長い歴史のオーディオ誌“ステレオ”4月号は電源問題特集です。
代表的な課題について、コメントしてみましょう。
50Hz地域と60Hz地域のアンプの音質の差異
『50Hz地域と60Hz地域とはアンプの音質が異なる。』
これはそのとおりです。
けれども、どうしてそうなるのかはまったくわかっていないのです。
電源トランスの大きさは周波数に比例します。具体的にはトランス本体のコア面積に関係します。
周波数が下がれば、その分、トランスコアの磁束が早く飽和してしまい、電源トランスの性能(効率)が下がりますし、漏洩磁束も多くなり、最悪の場合は発熱がひどくなります。
従って、60Hzほうがトランスを小さくできるのです。
逆に言いますと、50Hz用に設計された電源トランスを60Hzで使えば、トランスコアの磁束密度に余裕が生じてきます。
多くは良い音質が得られる方向となります。
そもそも、明治年代、日本国内で50/60Hzと2つの周波数を採用してしまったという誤りがあります。
世界の多くは60Hzを採用しています。
遅まきながら、新幹線は60Hzを採用しています。
ちなみに、小型化、軽量化のために、航空機の電源周波数は400Hzです。
なお、スイッチング電源については、50/60Hzでも性能に差異がありません。
スイッチング電源と電磁波ノイズ
近年、トランスを駆逐した感のあるスイッチング電源は、ダイオードで一旦整流して、その直流成分で発振させて1MHzくらいの交流を作ります。
発振トランスは当然、周波数が高いから、50Hzトランスに比べ、
50/1,000,000=0.005%サイズ
でできます。
この交流を再び整流すれば、直流が得られます。
結果として、著しく小型電源ができますし、商用電源100Vでも200Vでも動作します。
このような技術革新が可能となったのはMOSFETのおかげです。