ホームーページの特別ご提供品に、プリメインアンプ“MASTERS AU-888TR/L custom”を掲載いたしました。
既にこのアンプが完成しましたことをお伝えいたします。
Aクラス用マッチングトランスを搭載したこともあり、このアンプは割と重く、ぎっしりとした構成になりました。
パワーは充分な12W、マッチングトランス負荷によるAクラス動作では1.2Wと、通常リスニングではうるさいくらいの音量が出ます。
そのサウンドは、なめらかで、パワフルでダイナミック、低レベルの音量でも見事です。
どうしてそうなったのかは、オーディオアンプでは断言できませんが、以下の要因といえるでしょう。
- 回路(Xバランス回路):料理で言えばレシピ。
- 部品(サンスイカスタムトランジスタ):料理で言えば、食材。
- 設計製作者のパフォーマンス: 料理で言えば、シェフの腕前。
聴いて良い(食べておいしい)のかは、ユーザーの好みもありますが、客観的に感じ取ることは可能でしょう。
なお、近郊の方はこちらの工房で視聴することもできます。
※試聴をご希望される方は、必ずご予約をお願い致します。
MASTERS AU-900Xシリーズにトランジスタ搭載・新型アンプ登場!
デバイスの違い
これまで、私自身、MOSFETに魅力を感じてきましたが、周囲の声を聞いてみると、“トランジスタサウンドはやや地味かも知れないけど、落ち着きのサウンド!”という声が少し気になってきました。
また、半導体デバイスの入手はますます厳しくなってきています。特に、昔ながらのTO-3タイプのパワートランジスタは、日本での生産が完了してから、すでに40年の年月が流れました。パワー半導体の構造として、メタルで密閉され、かつ内部に乾燥剤が封じ込まれたTO-3タイプは、湿気が入らず、樹脂モールドタイプよりも優れています。けれども、TO-3は見た通り、製造コストが掛かり、かつ、実装するためのヒートシンクへの取付構造が複雑で手間がかかります。
けれども、今でも、TO-3のトランジスタに魅力を感じているオーディオファンは存在するようです。
当社には、多くない在庫ですが、TO-3タイプがあります。従って、限定販売のかたちで、上記シリーズにトランジスタ搭載の新型アンプを発売することを計画しております。
試作検討に成功
昨年末から、トランジスタ搭載アンプに試作検討を継続して参りましたが、1月中旬、新製品として売り出すことができるパフォーマンスになりました。
確かに、出てくるサウンドは“落ち着き、おだやか、深み”があるように感じます。MOSFETのほうが同じ回路において、華やかな印象があります。
電気的性能は同じと言える高性能です。こうなると、少数キャリアで動作するトランジスタと多数キャリアで動作するMOSFETとの物性上の違いによるサウンドの違いは、理論的には説明が付きませんが、オーディオヒアリングでは感じ取れます。
限定発売する具体なアンプについて
まずはXカレント回路でのAU-900Xシリーズのなかで、パワートランジスタ搭載機種を発売します。
最初に搭載するTO-3パワートランジスタは、写真に示すように、サンケンの2SC1586/2SA909を採用します。このパワートランジスタは大型で、耐圧200V、ICMAX:15Aの容量があり、本来は100W級のパワーアンプに充分使えるデバイスですが、あえて20W以下のアンプに有り余るマージンを持って使います。パワートランジスタに詳しいWestRiverの川西氏の、評価高いパワートランジスタです。
いずれしろ、あたらしいMASTERSサウンドに興味を持ってくださる方は、どうぞ注目下さい。
なお、工房において、試作機での試聴は予約いただければできます。
いずれしろ、このデバイスの在庫が少ないので、尽きたときは次のTO-3型トランジスタを採用する予定です。
これまでのオーディオ用東芝MOSFET、2SK405,2SJ115搭載アンプの注文は継続して受付けて、製作致します。
参考
