店長が日々感じたことを、オーディオエッセイ風に綴ります。開発日誌、コラムなど、様々な内容を情報発信しています。

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レコーディングスタジオでマスターズアンプをテストする!(後編)

世界初 300Bアンプをエレキギター用アンプとしてテスト!
 ~テストしたギタリスト、立ち会ったレコーディング・エンジニア、驚愕のサウンド!を体験したと言う!~

私は、以前からギターアンプには興味があり、ギターアンプの英文回路図集を持っているほどです。
なぜなら、トランジスタ登場以来、オーディオアンプはトランジスタアンプに代わっていき、1980年代には真空管は絶滅したかのように思えたほどです。
ところが、それは私の認識不足で、真空管はギターアンプの主要デバイスとして生き残っていたのです。エレキギターアンプのトランジスタ化がずいぶん検討され、製品化されましたが、一級品となるとどうしても真空管アンプになったようで、現在もその状況は変わりません。世界の真空管製造本数の80%以上は、エレキギター用と言われています。
エレキギターアンプに使われるパワー管は、6V6,EL84,6L6,5881,EL34等、すべてビーム管、5極管、いわゆる多極管です。
そして、その増幅回路はオーディオアンプと少し異なり、フィードバック回路が独特です。また、どういうわけか、3極管はギターアンプに用いられることはありませんでした。
CDで聴くエレキギターサウンドは、いわゆるラインアウトからの出力をコンソール入力して、音楽全体のバランスをとって、ミクシングされて聴くわけです。
ライブハウスで聴くエレキギターのサウンドは、エレキギターアンプで増幅し、エレキギタースピーカからのサウンドです。
そのサウンドは、いわゆるライン録りしたサウンドに比べ、ダンピングがイマイチ、アタックももう少し欲しいし、伸びやかさも不足、クリアさももっと出て良いと思っていました。エレキギターアンプはいつまでもビンテージギターアンプで良いのか?
私は、3極管、それも直熱3極管を採用したら良くなるのではないかと思っていました。けれども、誰しも、直熱3極管をエレキギターに採用する考えすら、浮かばなかったのでしょう。
オーディオ界と楽器業界はお互い疎遠で、相互理解もまったくないように思えます。
オーディオ界は、“エレキギターは楽器だから、おれたち、原音追求の道とは違う!”と言って、関心を持たなかったようです。

今回のテストに使ったアンプは、2012年9月28日のブログ“300Bバランスプッシュプルパワーアンプ“MASTERS BA-218/OS”の開発検討”でご紹介したアンプです。写真に示すように、現在は試作段階の300ppバランス増幅アンプ、それも、整流管2本使ったバランス増幅アンプが気持ち良いサウンドを出しているので、是非ともエレキギター用として、トライしてみたいと思っていました。(興味のある方はお問い合わせください。)

森田さんにお話したところ、“私も興味あります。それではギタリストを呼んで、弾いて貰って、一緒にテストしてみましょう!”ということになり、前述のトランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999FBS”のテストのあと、ギターアンプとして300Bアンプで音を出すことになりました。
大げさではなく、300B真空管アンプをエレキギターアンプとして音を出すなんて、世界初でしょう!
私は、高鳴る気持ちを抑えて接続作業に入りましたが、やはり興奮していたのでしょう。入力する箇所を間違えて、音がすぐには出ず、焦りました。
やっと正しい接続になり、テストギタリストとして、前述の傳田さんが受け持ってくれて、弦をはじき始めました。
その途端、スムーズにして、びしびし、瞬発力良好。傳田さんは“凄い!なんで、こんなに反応するの!低音の響きも充分、ふやけない、ppでもうるさくなく、明瞭!こんな体験始めて!”というコメント。そして、あとからやってきてくれたギタリスト、井上“KB”幸弘さんもテストに加わってくれて、エレキギターでフレーズをバラバラと弾き始めて、びっくりした顔つきでした。
さらに、ディストーション等のイフェクターで音色を変えても、クリーン(元の音)状態でも、このアンプのパーフォーマンスは変わりませんでした。
私はカラオケアンプを量産設計した経験からも、演奏者が弾きにくいアンプはNGなのです。良くないカラオケアンプで歌うと、疲れるばかりで、乗れないのです。
1日に昼間から50回以上、歌って検討したことが懐かしく、頭をかすめました。
まずはミュージシャンが気に入り、弾きやすく、乗ってきて、そして乗りの良いサウンドを聴けるエレキギターアンプでなくてはだめなのです。

MASTERSでは、オーディオアンプを長年やってきたので、本格的にギターアンプに乗り出すことは難しいと思いますが、少量生産やカスタム注文ならば、さらに検討を加え、製作することはできそうです。そうなら、さらなる具体化に向かって進みたいと考えています。
このブログをご覧になられて、ご興味をお持ちになられた方はご一報下さい。

森田さんから届いたメッセージを掲載します。

いわゆる真空管ギターアンプでは、常にコンプレッションがかかって聞こえ、レンジも狭くキツい音になっています。しかし今回試した300Bアンプではコンプレッション的なものは皆無で、クリーントーンとクランチやディストーション(SANS AMP 使用)全てにおいて余裕がある、密度の濃い、抜けるサウンドで、特に低域においてはかなり出ているのですが、ブーミーでもなく、ふくよかでナチュラルな低音で始めて体感する音像でした。

<テストに使用した機材>
 Gibson ES335(セミアコ)
 mike lull TX (テレキャスターモデル)
 スピーカーユニット:JBL D130F
 SANS AMP

試奏後にギターの傳田氏に話を聞きましたが、“あんなクリーンな音は聴いた事がないし、歪ませても全くうるさくない音が衝撃的だった、良い経験をさせてもらったと”嬉しそうに語っています。

エンジニア的に見ると、このアンプでギターを録音した場合、録音後のミックスでも埋もれないと思いますので、過激なEQを施す必要はないかと思います。
生演奏のアンサンブルでも同じ事が言えるでしょう。
このアンプはミュージシャンの感性を刺激して新しい音楽が生まれそうです。
製品として出てくるのが楽しみです。

MASTERS BA-218/OS
【開発中の300Bバランスプッシュプルパワーアンプ“MASTERS BA-218/OS”】


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