店長が日々感じたことを、オーディオエッセイ風に綴ります。開発日誌、コラムなど、様々な内容を情報発信しています。

ブログのホーム

フルバランス(グランドフリー(フロート))増幅方式について

店長のブログ188回目「パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999シリーズ”のバランス伝送・増幅」において、バランス型トランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999FBGシリーズ”におけるグランドフリーについて記述しました。
以後、問い合わせをたくさんいただき、かつ、グランドフロートスイッチの増設についてのリクエストを予想以上に頂いております。

フルバランス増幅とは

【図1】に示すように、もっとも古くから知られて、おこなわれている方法はBTL(ブリッジ接続)方式です。
バランス増幅パッシブプリアンプでは、HOT側とCOLD側とがグランド基準として、パワーアンプにバランス信号を伝送し、ブリッジ接続のパワーアンプでスピーカーをバランスドライブします。
マスターズアンプもフルバランスプリアンプ“MASTERS BA-225”系列ではこの方式を採用しておりました。
スピーカーをバランスドライブするうえにおいては、充分な高音質パーフォーマンスが得られていました。

その後、マスターズのバランス増幅アンプはZバランス増幅アンプに進化しました。

Zバランス増幅アンプはグランドフリー(フロート)バランス増幅できる

その様子を【図2】に示します。Zバランス増幅回路は差動入力電圧で動作します。
従って、通常の差動アンプのように、片側の差動入力を設置(グランド)に接続する必要がありません。そして、差動入力に加えられる入力電圧はHOT、COLD成分が同じ電圧である必要がありません。
例えば、HOT成分は1V、COLD成分が1.5Vとすると、差動入力は1V-(-1.5V)=+2.5Vとして、正しくバランス増幅します。
Zバランス増幅回路においては、バランス増幅はHOT、COLD成分がぴったり合っていることが必要ありません。
要はグランド電位には関係なくバランス増幅します。そうなると、Zバランス(パワーアンプ)増幅回路は、プリアンプ出力のグランド電位に関係ないバランス信号を含むダブルエンド出力で、バランス増幅することができます。
ですから、パワーアンプのスピーカー端子(+、-)DC電位はグランドを0V基準として、テスターで測定すると、0Vにはならず、おおよそ±2Vくらいまでの間の電圧を示します。
パワーアンプにとって、重要なアンプ出力(スピーカー端子)間のDC電圧は0Vになります(DCドリフトは生じない)。結論的にはZバランス増幅にグランド(電位)は不要になります。

そこで、【図2】に示すように、パッシブプリアンプのグランド(巻始め)側はグランドに接続することなく、グランド側フロートさせて、ホット、コールド間の巻き始め側を接続するほうが望ましくなります。
その理由は、アンプのグランドラインは電源部整流部のリップル成分が流れ込んでおり、さらには電磁波ノイズがグランドラインを通じて入りこんでくるからです。

Zバランス増幅回路(システム)ではグランドフロートすることで、整流リッププルノイズを含み電磁波ノイズの影響を受けることがありません。
さらにピュアなアンプ方式は電源をバッテリーで供給すれば理想的になります。
具体的には、グランドフロートによるバランスパッシブプリアンプにバッテリードライブZバランス増幅パワーアンプを組み合わせれば、より理想的なアンプシステムが構築できるのです。

プリアンプをアクティブアンプで構成したい方には

【図3】に示すように、Zバランス増幅プリアンプで構成すれば良いことになります。このシステムでは、RCA入力からでも、グランドフリーにはなりませんが、フルバランス増幅になります。
もちろん、バランス信号(ダブルエンド)信号なら、フルバランス・グランドフリー増幅が実現します。ただ、S/N比はパッシブプリアンプにより残留ノイズゼロにはなりません。

けれども、プリアンプもバッテリー、すなわち、フルバッテリー電源にすれば、理想的なアクティブバランス増幅サウンドをアクティブプリアンプ方式で味わうことができます。
マスターズでは、2018年9月で販売終了したプリアンプCA-888PZBがグランドフリーZバランス増幅アンプになります。

2019年中に、AC/DCコンパチのグランドフロートZバランス増幅プリアンプとして、新登場させる予定です。

グランドラインに流れる電流とは

かつて、ケンウッドアンプの委託設計業務をしていた頃、ケンウッドではグランドラインをノイズや汚染成分の処理として扱うように言われていました。
けれども、通常のアンプはグランドラインを増幅起点とするので、例えると、下水の流れを増幅基準とするので、グランドラインからのノイズを避けるノウハウとして、グランド接続処理する順番が厳密に決められていました。

一方、サンスイでは、Xバランス回路採用以前には、増幅起点を初段/NFB部にサミングポイントを、増幅基準グランドにするようになっていました。
確かに、グランド起点を誤ると、アンプ出力にノイズ成分(特に整流リップル成分)が混じって、残留ノイズが増えることは常識です。

アンプの理想的なグランドは、アンプ筐体の静電シールドに使うだけで、増幅回路起点に使うべきでないと思います。
但し、バランス増幅回路は回路が2倍以上増えるので費用がかさみます。グランド起点(グランデッドアンプともいう)増幅アンプは上記のような注意を払えば、充分に常識なアンプになることも安心のために記します。
AU-900Xシリーズでは、Xカレント回路により、優れた高音質を実現しています。


【図1】ブリッジバランス増幅パワーアンプによるパッシブプリアンプと接続

【図1】ブリッジバランス増幅パワーアンプによるパッシブプリアンプと接続

【図2】Zバランス増幅パワーアンプとグランド(フロート)パッシブプリアンプとの接続

【図2】Zバランス増幅パワーアンプとグランド(フロート)パッシブプリアンプとの接続

【図3】Zバランス増幅パワーアンプとZバランス増幅プリアンプとの接続

【図3】Zバランス増幅パワーアンプとZバランス増幅プリアンプとの接続


ブログのホーム