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店長が日々感じたことを、オーディオエッセイ風に綴ります。開発日誌、コラムなど、様々な内容を情報発信しています。
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2019年のご挨拶と展望

2019年が明けました。おめでとうございます。2018年は大変、皆様に応援いただき何とか継続できております。本音では、一日、一日がもう少しゆっくり経過しないかと願いつつ、1年はあっと言う間です。
私は3年日記を書いていますが、2019年で5冊目になります。読み返しても、大した人生ではないと悟りつつの毎日です。

私は基本的なアンプの開発・設計・製作アプローチについていつも考えています。
まとまりませんが、思うところをとりあえず記述してみました。

オーディオ界のオーディオアンプ

オーディオ機器のうち、オーディオアンプ(以下、アンプと書く)は振動~電気変換部分がなく、純エレクトロニクス製品と考えます。
今回は、アナログアンプ、それも半導体アンプをベースとして記述することに致します。
アンプの評価を語るに際して、現在まで、その測定・評価方法は連続信号(トーン・バースト信号にしても)に対する応答であって、その結果が優れていたからと言って、アンプの評価にならないことは常識になっていますが、悪いより、良いほうが良いと言えましょう。
それではパルス波形に対して、FF解析にしてもその結果の評価はマチマチです。
けれども、そのアンプの性格付けにはある程度役に立っています。
日本のオーディオ誌、オーディオクラフト誌においてはメーカー品の電気測定はまったくおこなわれておりません。40年くらい前くらいまでは、おこなわれていたこともありますが、いつの間にか無くなりました。
その根本原因は、オーディオは最終的に“聴いてナンボ!”の世界と言うからなのです。聴き方の好み、背景、環境等の因子での話になりますが、それは仕方のないところでしょう。
それでも、以下、作り手の立場から、述べてみます。

アプローチの方向

A志向:大きくとらえるやり方

例えて言えば、“木を見て、森、いや、森林をみる!”とか、格闘技に例えれば、“フォール勝ち、一本勝ち”というように、大技を優先する考え方とも言えます。

B志向:細部から詰めていくやり方

この方向性を好む方は日本ではかなり多いです。何かを前提で固定して、その短所や問題点を、段階を追って、主として対策を施すのをメインとするやり方と言えます。
“木を見て、枝、葉っぱを見る!”というような、格闘技で言えば、“得点を重ねて、優勢勝ちや、判定勝ちを得るような、こつこつ、重ねていくようなやり方と言い換えられましょうか?

具体的なアプローチ例

A志向:JBLに在籍したバート・ロカンシーは画期的な回路を実現しました。すなわち、差動入力、全段直結、コンプリメンタリー回路です。
この回路はJBLのSE-400やSA-600に採用され、その後の日本のアンプブランドに大きな影響を与えました。
と言うのは、回路の細部を眺めれば、少なからず問題はあったかも知れませんが、ともかく、それまで見たことのない回路だったと言えましょう。

B志向:上記回路に様々に改良を加えて、ひずみ低減競争を繰り広げたのが1970年代後半の日本ブランドのアンプです。そのために、高域特性の良好な半導体を開発したりして、回路細部を検討して、0.003%という低ひずみを各社達成しました。
一方、ヒアリングに徹し、特に部品、とりわけコンデンサーや抵抗を交換して良くなったと認識する方法です。
この動きに日本の部品メーカーは乗ってくれて、利益が出ているうちは協力的でした。
1970年当時、あれだけ力の入った音質部品は2000年にはほとんど無くなってしまいました。
あのブラックゲートケミコンも突然、姿を消してしまいました。
電源ケーブルについても、このような志向によって誕生したのではないでしょうか?
銅の純度を高めたり、銅の結晶を大きくしたりしたケーブルが好評でした。それからずっと、オーディオケーブルはビジネスになりますから、いろいろな細かい方向性によって、ケーブルは百科繚乱と言えましょう。
そもそも、家庭内の電源コンセントにくるまでの電源経路は柱上トランスから、多くは20m以上の長さで配線され、それから、漏電検知器、ブレーカーを経て、屋内配線(Fケーブル)されてきます。
そこから、アンプの電源ケーブル(2mくらい)でサウンドが変化すると言うオーディオは面白いと思います。
A志向的に、専用柱上トランスを用意して、オーディオ専用電源配線とすれば、電源ケーブル問題は、かなり劇的に認識されると思います。

