店長が日々感じたことを、オーディオエッセイ風に綴ります。開発日誌、コラムなど、様々な内容を情報発信しています。

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オーディオの注目ポイント

オーディオアクセサリー

ずっと厳しいビジネス環境が続いているオーディオビジネスにおいて、オーディオアクセサリーとヘッドフォンマーケットはにぎわっています。
オーディオアクセサリーは既存メーカーの手薄だったアイテム、いわばニッチマーケットに多くのブランド、小規模会社がアクセサリーを発売して、大きな売り上げ規模に成長したといえるでしょう。
そして、アクセサリーが成長したのはコンポーネントをいかに使いこなして、オーディオを楽しみたいオーディオファイルの気持ちを取り込んだものといえましょう。

この分野を開拓した功労者は故・江川三郎さんと、かつてオルトフォンジャパン社長、その後ゾノトーンで展開した前園俊彦さんと言っても良いでしょう。
はじめはスピーカーケーブルからスタートして、電源ケーブル、インターコネクトケーブルは普通品を使っていると引け目を感じる時代にまでなりました。
それから、インシュレーター、インシュレーターボード、電磁波対策グッズと次々にぎわしています。
オーディオアクセサリーの取次ビジネスをやっている友人が先週、久しぶりにTELしてきました。
けっこう、ビジネスは堅調のようです。但し、アクセサリー品のライフ自体が短く、常に話題を持った新製品を投入する必要があると言っていました。

私は、オーディオアクセサリーに“良貨は悪貨を駆逐する”という“反グレシャム法則”が成り立つと思っています。
例えば、100V電源室内配線は配電盤からコンセントまで、おおよそ、10m程度、Fケーブルで配線されます。
ここから、アンプまでの電源ケーブル(1.8m)を良質なものにすれば、アンプの音質は見違えるほど改善されるという常識です。
私はこの常識には少し疑問を持っています。それなら、専用柱上トランスを設置して、AC100V配線ケーブルまで良質なものと、徹底すべきと考えるほうです。

江川さんは“スピーカーケーブルは短く太いのが良い!”と主張されましたが、私はこれが正解と思います。

また、私の盟友、K・Tさんはケーブル類にOFCなど、高品位ケーブルを使うとサウンドが目指すところと違う方向(悪い方向)になってしまうといっています。そうなると、“良貨がより悪化させてしまう。”ということになります。
システム全体は同じ品位のケーブルで揃えるべきということになり、このことはそれなりに説得力あると思います。
ケーブル類には費用をかけ過ぎず、オーディオ誌の評価よりも自分のシステムでヒアリングしてみることが大事です。

もうひとつ気になることがあります。オーディオコンポに携わるプロの方々はそれぞれのアイテムに関しては詳しく、情熱を持って取り組んでいると思います。
けれども、オーディオ(再生)趣味はオーディオソフトから音が出るまでについての総合的見識が少し不足なような気がします。
例えば、アンプ屋はスピーカーのことをあまりにご存じないようです。

具体的な事例としては次のようなものがあげられます。

DFが高くなれば音質が良くなる!?

アンプのDF(DAMPING FACTOR)をあげることに努力しているブランドがありますが、スピーカーシステムのネットワークコイルの抵抗が50mΩ、
SPケーブル抵抗が10mΩあれば、DF1000(1000=8Ω/R→R=0.008Ω)あるアンプでも
DF=8Ω÷(0.008+0.01+0.05)→DF≒118
になってしまう事実です(チェンネルアンプシステムにすればDF1000は生かせる!)。

また、DFが高くなれば音質が良くなるということはありません。せっかくの努力は別の要素に注ぎこむべきと思います。

SPボイスコイルと高品位ケーブルとの関連!?

スピーカー屋はSPケーブルを知ってか、知らないか、ボイスコイルには相変わらず4N銅か、普通のアルミワイヤーを採用しています。
ボイスコイルに高純度銅を採用するとケーブルが固くなり巻きにくくなると言うでしょう。
アニール処理を施せば、ケーブルは柔らかくなり、巻いてほどけることはないと思います。
かつて、オルトフォンジャパン社長だった前園俊彦さんはMCカートリッジに7Nケーブルを採用することを実現しました。ボイスコイルでもやってみる努力が欲しいです。
ネットワークコイルにOFCが採用されてきている製品が販売されています。

電源トランスの巻線は!?

電源ケーブルに高価なケーブルが良いということになっていますが、トランス巻線は4N程度のマグネットワイヤーです。
100W程度の電源トランスの1次巻線長は、ほどいてみると15mくらいあります。さらに2次巻線の長さも相当あります。
そこに1.8mの高品位電源ケーブル効果?はほんとにあるの?と言う考えもあります。

オーディオ再生趣味はオーディオ機器とリスニング環境など総合的で決まるものと思います。
何はお互いの分野の理解を深めたらよいと思っています。
私がこのような出すぎたことを述べるのは、トランス設計、スピーカー設計、リスニングルーム研究、多次元音場研究、Dクラスアンプ設計に携わったうえで、アンプ製作にいそしんでいるからです。
オーディオ誌上で、各分野のプロを集めて、激論座談会をやって欲しいです。
そうなれば、もっと、もっと、オーディオ界は面白くなると考えています。

作り手側のアクセサリー的工夫

振動対策について問題があります。電源トランスは商用周波数で振動しているし、コンデンサー、半導体はオーディオ信号で振動しています。
電源トランスの振動ダンプには伏型タイプが有効です。縦型タイプに比べ、5倍~10倍、振動が少なくなります。
トロイダルタイプは振動自体少なくなります。けれども、負荷が重くなると、漏洩磁束が大きくなるのはあまり知られていません。
特に過渡的入力のとき、何となく、サウンドが汚れるということを感じる方がおられます。
そうなると、バッテリー電源ではすべてクリアになります。
コンデンサーはそのままにすれば、STAXのイヤースピーカーの原理と同じように振動して音が出ます。
さらに、パワートランジスタも加速度センサーで測定してみると振動していることを検出できます。
振動対策は、振動を抑え込む、きれいに振動させると方法は二分されます。
アンプ設計者はそこまでは手が回らず、ヒートシンクをブチルゴムでダンプする程度です。
コンデンサーはひたすらヒアリングして決めているか、これまでの実績を踏襲するかです。
ヒアリングはリスナーのセンス、好み、教養までが関係します。
社内では、コンデンサーをひたすら聴いて決めるエンジニアを“チェンジニア”と誤解されることも少なくありません。

ヘッドフォンヒアリング

フジヤエービックと言うオーディオショップをご存知ですか?
中野ブロードウエイ内にあります。元々、カメラ屋だった。
私は行ったことはありませんが、このショップがヘッドフォン、イヤホンブームに火をつけたと言ってよいでしょう。
特に、ショップ独自の内覧会はお客様でいっぱいだそうです。

私のヘッドフォンは、通常のダイナミックイヤフォンにはずっと関心がなく、STAXイヤーSP一筋でした。
ところが近年、ゼンハイザーのヘッドフォンを聴いて、参りました。
何と、美しく、迫力あり、素晴らしいサウンドでしょう。それに比例して高価なこと。
私は¥19,800のゼンハイザーで我慢しています。それでもリッチな低音感は魅力です。

ブログに記したようにヘッドホンリスニングはL/Rの音が交わらないため、L/Rのセパレーションが保持でき、そのまま耳に届きます。
従って、クラシック音楽では優位に聴けることになります。
作り手側が音源を創作するポップ、ジャズミュージックではむしろL/R分離の良さが障害になります。
この現象はL/Rの音をブレンドすることで改善できるはずです。


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