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一言ご紹介
【MASTERSブランド】
AU-600G/JBL
AU-600G/JBL
1960年代後期に登場した画期的アンプ“JBL SA-600”の改良回路を搭載したアンプ!
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  カテゴリー ‘江川三郎さん’ のアーカイブ
店長が日々感じたことを、オーディオエッセイ風に綴ります。開発日誌、コラムなど、様々な内容を情報発信しています。

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故 江川三郎さんの記念記事から考えること

2019年9月号“ステレオ”誌に故 江川三郎さんに関する記事が特集されています。
私は山水時代の1970年代、4回ほどお会いしております。江川さんの発言はとてもユニークで、当時のオーディオ常識を超えていたので、メーカーが敬遠しがちでした。
江川さんは2015年1月、82才で亡くなられています。故 菅野沖彦さんとは少年時代は仲の良いオーディオ仲間でした。
オーディオ評論家として、お二人は対照的な立場をとられました。
さて、以下、ユニークな江川さんの発想、指摘、意見について、述べてみたいと思います。

スピーカーケーブルを一変させた!

1970年代のスピーカー(SP)ケーブルは普通の2線赤白ケーブルでした。多くの評論家さんのSPケーブルもそれでした。
江川さんの最初の指摘は、SPケーブルは短い(50cmくらい)のが一番良い。これはそのとおりで特に反論もありませんでした。
次はリッツ線が良いと指摘されました。確かに、交流電流は導体の表面を流れる性質(表皮効果)があり、それなら、リッツ線が良いとの提唱でした。
これも反論は無かったですが、江川さんが指摘するほどのオーディオ界の反応はありませんでした。
ところが平行ケーブルに交流信号が流れると誘導現象により電球が点くことが発表され、これは大きな話題となり、平行ケーブルのインダクタンスを打ち消すよじりケーブルを並列にした、真田ひものようなSPケーブルがJVCより発売され、一時はやりました。
このことが契機にいろいろなケーブルが発売され、今や、大きなオーディオビジネスになっています。1m¥10万もする高価なSPケーブルも珍しくありません。
そのきっかけを作ったのは江川さんの功績です。
近年のSPケーブルは銅純度やDC抵抗が主たるセールスポイントで、決め手はヒアリングレポートの評価も影響あるようです。

私はSPケーブルには無頓着で、ドイツ製の透明被覆の¥630/mケーブルを使っています。
特に、凝ることはしていません。強いて言えば、ケーブルの高周波特性インピーダンスから外れないように片端をその抵抗値でシャントすることは良いことです。
ちなみに普通の2線ACケーブルの特性インピーダンスは120Ωです。
(1970年代のサンスイでの社内ヒアリングには、太い75Ωの同軸ケーブルをSPケーブルとして使っていました。)

バッテリー駆動は音が良い

江川さんは、乾電池を多数個直列につないで動作させたところ、凄く音が良くなったと述べています。
ほかの評論家さんにパワー感が薄くなったとのコメントもありましたが、その方はノイズ成分がパワー感を助長するものとして感じたのでしょう。
江川さんは、早くから本質的な良さを感じ取っていました。私は当時、そんなものかと思っていました。
ところが、マスターズアンプで、バッテリーとAC電源との比較で打ちのめされました。
バッテリー/ACコンパチアンプを購入されたお客様からは、その違いに驚いたとの感想を頂きました。
近年、AC電源の電磁波ノイズ汚染はひどく、いろいろ対策したところで、皆無というわけにはいきません。
一方、バッテリーの進歩は著しく、リチウムバッテリーはどんどん進歩していますし、従来の鉛バッテリーなら、まず安心して良好なサウンドが得られます。(リチウムバッテリーは、身近なところではバッテリー自転車に搭載されています。)
また、私の実験では、電気二重層による、コンデンサーによる蓄電エネルギーは物凄いものがあります。
例えば、標準的な電気二重層(600F:マイクロファラッドではない)/2.5V)のチャージエネルギーは1/2CV×Vに当てはめると、1875ジュールになり、これを10個並べて、±12.5V電源を作ると、その総エネルギーは18750ジュールになります。
1Wの大きさの音で楽しむとすると、18750秒(312分)も聴けます。
実際、聴いてみましたが、バッテリードライブに勝るとも劣らないピュア、かつ、パワフルサウンドが聴けました。これから、この方式も有望です。
いくら、AC電源を安定化電源で交流分を改善しても、電磁波ノイズの侵入は防げません。

2chステレオ方式では原音再生は難しい

クラシック音楽録音・再生の場合

2ch伝送路で、スピーカー再生するとリスニングルームでL/Rのスピーカーから再生されます。このとき、スピーカー基準とする正三角形の頂点で聴くようになっています。
このとき、スピーカーからの音はL/R相互にブレンドしあい、L/Rのセパレーションは低下します(【図1】参照)。
2.5mくらい離すと、L/Rのセパレーションは7dB程度になります。
大幅にステレオ感は低下します。その上に、リスニングルームの反射・吸収・回折・回りこみ等の音響現象が伴います。
(ボース博士の研究によれば、ホールやリスニングルームにおける直接音に比べ、反射音はその9倍になると言われています。)
そうなると、2ch原音再生は夢物語です。多くの関係者は分かっていて、それらしく聴こえるように、録音時に工夫を加えているのです。
ステレオ黎明期では、センター定位が2ch伝送では不十分として、3chでの録音がおこなわれ、ステレオレコードの普及に伴って、2ch伝送にミックスダウンして、マスターサウンドとしているのでした。