マスターズの考えるアプローチ

私はどちらかと言えば、A志向的です。
具体的なケースで記述してみたいと思います。
プリアンプ:プリアンプはCDプレーヤーの出力が大きいので、アナログレコード時代のような増幅度は必要なく、むしろ、入力信号を減衰させる形でパワーアンプにオーディオ信号を送り込んでいるような状況です。
そうなると、アクティブプリアンプで構成するには、オープンループゲインが余ってしまい、多量のNFBによって、増幅度を抑えることになります。
そうなると、過度のNFBを主原因とするTIMひずみが多くなり、いわゆる過渡ひずみがヒアリング時、耳についてくるようになります。
(注)TIM歪(Transient Intermodulation distortion)とは、フィンランドの物理学者でオーディオ研究家のマッティ・オタラ氏が提唱したもので、THDが低い低歪アンプでも過渡応答が良くないアンプは音が悪い。オタラさんは1977年、サンスイにも来訪されて、この現象を説明しました。

この対策としてはB志向アプローチでは、位相補償回路の工夫によって、負性抵抗部をより少なくすることがおこなわれます。
この対策は、位相マージン改善は75度くらいの確保が限界です。連続信号では、位相がずれてNFB演算しても、高調波ひずみを減らすことはできます。
ところが、音楽のような過渡信号には、NFBにより演算は位相がずれるに従って、混変調状態となって音質上有害になります。
(但し、この現象が生じるのは可聴帯域外付近とかそれ以上の帯域になるので、気が付かない場合も多いです。)
その意味では、アクティブプリアンプの設計は難しいと思います。残るアプローチとしては、コンデンサー、抵抗、配線ケーブルを交換してみる作業になるのでしょう。
おそらく、この作業によって、音調は変化しますから、聴きやすいプリアンプへと導くことはけっこうおこなわれていました。
私がサンスイ在籍時、C-2302の開発に携わったときは、上記対策に加えて、増幅回路スルーレートを大きくすることにより改善されたと思っています。

マスターズが考えるアクティブプリアンプは、以下のようなアプローチでおこなっています。
その回路的な方向性としては、まず、NFB量をできるだけ少なくし、増幅度が多くなってしまった分は固定抵抗により減衰させております。
アンプのS/N比はオープンループ特性によって決まってきますので、S/N比はNFB量や減衰量では変化はありません。
そしてできるだけスルーレートを大きくして、TIMひずみの少ないサウンドになったと思います。
最近では、カスタム注文によって製作した300Bバランスプリアンプ(【図1】参照)は、のびのびとしたサウンドで、まったくTIMひずみ現象はなく、気持ちよいサウンドです。
そのうえで、片ch4連ボリューム方式により、音量は-140dBまで絞れ、実使用上、優れた残留ノイズの少ないプリアンプとなりました。

さらなる方向としてはアクティブアンプではなく、パッシブプリアンプへの方向に踏み切りました。
パッシブプリアンプのタイプとしては、ボリューム(フェーダー)方式と単巻トランス方式があります。ボリューム方式はアクティブプリアンプのようなTIMひずみの発生はありません。
けれども、ボリューム方式はボリュームを通すことによって、オーディオ信号のパワーアンプへの出力インピーダンスが高くなりますし、ボリューム位置によって、出力インピーダンスが変動するので、残留ノイズが変動することもあります。どうしてもと言う場合は、実用的な値としては10kΩインピーダンスボリュームがお勧めです。