トランジスタはバイポーラー素子、MOSFETはユニポーラーと呼ばれます。トランスジスタはキャリア2個(ホール,電子)が関係し、ベース付近で再結合し、その弊害のために、高周波特性に限界があり、スイッチング電源にはトランジスタが使えません。MOSFETの世界です。
けれども、オーディオ周波数領域では、充分に使えて、MOSFETが登場した近年でも、オーディオアンプに今なお採用されていますが、生産はかなり縮小されている昨今です。
トランジスタ採用!Xカレント回路搭載プリメインアンプ“MASTERS AU-900X/TR”のイメージ
TO-3パワートランジスタ サンケン 2SC1586/2SA909
新年のご挨拶
2015年を迎えました。みなさん、充実した日々を過ごしていると思います。
まずは、心身の健康です。気持ちの良いサウンドをお聴きになって、すてきな時間を過ごしていただくことを願っております。
2015年もよろしくお願い致します。
オーディオアンプのあるべき姿
昨年は、アドバスドZバランスアンプ、Xカレント電源回路の開発で、“アンプは電源が最重要!”、そして、アンプは“スピーカーのふるまい”を充分考慮して設計しなければならないと改めて感じております。アンプ設計者は、ともすれば、コントロール機能である増幅回路に気を取られ、上記ポイントを忘れがちです。
やはり、電源設計やスピーカー設計の経験を積んで、アンプ設計に係る事が重要と、この年になっても再認識しております。このポイントをベースに今後も邁進したいと思っております。
AU-900STAX/XHPについて
ところで、ここ2-3年、STAXのイヤーSPはじめ、ヘッドフォンヒアリングオーディオに人気があります。
やはり、大きな音で聴けることはオーディオの醍醐味です。けれども、他人に迷惑を掛けず、自分のサウンドワールドに浸れるヘッドフォンリスニングも大きな楽しみです。
特に、STAXのイヤースピーカーの空気感漂うサウンドは素敵です。
このことは静電力(クーロン力)で振動する発音体は動電(ダイナミック)型のような逆起電力が発生しないことに関係があります。
従って、ドライブするアンプのダンピングファクターは、静電型スピーカーにとって、その再生サウンドに理論的には関係がなくなります。
静電スピーカーのダンピングは、振動膜に掛けるバイアス電位によって決まってきます。
例えば、バイアス電位を下げていくと、サウンドは柔らかい感じで少し(2dB:300VDCで)音圧が下がります。逆に、バイアス電位を上げると、振動膜の張力が増し、ダンピングが大きくなります。STAXは長年の経験とノウハウにより、最適バイアス電位を決めていると言っています。
そうなると、STAXイヤースピーカーをドライブすることでの重要ポイントは、振動膜をひずみなく動かすことです。
それは、振動膜を両側から均等に動かす(バランスドライブ)ことなのです。
MASTERSのSTAXイヤースピーカーをドライブできるアンプは、真空管方式と半導体方式とがあります。
コンパクトで、費用セーブできるXカレント採用多用途プリメインアンプ“MASTERS AU-900STAX/XHP”が最近特に人気があります。
ブロックダイアグラムに示すように、STAXイヤースピーカーのドライブ回路はクローズドループで構成され、電源(電磁波ノイズ)、アース電位に影響されることがありません。クリーンなドライブ環境で、STAXイヤースピーカーをバランスドライブします。
また、このアンプにはXカレント回路が組み込まれ、スピーカー再生にも優れたパフォーマンスを示します。また、近年、動電(ダイナミック)型の進歩は顕著で、なかなかのサウンドです。特にゼンハイザーのヘッドホンは発音体の口径が大きく、振動系マージンが充分すぎるほどあり、STAXイヤースピーカーとは対照的な切れ味の素晴らしさを感じます。
このように、多くの楽しみを1台のアンプでできてしまうことは、ハッピーなことと思いませんか!
みなさん、ともかく、楽しく、オーディオに取り組んで下さい。
【図1】“MASTERS AU-900STAX/XHP”のブロックダイアグラム図(スイッチは省略)