店長が日々感じたことを、オーディオエッセイ風に綴ります。開発日誌、コラムなど、様々な内容を情報発信しています。

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STAXイヤースピーカ用カスタムアンプのお話

年明けを過ぎてから、不況ゆえに、多忙となってしまい、仕事に追われてブログ更新が遅れてしまいました。

昨年、秋頃、STAXイヤースピーカ(SP)のユーザーである熱心な若者の方(以下、“若者さん”と書きます)から、STAXイヤーSP用のカスタムアンプ製作の依頼を受けました。何回かのメールのやりとりで、以下のような盛りだくさんの内容を盛り込んで、製作することにしました。

  1. EL34(6CA7)真空管を使って、高音質専用アンプを作る。
  2. EL34は4本使用して、勿論、バランス増幅とする。
  3. EL34ドライブには12FQ7をパラ接続して強力にドライブする。
  4. S/N比、残留ノイズ、高音質の考慮から、前段はAD845(100V/μsのハイスルーレート高性能OPアンプ)を4個採用する。
  5. バイアス電圧200V-630Vまで連続可変出来るようにする。また、バイアス電圧を電圧計でモニターできるようにする。
  6. 入力はバランス、RCA入力と切り替えて使用出来るようにする。

通常業務の間を縫って、予備検討をしながら、製作しておりましたが、昨年末には、完成できず、ついに越年になってしまいました。

やっと、1月末に、やっと完成しました。写真をご覧下さい。

STAXイヤーSP用のカスタムアンプ

STAXイヤーSP用のカスタムアンプ

STAXイヤーSP用のカスタムアンプ

しかし、このようなユニークなカスタム品ものは、そのままではうまく行くはずもなく、アンプは若者さんとの間を何度か往復し、チューニングを重ねて、完成の域に達しました。

若者さんからの感想ですと、芳醇でリッチサウンドとのことです。わたしも若いときからSTAX製品愛用者で、また、STAXの社長さんとは、かつて、仕事を一緒にやった仲でもあるので、特別な親しみがあります。

私なりに、評価してみました。

  1. 残留ノイズは非常に少なく、聴き取れないレベルです。
  2. 電気的性能は、充分に達成出来ました。
  3. バイアス電圧可変は、イヤーSPのダイヤフラムの静電張力が変化するので、音圧もわずかに変化するなかで、音質は、ゆったりした音質(低電圧時)になり、電圧を上げていくと、緊張感ある、しまったサウンドとなります。STAXさんでは580V固定としてあるので、この使い方はユーザーさんの自己責任になりますが、高電圧バイアス印加を長時間加えない限り、問題はなさそうに思えます。
  4. アンプ全体はBA―225FB/MOSをベースにしましたが、入りきらず、奥行きの長いかたちとなりました。
  5. サウンドは、既定バイアス電圧で聴くと、アタック感が良好で、かつ、真空管アンプ独特の包み込まれるような温かみも感じられます。

このような、カスタムアンプに興味ある方がおられましたら、どうぞ、ご一報下さい。なお、このカスタムアンプの製作にあたってはSTAXさんからのソケット供給を受け、かつ、イヤーSPの構造、性能については、STAX社長さんから、適切なアドバイスを受けたことを感謝しております。


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