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小型プリメインアンプ“MASTERS AU-207/custom”

オーディオの楽しみ

コロナ禍で、引きこもった生活を余儀なくされている方も多いと思います。
引きこもってオーディオを楽しむことはオーディオファイルにとって、楽しいことです。

私はお酒が飲めませんが、好きな音楽、良いサウンドを聴きながら、水割りをちびちび飲むのは楽しいことだと推測します。

特別ご提供品の小型プリメインアンプ

今回、特別ご提供品として小型プリメインアンプ“MASTERS AU-207/custom”(リンク先は、販売終了時にリンク切れになります)を作りました。

初段はトランジスタで、パワーデバイスはルネサスのMOSFETです。
高価なマッチングトランスを採用することなく作りました。

電源電圧は±12Vに下げて、それなりにアイドリング電流を流して、結果としてアイドリング電力は12Wにしました。
測定してみると、1Wまでは8Ω負荷抵抗で純Aクラス動作となります。
それ以上、5WまではABクラス動作になりました。

とてもコンパクトなサイズのアンプです。
それなのに、けっこうパワフルで濃厚なサウンドが出てくるのには、少し驚きました。

長年、アンプ作りをやっていても、わからないところです。
このアンプには、特別な部品は使っていないですし、まして、電源ケーブル、内部配線材は普通です。
強いて言えば、マスターボリームにアルプスの27型ミニデテントを採用しているくらいです。

また、上下対称回路を採用しているので、電源ON/OFFには±電源は均等に立ち上がり、立ち下がるので、スピーカーリレーは不要です。
また、うっかりして負荷をショートしても、MOSFETのドレイン電流が7Aもあるので、壊れることはなく、その前にヒューズが溶断してアンプを保護します。

まず、期待を裏切ることはありません。
どうしてもお気に召さないときは、ご返品下さい。傷つけないように扱っていただいたものであれば、ご返金致します。

MASTERS AU-207/custom


新回路アンプを開発しています

JBL SA-600回路アンプの魅力と人気

2018年年末から、特別提供品として製作したAU-600JBLアンプは人気があり、すでに9台目を製作しました。もちろん、すぐ完売です。
“JBL SA-600”回路で製作したアンプはトランス、ブロックケミコンがマチマチでした。それでも、一貫したサウンド傾向が聴き取れました。
それはポップス、ジャズ系統の音楽には極めて反応の良いパワフルサウンドを感じるのです。特に、長年使っているJBL4320との相性抜群です。

JBL SA-600アンプの回路はブログに記したように現在のアンプの基本となる斬新な回路でした。
けれども、日本のアンプブランドは、コンプリ回路、Tサーキットだけを評価するだけだったように思えます。
JBL SA-600の一大特長は反転回路アンプにあることは確かですが、1970年代、日本ブランドアンプは特に取り入れたアンプはないように思えます。
1980年代に登場したサンスイXバランス回路は、よく見ていただくと、反転回路によるバランス増幅回路になっています。従って、差動回路入力でNFB演算をおこない、グランドに関係なくバランス増幅します。Xバランス回路は山水終焉まで継続され、そのアンプはオークション市場でも人気です。

もうひとつの発見

“JBL SA-600”回路の差動2段目の出力はブートストラップ回路が採用されています。
ブートストラップは靴ひもをしっかり締め直すということから、ネーミングされた回路です。

この回路は準コンアンプ時代から、全段差動回路になる前まで、採用された回路ですが、全段直結・純コンプリ回路時代になって、“JBL SA-600”以外は見受けられません。

ブートストラップ回路は過渡的な(大)入力時に瞬時に作動し、回路インピーダンスを上昇させて、パワーアンプのドライブ能力をアップさせます。けれども、多くのパワーアンプはそれほどしなくても、充分にパワーアンプとして特性が得られるとして、採用するアンプは無くなってしまいました。特に、低ひずみ競争時代には、ブートストラップ回路はメリットなく、いつしか忘れ去られた感がありました。

それから20年くらいの年月が流れ、MOSFETの開発がデバイスの主流になりました。それはオーディオ用としてではなく、スイッチング電源用だったのです。
けれども、MOSFETのスイッチング特性の優秀さによって、1970年代ではどうやっても実用化できなかったDクラスアンプが、MOSFETの採用によって実用化できたのです。
スイッチング特性や低内部抵抗を追究すると、MOSFETの入力容量はどんどん大きくなっていきます。
当初オーディオ用MOSFETの入力容量は900pF程度で、特に問題になりませんでした。ところが、Dクラスに採用するスイッチング用MOSFET入力容量は10000PF程度になってしまいます。そうなると、通常のドライブ回路では、高周波スイッチングするには不十分でした。

そこで、ブートストラップ回路はMOSFETに入力充電(チャージポンプ)回路として生き返りました。
Dクラスアンプにはいわゆる、チャージポンプ回路に採用されることが必須になりました。

新回路開発

マスターズのAU-900シリーズに採用している回路は、上下差動回路によるコンプリ構成になっています。
この回路初段から2段目のI/V回路に導かれ、ファイナルのMOSFETをドライブします。ピュアで透明なサウンドに加え、Xカレント電源回路構成によりパワフルさを増しています。
ご好評をいただいております。

2019年も半年が過ぎ、“JBL SA-600”回路に刺激を受け、この回路コンセプトを反映した新アンプを開発したいと言う気持ちが強くなってきました。
何分にも老齢のため、意欲はあっても行動力を喚起させるのが重要なようです。

