経緯と概要
これまで、アドバンストZバランス回路搭載アンプは、フルバランス増幅ステレオパワーアンプ“MASTERS BA-999ZB/A”,フルバランス増幅モノラルパワーアンプ“MASTERS BA-999ZB/MA”で好評をいただいております。
新製品として、この回路を搭載したプリメインアンプを発売致しました。
ご承知のようにフルバランス増幅ステレオプリメインアンプ“MASTERS AU-999ZB/AC”は完全バランス増幅アンプ、パワーも30WとMASTERSアンプとして、それなりにハイパワーです。
電源部はメイン電源がL/R、2トランスによるバランス電源となって、パワーステージに電力を供給しています。プリドライブ(電圧増幅)段は専用の別電源、トータル3電源トランス方式となっています。
内部は大型ヒートシンク2個、3トランス、ケミコン、ダイオード、4連ボリウム等でぎっしり詰まった充実の内容です。
また、形状はセットしやすいように幅の狭いスリムタイプ形状のスタイルになっています。
電気的性能
周波数特性、ひずみ特性、共に素晴らしく、ワイドレンジ、低ひずみとなっております。また、残留ノイズは増幅率が23dBあるにもかかわらず、120μV(LPF:80kHzフィルターのみで測定)と低く、さらに、DC安定度は抜群で変動しません。(サンスイXバランスでは、3段増幅回路であるので、どうしても、3段目のDC変動は少しあります。)
スルーレートとは高域周波数において、どこまで再生できるか、高域パワーバンドを示すもので、むやみに高くする必要はありません。但し、スルーレートがものすごく高くても安定にNFBが掛かるというのは優れたアンプ回路ということができます。電気回路ではNFBを深くするとスルーレートを高くすると発振安定度が低下します。
AU-999ZB/ACは、半導体アンプとしては少量NFB(30dB程度:通常の半導体アンプでは50-60dBもかける)、比較的高いスルーレートを得ることができています。
結果的にモノラルアンプのBA-999ZB/MAと同等な性能を得ています。
そのパフォーマンス
最近、出来上がったAU-999ZB/ACを、エージング兼ねて聴き始めました。まず、気が付くのがサウンドの分解能の高さです。オーディオ/音楽信号が多量にインプットされても、まったく混濁せず、それぞれの音楽情報が聴き分けられます。また、改めて、音楽情報が持つパワフルさを感じ取ることができます。また、少しだけ寒色系と感じられるのは、MOSFETがこれまで採用していた東芝2SK5405/J115からルネサス(旧日立)2SK1059/J160になったこともあるのでしょう。
東芝、ルネサスのMOSFETは電気的性能にはほとんど同様ですが、製法、ペレット構造が異なるので、微妙にサウンドは頃なるようです。ちなみに、私の感じ方では、東芝は華やかなサウンドに聴こえます。
AU-999ZB/ACはジャス、ロック系音楽ではパワフルに、クラシックでは細部の音を聴きとりながら、パワフルに聴けます。バロック、ギター等に歯切れと清澄感が重要な小編成音楽も充分すぎるほど楽しめます。
BA-225MOSy等のバランス増幅アンプのアップグレード
アドバンストZバランス増幅回路へのアップグレードも受け付けております。
是非お試しください。さらにフレッシュサウンドが楽しめます。
この度、長年イメージしていたバランス増幅回路を具体化しました。
回路名をZバランス回路とネーミング致しました。
その経緯を以下に記します。
バックグラウンド
1980年代、サンスイ在籍時代にバランス増幅回路を提唱し、Xバランス回路として、サンスイアンプの最後のかたちとして、30年近くが過ぎようとしております。
サンスイのXバランス回路について
発想のスタートは、当時(1980年代)、スピーカーをボイスコイル両側(+,-端子)からプッシュプルで動作させるという方式には、確信をもって素晴らしいサウンドを実現できると信じ、サンスイ研究開発技術陣の方々との協力作業の結果、具体化できました。そして、私がサンスイを辞したあともXバランス回路はずっと継続され、特に初段差動部は横手さんの検討により、ウイルソン定電流回路の採用によって、より一層洗練されました。
この回路をサンスイは使い続け、サンスイ終焉まで、サンスイアンプの主要部分であり続けました。
サンスイを離れてから気にはなっていましたが、Xバランス回路の改良版は出来ないかと、12年前頃から発想し、ここ2~3年、思いをめぐらせてきました。
サンスイのXバランス回路の素晴らしさは充分認識しておりますが、強いて難点を言えば、増幅回路が3段構成になっているので、回路が複雑になっていることです。
そして、3段目のオープンループ増幅度が高いので、対グランドのDC変動が少し大きいということが言えます。この調整は、3段目のエミッタ抵抗を調整してDC変動を調整しますが、調整後も変動するので、何回か調整をおこなう必要があります。
この部分をサーボ回路にすれば解決しますが、サーボ回路によってアンプの動作点が常に変動することが音質に微妙な影響を与えるので、実施には踏み切れなかったと思います。
新開発のZバランス回路とは!
バランス増幅回路を実現するには、差動回路から2組の差動回路を取り出すことが必要になります。
通常の初段差動回路では1組の差動出力しか取り出せないのですが、サンスイのダイアモンド差動回路では、初段にダイオードを3~4個、負荷抵抗にシリーズに設置して、2組の差動出力を作って次段のダイアモンド差動回路に直結されます。
ダイアモンド差動回路には2組の差動回路が出力されるので、それを差動プッシュプルで2組の3段目の回路を構築し、パワー段に導けば、バランス増幅回路となり、ホット・コールド間のDCオフセットを最少にするためにクロスフィードバックを掛ければ、反転増幅型のバランス増幅回路となり、Xバランス回路となります。
今回のZバランス回路は、もっとシンプルに実現できないかと検討し、初段を上下差動回路として、上下の差動ドレイン出力から2組の差動回路を導き、差動プッシュプルに導き、パワー段を構成してバランス増幅回路が実現できることになります。すなわち、2段増幅回路で、具体的な回路が実現できました。もちろん、ホット・コールド間のDCオフセット安定のためにクロスフィードバックを掛けております。
対グランドについてもDC安定度は、差動プッシュプル回路の片側のエミッタ抵抗を微調する方式は、Xバランス回路と同じです。
この回路の特長は
- DC安定度が優秀で、ホット・コールド間のDCドリフトがほぼゼロ(±1mV程度)。また、対グランド間のDCドリフトも大変少なく、一度設定すれば安定します。
- 増幅方式が完全にホット・コールド間が互いに影響し合ってバランス増幅動作するので、これまでのブリッジバランス方式よりも、より理想化されたか回路方式と言えます。
- サウンドは試作段階ですが、サウンドの立ち上がり立下りが非常に自然で、サウンドの透明感や奥行き感、そしてパワフルであると感じております。
- また、これまで製作したMASTRESのバランス増幅回路アンプ、とりわけ、フルバランス・パワーアンプ“MASTERS BA-225FB/MOS”,インバーテッド・フルバランス・パワーアンプ“MASTERS BA-225FB/MOSy”について、新回路への改造の可能性を検討中です。追って、ユーザーの皆様をはじめとして、ホームページ上で告知する予定でおります。
新製品への採用を考えております
図に示すような構成・レイアウトで、30W+30W程度のプリメインアンプの試作に取りかっております。いずれ、8月中にお披露目出来ると考えております。
【Zバランス回路(新開発)原理図】
【Zバランス回路を採用したプリメインアンプ“MASTERS AU-999ZB”の試作】