トランス式パッシブプリアンプも同様、TIMひずみはまったく発生しません、さらに巻線抵抗のみが出力インピーダンスに関係するので、エネルギー消費がなく、出力インピーダンスはせいぜい100~250Ωであり、パワーアンプをパワフルにドライブできます。
トランスと言うと、ひずみが問題ではないかと心配される方がおられます。磁性体は微視的に研究すると、磁界により忠実に磁区が動けば、ひずみが発生しません。
目的を達成するには、ひずみのないコア材を採用することです。
パーマロイコアはMCトランスや通信用トランスに採用されているように、立ち上がり特性(μ)に優れ、ひずみがなく、その素晴らしさは定評があります。
入力する発振器のひずみとパッシブプリアンプの出力とを比較してみて、少し、驚きました。
両者はまったく同じなのです。すなわち、パッシブプリアンプでは歪まず、ノイズも発生しないことです。
音楽のような信号を通して、まったく信号変化はないと推測できます。
実際、ヒアリングしてみて、まったく有害な現象がありません。但し、コア材に最適な巻線設計をおこなうことが必要です。
多くのアンプ設計者は残念ながら、トランスや磁性体に対する知識がイマイチです。
私はたまたま、トランスのタムラ製作所、サンスイ電気に在籍し、いろいろと学び、経験したから実現できたと思っています。

さて、近年、新素材として、ファインメットが登場してきました。
ファインメット情報が広まったのは、かつて、あのWE300Bについての素晴らしさを見つけた新(あたらし)さんの力によることが大きいと思います。
ファインメット材は日立金属開発によるコア材です。その内容はアモルファス結晶コアに巧みなアニール処理を加えたものと言えます。
そして、コア材は0.1mm程度の薄板加工をされているので、渦電流損失も少なく、超高域特性も優れています。パーマロイコアと同等以上の特性を示します。
測定ではまったく検出できませんが、パーマロイとファインメットとのサウンドの違いは、注意深いヒアリングによれば、ある程度指摘できます。
強いて言えば、前者はわずかに寒色系、後者はわずかに暖色系のサウンドと言えそうです。

電源に対する考え方

アンプの電源は重要です。なぜなら、アンプ出力は入力信号がコントロール信号となって、電源供給電力を切り分けた成分であるからです。
このあたりはトランスと基本的に異なることです。従って、電源がアンプ出力も根源ですから、電源が良質でないと良いアンプにはならないからです。

電源トランス電源

電源トランスによって、適性電圧変換して、アンプにDC(直流)を供給します。
具体的には、電源トランスの容量、タイプ(EIとかトロイダルとかカットコアとか)、整流コンデンサー(タイプ、静電容量、使用構成/個数とか)、整流方式(整流管とか、ダイオード(シリコンとか、ファーストリカバリーとか、ショットキー)といろいろあります。それぞれの特長があり、いちがいにどうこうとは断言できません。ケースバイケース、ノウハウがあります。
トランス電源方式の問題点は、整流コンデンサーのマイナスとアンプ(ハーフ・ブリッジSEPP回路)の基準点(マイナス)とが混在して、再生サウンドが濁ってしまう現象です。
多量のNFBによって、電気的性能ではわからない現象です。ヒアリングにおいても、この部分について検討しなければ気が付かない部分です。
実は私も気が付きませんでした。この現象は後年、電流プルーブという測定冶具(高価)を入手して、オシロスコープで眺めることができて、改めて認識できたのです。
この現象を防ぐには、アース(グランド)に関係なく、動作するバランス増幅アンプとするのが有効です。まさに、Zバランス増幅回路はそれにあたります。
そうでないハーフブリッジアンプでは、MASTERSアンプ(AU-900Xシリーズ)ではXカレント電源回路で改善を図っています。