30年来の盟友、サンスイの名エンジニア、ケンウッドのカーオーディオアンプにおいても大活躍したK・Kさんに連絡してみました。K・Kさんは、周波数可変チャンデバに際しても的確なアドバイスをいただき尊敬する一人です。
そこで、相談し、“JBL SA-600”回路を送って、かつ、上下差動回路についても感想を求めたところ、ブートストラップ回路をドライブ段に上下にダブルの形でできそうと参考回路まで作って、協力してくれるかたちとなりました。

7月下旬から、時間のやりくりをして、試作アンプを造り始めました。
もちろん、ご注文いただいているMASTERSアンプを製作しながらの製作検討作業でした。

今回の新回路アンプの半導体デバイスは、まずはすべてトランジスタを採用することにしました。

試作アンプで実験を始めて、わりと順調に進行し、回路の実用化が目に見えてきました。抵抗負荷の形で、静特性をみてみました。ひずみ、F特、残留ノイズ、問題ない。これでできた!と喜んで、アンプ出力をチェックすると、何と、DCオフセット電圧が100mVを超えていたのです。これではスピーカーのコーン紙が前後に動いてしまい、動作点がずれてしまいます。
少なくとも±50mV以内であることが必須です。いろいろと相互に議論とアイディアと検討をおこないました。

理論的には初段上下差動のトランジスタの特性(Hfe等)が揃っていることが要求されることが分かってきました。当然、トランジスタのHfeはHfeランクを揃えるも300~500と大きくばらつき、とても、初段トランジスタを揃えることはできないです。
一方、初段をFETで構成する場合は、アンプ電源が上下つながっているゼロバイアス接続になっています。
MOSFETのIDssを4石とも揃える必要があります。FETを揃えることはFETを選別すれば±1mAで可能です。さらに2段目のI/V変換回路のエミッタ抵抗を微調整することで実現できることは分かっています。

今回の新回路は初段をトランジスタでおこなうとすると簡単にはいきません。いろいろ試行錯誤の繰り返しで、初段トランジスタに動作電流と電位を決める定電流回路の抵抗を可変することで(+側と-側とで個別に)、DCオフセットをほぼゼロにすることができました。
そして、アイドリング電流は従来のトランジスタ回路ではなく、ダイオードと抵抗を組みわさせることで、最適アイドリング動作を設定できることができました。
熱安定度は24時間の連続動作においても安定でした。

この試作アンプの仮仕様は次の通りです。

  • 回路方式:上下ブートストラップ・コンプリ差動回路によるSEPPハーフブリッジ
  • 初段:ローノイズトランジスタによる上下差動コンプリ回路
  • 出力素子:サンケンLAPT採用
  • 出力:10W+10W(8Ω)

ヒアリング

ブートストラップ回路は静特性改善には貢献しないので、重要な決め手はヒアリング結果によります。
そこで、使用スピーカーはあえて、JBLではなくTANNOY (アルニコ)アーデンとしてヒアリングをおこないました。

ビル・エバンス(ライブ収録CD)

NYマンハッタンにあるジャズクラブ“ビレッジバンガード”でのライブ演奏です。
この会場はかつて、アメリカ出張時に行ったことがあります。地下室で、天井が低く、とても良いサウンドとは言えない環境です。ワインを飲むグラスのノイズが聴えたりしてレコーディング環境は良くないです。

さすが、このレコーディングエンジニアは素晴らしく、会場では聴けない細部のサウンドが収録されて、好評なCDです。
ビル・エバンスのピアノサウンドバランスが素晴らしく聴こえます。
劇的と言うよりジャズサウンドを少し興奮して楽しめるサウンドに聴こえました。

フィメールボーカル

スサーナの“アドロ”は素敵なバランスで録られているはずです。特にスサーナの鼻息がリアルに聴こえたら、良いアンプと言えましょう。
4曲目の“雨の慕情”もヨーロッパ風のストリングに渚ゆう子のサウンドが聴こえます。
名録音が充分楽しめました。

春の祭典:名演奏、名録音として定評あるゲルギエフ/キーロフ歌劇場管弦楽団

私は来日時、上記演奏を1F/6列目で聴きました。
春の祭典はストリングスの活躍の場は少なく、打楽器、管楽器の変拍子と不協和音の連続がいかに聴き取れるか!です。
特に、過渡的な衝撃音の再生にはびっくり。しっとり聴くよりのワイルドな“春の祭典”をわずか10Wのアンプで気持ちよく楽しめました。

今後の商品化

新アンプの特長はアタック感が良好と感じられるので、ジャズ・POPを好む方に向いていると思います。
今秋には比較的お求めやすい価格で、これまでのMASTERSアンプと別シリーズでリリースしたいと思っています。

元々、これらの音源は作り手側のセンスででき上がっているので、原音再現という範疇の音楽ではありません。
リスナーが楽しめる、味わえるサウンドであることがオーディオ趣味と思います。
このことは、かつて、レコード会社にプロ用機器を持ち込んで、レコーディング、マスタリングに立ち会う経験から自信を持って言えます。そこにはレコード会社、エンジニア、ソフト制作者の皆さんの努力と心意気を感じます。

また、私を含めて、買っていただくオーディオプロとして、皆さんに使って貰い、楽しんでもらう姿勢があります。
私はオーディオ、音楽は大好きですが、オーディオ研究家ではありません。
そう言いながら、10/3日、コバケン/読響のオルフ“カルミナ・ブラーナ”を聴いてこようとチケット手配しています。


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