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引き算式チャネルデバイダ(中山式回路)

当社が製作しているクロスオーバー周波数可変方式は、他にないユニークで、実際のCH間のサウンドバランス調整に大変役立って、便利で、順調に注文を頂いております。
そのようななか、かねてから知っているFさんから、引き算式チャネルデバイダ(以下、「チャネルデバイダ」を「CHデバイダ」と記載します)を造ってもらえないかというリクエストを頂きました。

いきなり引き算式と言われて、戸惑ったのですが、落ち着いて考えると、20年くらい前、設計会社をやっていた頃、SONYの委託を受けた会社のKGさんから、引き算式の設計依頼を受け、設計、試作したことを思い出しました。

例えば、2CHデバイダを設計する際、普通は、低域側にはローパスフィルタ、高域側にはハイパスフィルタを設けて、構成します。
この方式は、6dB/octフィルタでは、フィルタの位相シフトがクロスオーバーポイントでは45度となり、どの帯域でも、低域と高域の和は一定であり、いわゆる伝達関数は1となります。但し、減衰量が緩いために、低域側と高域側とが相互干渉して、音響バランス上うまくいかないケースが多いのです。
そのような理由で、普通、CHデバイダは12dB/oct以上の減衰量のCHデバイダが主流です。けれども、この方式は、位相シフトがクロスオーバー周波数において、90度になるために、逆相になるため敬遠する方が稀におられます。そのような状況をクロスオーバー周波数を可変とすることで、最適ポイントを見つけ出すのがマスターズのCHデバイダです。

また、このような問題点を一掃する方式として、デジタルCHデバイダがあります。この方式は位相シフトの問題はまったくなく、自由に減衰量を設定できます。例えば、ー90dB/octのような凄い減衰特性も得られます。
事実、デジタルCHデバイダーを採用したCHアンプシステムを、2人の御宅で聴きましたが、サウンドバランスは素晴らしく、自然で好ましく、以前、その感想をブログで報告したことがあります。
けれども、サウンド品位を重視する方から、“A/D,D/Aプロセスを繰り返すので、デジタルCHデバイダは少し問題がある”ということを聞いたことがあります。

そのような状況で、引き算式CHデバイダとは、上記の2CHデバイダの時は、低域側にローパスフィルタを設置し、それを低域出力にすることは変わりませんが、高域側の出力は、入力信号から、低域側の成分を引けば、残りの成分は高域成分になります。これが、引き算式CHデバイダの基本的な考え方です。

詳細は省きますが、この方式で、-12dB/oct方式を採用しようとすると、位相シフト変化により、-6dB/oct方式と同じ結果になり、伝達関数は1になっても、減衰量に上述したような不具合が生じてしまいます。

この欠点を、1960年代の後半に、山中氏が、遅れた位相を進める補正フィルタを増設することによって、-12dB/octの特性を示しつつ、伝達関数1を達成できました。以後、引き算式フィルタによるCHデバイダは、山中(氏)の方式と言うようになりました。

それから、40年以上経た現在、山中式CHデバイダは私の知る限り市販されてないようです。具体的に引き算することは、OPアンプの反転回路を使えば、実現できます。

Fさんのご依頼により作成した、3CHデバイダのブロックダイアグラムを【図1】に示します。

完成まで2か月掛かりましたが、3点クロスオーバー周波数切り換え型のCHデバイダが出来上がりました。
確かに、入力信号とCHデバイダ出力総和とはまったく同じになり、伝達関数1が達成されます。
回路を重視される方は、この結果に狂喜されると思います。
私はスピーカ量産設計の経験から、音響バランスを重視しますので、引き算式が最高とは断言しませんが、ひとつのCHアンプシステムにおける方法と思います。

もし、引き算式CHデバイダを採用してみたい方がおられましたら、是非、ご一報ください。カスタム、一品製作アンプとして、引き受けます。
CHアンプ愛好者の方、ご検討願います。

<2015年7月19日追記>
【写真1】のイメージ画像のCHデバイダができました!!


3CHデバイダにおける中山式回路ブロック

【図1】3CHデバイダにおける中山式回路ブロック(-12dB/oct)


MASTERS CH-303Y/CUSTOM

【写真1】チャネルデバイダ“MASTERS CH-303Y/CUSTOM”


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