はじまり
近年、MCカートリッジの出力をバランス伝送することが提唱され、それに対応した製品が生まれています。
上記に対応した仕組みについて、記述致します。
仕組みについて
まず、【図1】に示すように、カートリッジの出力をそのまま2芯のXLRケーブル2本(L/R用)で、フォノ入力回路に導く方式です。
いわゆる、MCカートリッジのバランス伝送として、はやっているようです。
従来の伝送方式は一方をグランド側として、アンバランス信号として、RCA端子2本でおこなってきました。(【図2】)
この従来方式は特に問題ないと思います。フォノ回路を長く伸ばすこともないし、MCカートリッジの出力インピーダンスが低いので、特にバランス伝送する必要ないとする見方が常識とされてきました。
ところが、“バランス伝送したほうが音が良い!”というレポートがオーディオ誌に掲載されたりして、オーディオファンの気持ちを動かしたようです。
バランス伝送の具体化
MCカートリッジの巻線にはグランドがなく、これをバランス伝送として2本のケーブルで送るとなると、グランドフローティング・バランス伝送となります。
一応、MCカートリッジの巻き始めをCOLD、巻き終わりをHOTに仮に決めているようです。
グランドのない伝送信号(フローティングバランス信号)は【図3】に示すように、MCトランスの1次側をフロート状態で受けて、MCトランスの2次側の片方をグランド接続すれば、アンバランス信号となって、バランス/アンバラ変換しつつ、MCカートリッジのバランス伝送が実現します。
特に問題はありません。音質劣化する要素は見当たらないです。
また、オーディオアクセサリー誌の中で、RCAケーブルのシールド側をCOLD側にしてバランス受けとすることもやってみて、可能でした。これなら、いちいち、フォノケーブルをXLRケーブルにすることなく、気楽にトライできますが、アンプ側のRCA端子のグランド側をアンプの信号系グランド側から浮かす(接続しない)ことが必要です。
前述のフローティングバランス信号をアンプで増幅する方法は、差動入力アンプを採用し、【図4】に示すような回路構成(一番、シンプルな回路)で可能です。もちろん、実用には、動作条件について検討が必要ですが、とりあえずの実験では可能なことを確認しました。
この回路例は、反転差動入力回路としてクロスフィードバックを掛ければ、グランドには関係なく増幅できます。
今回はとりあえず、動作確認を優先させて報告させていただきました。