スイッチング電源

近年、家電、携帯等の電源は、大多数スイッチング電源になっています。
スイッチング電源の原理はいったん、商用電源(50Hz/60Hz、100V)をダイオード整流し、整流したDC電圧で高周波発振させて、必要電源を作り出します。
電源トランスを用いないので(発振トランスは必要)、小型/軽量電源ができます。こうできるようになったのは、高周波特性の良好なMOSFETの出現によります。
この電源のオーディオ的問題点は、高周波発振による漏洩成分(スプリアス)のアンプへの飛びつき混入です。
従って、さすがに、スイッチング電源によるMCヘッドヘッドアンプはありません。
電磁波ノイズの影響:電源を通じての電磁波ノイズのアンプへの悪影響はこれだけ携帯やスマホが普及した状況下では深刻です。
電源フィルター、電源ケーブルへの電磁波遮蔽材などがいろいろ販売されています。
装着採用しても、その効果は完璧ではなく、ある意味、気休め的かも知れません。
私はCE安全規格での仕事で、電磁波ノイズがアンプ内部入り込む測定と対策をずいぶんと委託業務としてやりました。
その経験から言うと、電磁波ノイズ成分は数十Mz~2ギガと広くあり、その電磁波ノイズの影響を防ぐのは容易ではありません。

バッテリー電源

それでは、一番、純粋な汚れのない電源とは何でしょう。
私は、電源電圧の制限がありますがバッテリー電源と思います。特に、瞬間電源供給能力のある鉛バッテリーが良いと考えています(ちなみに車始動時に流れる100Aにも充分対応します)。
将来性のあるものとして、化学周期律表からも理解できるように、リチウムは有望です。けれども、安全性が心配無くなれば有望です。
マスターズアンプにおいて、AC電源/バッテリー電源切替アンプがあります。スイッチで切り替えて聴くと、一聴して感知できます。
但し、鉛バッテリーは12Vですので、±12V電源ですと、取り出せるパワーに限界があります。
けれども、ハーフブリッジで8W、フルブリッジでは18W出せるので、ほとんどのリスニングではパワー不足は感じません(あとは充電の手間をどの程度面倒と考えるかです)。
最も有効なバッテリー電源の活かし方は、フォノイコライザーです。マスターズでは近々、バッテリー電源モデルを製品化するつもりです。

リレーの存在

近年の半導体アンプは、アンプ出力にリレーを設置して、リレーを介してスピーカーと接続されるようになっています。どうして、リレーは必要なのでしょうか?
それは、近年の半導体アンプは電源ON/OFF時、ショック音を発生させるからです。振り返って、例えば、JBL SA-600にはリレーは付いていません。
リレーが無くとも、ユーザーから、問題ありとのクレームは無かったと聞いています。
SA-600以後のアンプはコンプレーメンタリー回路ですが、初段差動回路に定電流回路を設置したアンプは、電源ON/OFF時、アンプ電源の±成分が同時に立ち上がることがなく、安定するまでの短時間、アンプ出力からDCが出てしまうのです。
リレーはご存知のように、1mm平方以下の点接点で接続されています。従って、オーディオ信号接続の点では問題ありの部分です。
この接触が悪化すると見事な2次高調波が発生することでも不十分な存在です。言わば必要悪と言えます。
そのせいかどうかは分かりませんが、アキュフェーズアンプはリレーを削除して、超低抵抗のMOSFETを採用しています。
リレーを削除するには、アンプ電源が電源on/OFF時、±電圧が均一に立ち上がり、立ち下がれば、スピーカーからショックノイズが出ることはありません。
MASTERSのアンプは、上記条件をアンプ回路において実現して、リレーを削除することに成功しました。
もちろん、スピーカーへのプロテクションについては充分な対策を講じています。

以上ざっと、記述してみました。たかがオーディオアンプでもいろいろ興味深いです。
A志向的発想のDクラスアンプは、その後のB志向的改善により、Dクラスアンプ内のスイッチングノイズはかなり抑制されてきました。
今後、小型・軽量・高効率というポイントからは有望と思います。

【図1】カスタム注文によって製作した300Bバランスプリアンプ

【図1】カスタム注文によって製作した300Bバランスプリアンプ


オーディオ評論家 菅野沖彦さんが永眠されました

オーディオ評論の第一人者として、また、名レコーディングエンジニアとして永年活躍された菅野沖彦さんが2018年10月13日、永眠されたとの報に接しました。
ご冥福をお祈りいたします。

