店長が日々感じたことを、オーディオエッセイ風に綴ります。開発日誌、コラムなど、様々な内容を情報発信しています。

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オーディオ評論家 菅野沖彦さんが永眠されました

オーディオ評論の第一人者として、また、名レコーディングエンジニアとして永年活躍された菅野沖彦さんが2018年10月13日、永眠されたとの報に接しました。
ご冥福をお祈りいたします。

私はサンスイ在籍時代、新製品アンプ開発時において、菅野さんには的確な評価者として大変お世話になったと感じております。
菅野さんのお宅には、数えてはおりませんが20回くらいはアンプを持参して伺ったと思います。菅野さんのお宅のリスニングルームは、オーディオ誌に紹介されていたように20畳以上のスペースがあり、そこには、長年、愛用されたJBLのチャンネルアンプシステムを中心とした4WAYシステム、マッキントッシュXRT-20の2通りのシステムが、いつでも聴けるように整備されていました。
ゆったりとしたソファで、おいしい紅茶を頂いて、持参した試作品アンプを聴くのは、緊張しましたが、とても居心地が良かったと記憶しております。

ヒアリングは、持参したアンプをマッキントッシュXRT-20に接続して聴くのですが、素晴らしいサウンドの中に、アンプの音質を自分なりに感じ取ることができました。
菅野さんはJBL愛好者であったせいもあり、サンスイには好意的で、有益なコメント、アドバイスを頂きました。

冷汗をかいた体験はB-2301開発時、試作品を聴いていただき、大変高い評価を頂いたのですが、ヒアリング後、電源をOFFすることを忘れて、試作品アンプが熱暴走して、パワートランジスタが数個飛んでしまいました。その原因をあとで調べてみたら、放熱器とパワートランジスタとのビス止めを忘れていました。上司には叱られ、後日、整備して、再ヒアリング頂いたのは言うまでもありません。今となっては懐かしい思い出です。
また、希望すると、菅野さんは快く、マッキントッシュXRT-20とJBLシステムとを切り替えて聴かせていただきました。どちらも、素晴らしい音場感に包まれていました。けれども、菅野さんはいつも、サウンドバランスの微調整をしておられ、大変なオーディオファンであり、音楽ファンであると感じました。

最後に、お手伝いできたのは、菅野さんが来日されていた名ピアニスト、ルドルフ・フィルクスニーのデジタル録音時でした。その時はシューマン、ブラームスのピアノ曲の録音でした。ピアノ曲にも大変詳しく、ピアノのフェルトタッチサウンドを再現することに苦心されていたのを思い出します。録音モニタースピーカーはJBLでした。

時が流れて、ロジャース時代も声を掛けていただきましたが、2010年頃から評論家活動を休止されて、静養されていたようでした。
戦後70年余、オーディオ界をここまで導いてきた巨星が消えていきました!


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