエストが4セットあり、本日、4セット目のアップグレードが完成して、発送致しました。
当初は自己陶酔ではないかと、また、1台だけ上手くいったのではないかと思ったりして、アップグレードを完了しては、ヒアリングで確認して参りました。
4セット、トータル8台でのパフォーマンスがどれも期待したどおりの良好、いや、素晴らしいサウンドになったと思っております。
特に、スピーカーボイスコイルを両側から完全にグランド(アース)に束縛されることなくパワフルにドライブするサウンドは、やはり、従来のハーフブリッジサウンドとは異なり、別次元のように感じております。
従って、フルバランス増幅モノラルパワーアンプ“MASTERS BA-999ZB/M”(モノラル)は、近々、アドバンストZバランス回路搭載した新製品にリニューアルする予定です。
また、フルバランス・パワーアンプ“MASTERS BA−225FB/MOS”,インバーテッド・フルバランス・パワーアンプ“MASTERS BA−225FB/MOSy”(販売終了モデル)機種のZバランス回路へのアップグレードも受け付けます。
ところで、話題が少しずれますが、ここ2年、クラシックコンサートに良く出掛けております。サントリーホール、ミューザ川崎、池袋芸術劇場、墨田トリホニーホール、初台オペラシティ、文京シビックホール、所沢大ホールなどでクラシックコンサートに行っています。
そもそも、人間の知覚は90%以上、視覚情報と言われています。だから、コンサートはさすが!良い音、感激!と言っても、それらは指揮者やオーケストラのみなさんの動き等の視覚情報に相当影響されているはずです。
私は、オーディオ的観点から、コンサート会場で、視覚情報が入らぬように目を閉じて聴く時間を設けています。
ところが、私の耳の形状は平らで指向特性がブロードです。どうしても、周りの方の息使いが聴こえてしまいます。
そこで、なるべくDレンジ(大きなサウンドが聴こえる)の大きくなる、前のほうの席で聴くことにしています。
そのような状態で聴くと、自分の工房と目を閉じて聴くコンサートサウンドとは一概にコンサートサウンドのほうが良いとは限らないことが少なくないことに、近年、気が付きました。また、コンサートサウンドとオーディオサウンドとは“けっこう違うな!”とも感じます。
特に、間接音、残響音はずいぶん違います。
意外とコンサートサウンドは間接音が少ないとか、貧しく聴こえることがあります。これは、2000人くらいの人員が大きな吸音材になってしまうからとも考えています。従って、短絡的に言えば、ライブ音源はセッション音源に負けているのかも知れません。
と言うのは、3年前、文京シビックホールで、出演している友達から、“オペラ”アイーダ“のゲネプロを聴きに来ないか?”と言われ、出かけました。
入場してみると、立ち会っている方々は30名ほどでした。
あまりうまくないオケでしたが、音が出てびっくり、清らかなストリングス、咆哮するブラスセクション、特に、アイーダトランペットはホール全体に響きいってびっくりでした。これがセッション録音の良さかなと感じつつ、その日は、充分サウンドに浸って帰りました。なぜなら、セッション録音のときの録音施設(ホールを含む)は御客を入れません。
さて、本番に行きました。
確かに、出演者、オケ、指揮者の皆さん、力演でした。けれども、昨日味わった、浸み渡るような素晴らしい響きは消えていました。
永遠のオーディオの課題、“本当のサウンド(原音)とは何か?”という課題を突き付けられた気がします。
1950年代後半~1980年代にレコーディング場所として、最高とされたウイーンの“ゾフィエン・ザール”は、さぞかし、凄いサウンドで録れていたのではと思ってしまいます。
ワグナー“リング”録音セッションを記録したBBC製作の画像を見ると、DECCAスタッフがこのような最高の録音ができるのは、ここしかないと言っていました。そして、セッション録音ですと、マイクセットは理想的なところにセットできます。ちなみに“リング”録音では12本のマイクを使っていました。従って、指向性が強いゆえに、コンサートでは聴こえないワイドレンジサウンドが楽しめます。
かつて、オーディオの理想を追って、シェシールド・ラボはワンポイントマイクで、ダイレクトカットでクラシック録音レコードを作りましたが、そのサウンドは遠い感じのサウンドでした。一方、マルチマイクを使って録った、“I‘be Got TheMUSIC”のスタジオ録音は絶賛を博しました。
私は“リング”の全曲のレコードを買って、聴いて、コンサートサウンドとは異なる良さも感じています。コンサートサウンドとレコーディングサウンドは基本的に違うと言う感を強くしています。
コンサート会場で聴くサウンドも良いと思うし、オーディオサウンドにはコンサートサウンドにない細部のサウンドやフレッシュサウンドがあります。
昨今、クラシック音源が売れないので、ライブ音源のCD化、ハイレゾ化が多くなりました。これは、上記の理由で、良く聴こえないです。
そう言いつつ、11月には、コンサートには出掛けようと思っています。