私はサンスイ在籍時代、新製品アンプ開発時において、菅野さんには的確な評価者として大変お世話になったと感じております。
菅野さんのお宅には、数えてはおりませんが20回くらいはアンプを持参して伺ったと思います。菅野さんのお宅のリスニングルームは、オーディオ誌に紹介されていたように20畳以上のスペースがあり、そこには、長年、愛用されたJBLのチャンネルアンプシステムを中心とした4WAYシステム、マッキントッシュXRT-20の2通りのシステムが、いつでも聴けるように整備されていました。
ゆったりとしたソファで、おいしい紅茶を頂いて、持参した試作品アンプを聴くのは、緊張しましたが、とても居心地が良かったと記憶しております。

ヒアリングは、持参したアンプをマッキントッシュXRT-20に接続して聴くのですが、素晴らしいサウンドの中に、アンプの音質を自分なりに感じ取ることができました。
菅野さんはJBL愛好者であったせいもあり、サンスイには好意的で、有益なコメント、アドバイスを頂きました。

冷汗をかいた体験はB-2301開発時、試作品を聴いていただき、大変高い評価を頂いたのですが、ヒアリング後、電源をOFFすることを忘れて、試作品アンプが熱暴走して、パワートランジスタが数個飛んでしまいました。その原因をあとで調べてみたら、放熱器とパワートランジスタとのビス止めを忘れていました。上司には叱られ、後日、整備して、再ヒアリング頂いたのは言うまでもありません。今となっては懐かしい思い出です。
また、希望すると、菅野さんは快く、マッキントッシュXRT-20とJBLシステムとを切り替えて聴かせていただきました。どちらも、素晴らしい音場感に包まれていました。けれども、菅野さんはいつも、サウンドバランスの微調整をしておられ、大変なオーディオファンであり、音楽ファンであると感じました。

最後に、お手伝いできたのは、菅野さんが来日されていた名ピアニスト、ルドルフ・フィルクスニーのデジタル録音時でした。その時はシューマン、ブラームスのピアノ曲の録音でした。ピアノ曲にも大変詳しく、ピアノのフェルトタッチサウンドを再現することに苦心されていたのを思い出します。録音モニタースピーカーはJBLでした。

時が流れて、ロジャース時代も声を掛けていただきましたが、2010年頃から評論家活動を休止されて、静養されていたようでした。
戦後70年余、オーディオ界をここまで導いてきた巨星が消えていきました!


2016年のイシノラボはどうだったか?

明けましておめでとうございます。
年々、時の移ろいが早くなるのは加齢によるものでしょうか?
けれども、私は自分なりにもがいて、日々を過ごしていますが、これがストレスにはならず、生きがいになっているのかも知れません。

皆さんから見たら、我田引水、自己陶酔、手前みそと思えるでしょう!
マスターズブランドアンプとしてささやかな進歩と言うか、進展と言おうか、おずおずと書き出してみました。

2017年はどうなるか?それはこれから、準備を始めております。
そして、皆さん、まずは心身の健康を維持しつつ、日々を生きましょう。

Zバランスパワーアンプの進化

バランス増幅を達成し、次は、パワーステージはL/Rバランス電源構成、電圧増幅(プリドライブ・ステージと言う)は別電源、トータル3電源構成で、より、Zバランス回路は進化し、より、表現力豊かでパワフルサウンドとなってきました。

これまで、RCA入力については、いったん、RCA~バランス変換回路と通して、Zバランス回路入力に導いておりました。
いろいろ検討した結果、RCA入力においても、ダイレクトにZバランス回路に入力し、バランス信号入力時とまったく同様なバランス増幅をおこなうことができるようになりました。
プリアンプ、CDプレーヤーの出力がRCA出力で、バランス入力時と同じZバランス増幅のパフォーマンスが得られます。
アドバンストZバランス回路として、紹介しております。