原音再生に近づけるには、伝送路を増やすしかないのです。
かつて、1970年代の4ch方式は何とか2ch伝送路に4ch情報を加えて、原音再生に近づく方式だったのです。
2chオーディオでは困難が伴いましたが、映画(シネマ)の世界では伝送路を増やすことは難しいことではありません。
めざといドルビーやルーカスは映画の世界で、5.1ch方式を造りだし、家庭用AVにおいても普及を目指し、今や、確立しています。
さらなる原音再生を目指すのなら、伝送路を増やせば良いのです。NHK技研では22ch伝送方式を提案しています。

どうしても、2ch伝送路で原音感覚を得ようとすれば、ダミーヘッドで録音して、ヘッドフォンで聴けば、原音を聴くことに近づきます(【図2】参照)。
バイノーラル録音(Binaural recording)と呼びます。
けれども、この方式はあまりはやっていませんが、一歩譲って、現在の2chステレオで原音らしきもの聴くには、ヘッドフォンリスニングのほうが優位になります。

江川さんは、何とかスピーカーで原音感を改善できないかを考えました。
江川さんの言いだした“逆オルソン”リスニングなるものは、L/Rの真ん中に板で仕切り板を作って、かつ、L/Rスピーカーのサウンドが互いにブレンドしないように、スピーカーを外側に向けて聴くことを提唱したのです(【図3】参照)。
理屈には合っていると思いますが、実際のヒアリングでは閉塞感が出てしまいます。ですから、ほとんど、はやりませんでした。

そこでの次善の方法はニアフィールド・リスニングです。スピーカーを耳に近づけて聴くようにすると、L/Rブレンドによるステレオ感低下はある程度改善され、けっこう眼前でリアルサウンドが楽しめ、かつ、場所も食わず、音量も上げなくても良いのでお勧めです。
評論家さんでは和田博さんが提唱しています(【図4】参照)。

POPS、ジャズ、JPOPSでは、割り切れれば原音再生できると考えても間違いではない

上記ジャンルのオーディオ音源では、クラシックのように空間の生音を収録するようなことはしないし、できない。
ライブであっても、空間生音でやることはできない。なぜなら、PAを使わなければ観客に聴こえないからである。
だから、上記音楽再生はクラシックのような集音はできず、個々の楽器の直接音をマイクで収録して、そのうえで加工し、リスナーが心地よく聴こえるように、エンジニアがサウンドを創り上げるのである。
具体的には、各楽器やボーカルサウンドを個々に収録して、多CH信号として、2ch信号を適度にL/Rにミクシングし、2CHオーディオ信号となるのである。
一昔前はマルチモノラル方式と呼ばれた。近年は多CHのデジタルミクサーが出現したので、それほど苦労せず音源は完成する(【図5】参照)。
この信号をスピーカーから再生し、製作したエンジニアが“これが自分の意図したサウンド”と言えば、それが原音再生と言っても間違いではない。
多くの音楽メディアはPOPS系が大多数であるから、矛盾していないが、楽器間に空間的結びつきがないので、本当のステレオではないが、充分楽しめ、これがオーディオの主流になっています。
クラシック音源は残念ながら、演奏を聴いたサウンドに近くなるように、努力を重ねる趣味と言えます。
それはとてもやりがいのある道楽で、私もオーディオ人生の半分は、クラシック音源をそれらしく聴ける努力に費やしてきたと言えるでしょう。
見果てぬ夢を追うには、やってみることが充分過ぎるほどあるのです。
江川さんは原音追究の原点を指摘したともいえる方と言えます。
一方、故 菅野沖彦さんは余裕を持って、見果てぬ夢を追った方です。
なぜなら、菅野沖彦さんの貴重な音源に、クラシックにはさしたる作品はなく、ジャズ録音をクラシックテイストで録音して、素晴らしいサウンドに仕上げています。
それは“オーディオラボ”に残されています。
また、菅野沖彦さん宅のサウンドは、できるだけ響きを適度に豊かにして、クラシック音源再生においては、マッキントッシュXRT-20を使って、原音を目指したサウンドに仕上げられていました。
菅野沖彦さんから生前、“原音再生”という言葉は一切聴いたことがありません。

イヤフォン/ヘッドフォンで、ポップスを聴くこと

スピーカー再生で空間でのL/Rのブレンドによって、ステレオ感を出すことで効果を上げるので、イヤフォン、ヘッドフォンリスニングは不自然な感じになりがちです。
従って、L/R相互の音を少し他chに漏らす方式のヘッドフォンが好評のようです。

まとめ

オーディオは総合技術であり、芸術の世界であり、官能の世界でもあります。
そこには、あるジャンルだけに囚われて、大きな舞台を忘れて、葉を見て、山を見ずの道楽になっては少し残念です。
皆さん、少し、大きな視点でオーディオを楽しみましょう。


【図1】2chステレオの標準的な聴き方

【図1】2chステレオの標準的な聴き方

【図2】クラシック音楽の場合の録音

【図2】クラシック音楽の場合の録音

【図3】江口さんの勧める逆オルソンヒアリング

【図3】江口さんの勧める逆オルソンヒアリング

【図4】ニア・フィールドリスニング

【図4】ニア・フィールドリスニング

【図5】POPS音楽の場合の録音

【図5】POPS音楽の場合の録音


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