Zバランスプリアンプの完成

フルバランスプリアンプ“MASTERS CA-888PZBシリーズ”として製品化

Zバランス・プリアンプができないものかと、ずっと考えておりました。かつて山水に在籍して、C-2301開発時、ラインアンプの方式について悩みました。
結局、ラインアンプは非反転アンプをHOT側、その出力を反転アンプに導き、COLD側として、商品化致しました。
それから、プリアンプのバランス増幅が気になりながら、山水からリタイヤ―し、それから、長い年月が流れました。
マスターズブランドのプリアンプとして、究極のローノイズ、低ひずみ、そして、優れたサウンドであるトランス式パッシブプリアンプに活路を見出し、多くの皆様に支持を頂いております。
その一方で、アクティブ素子プリアンプとして、Zバランス回路を搭載したアンプの検討を続けて参りました。
ようやく、Zバランス増幅プリアンプとして製品化でき、大好評をいただいております。そして、トランス式パッシブプリアンプにノイズ、低ひずみについてはかないませんが、Zバランスプリアンプの、アドバンストZバランスパワーアンプと組み合わせたときのサウンドパフォーマンスの気持ちよさは、驚きます。どうして、そうなるのかは分かりません。

私は以下のように考えています。
すなわち、私は、2016年、オーディオ誌にオーディオを味覚に例えて、“電気的特性は栄養価の表示のようなもので、そこからは味の良さは分からない。”と記述しました。確かに、現在のオーディオ技術では、電気的特性で音質の表現はほとんどできません。

さらに、ヘッドフォンのバランスドライブもそのままの回路構成でできます。
但し、Zバランスプリアンプの出力は純粋にバランス出力だけになるので、
Zバランスプリアンプ出力からアンバランス(RCA)出力を取り出すことはできません。
また、このプリアンプは、リーズナブル・プライスで製品化が可能となったと思っております。

ファインメットパッシブプリアンプ

ファインメットコア搭載トランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-777BC/FM”,バランス型トランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999FBG/Pとして製品化

ファインメットコア材については、オーディオ誌“管球王国”で活躍しておられる“新さん”がその優秀性を広報して数年以上を経て、高級真空管アンプにトランスとして、良好な評判のようです。

マスターズとして、始まりは、2015年12月に、あるオーディオファンからのリクエストで何とか製品化ならないものかと言う問い合わせがありました。
私のほうはまったくファインメットコアを入手するあてがなく、このお話はそのままになってしまいました。
そのあと、いろいろと探したところ、タムラ製作所の事業所近くのコア加工会社と連絡が取れ、社長さんとお話したところ、タムラ製作所にコアを永年納入実績があったとのことでした。

コアサイズ等を検討し、ファインメットコアをカットコア形状に加工いただき、2016年1月にファインメットコアを2個、入手できました。さすがに、安くはありません。
当然、磁性材料としての電磁特性は最高と言えます。肝心のサウンド(音調)は明るく、パワフルでいて、細部の分離表現は見事です。大編成の音源で混濁するような気配は微塵も感じられません。
すでに、数名の方がお使いになっておられます。

パッシブプリアンプでヘッドフォンが聴ける!

すでにブログ「MASTERSのパッシブプリアンプでヘッドフォンが聴けます!」に記述したように、CA-999FBG/ACを購入なさった方からの報告に始まりました。まずは本当に聴けるのか?
本当に良いサウンドで聴けたのです!
次に、電気的特性で、使える特性が出ているのかを調べました。これもOKでした。
そこで、私のところにある視聴用パッシブプリアンプでいろいろテストし、2週間前には、ファインメットコアのトランス式パッシブプリアンプにゼンハイザー(150Ωインピーダンスのヘッドフォン)で聴いたところ、さらに、すっきりした、切れ味良いサウンドが楽しめました。
近々、ヘッドフォン端子付きファインメットコア搭載パッシブプリアンプを製品化しようと考えています。

多数個ケミコン効果

多くのアンプの電源部にはケミコンが使われています。ケミコンはその内部構造から、超高域まで、電源インピーダンスを低く保持するのは簡単ではありません。けれども、そこまで考慮しなくともアンプの動作は特に問題ありません。
けれども、そのケミコンにより、アンプのサウンドに影響を与えているのは事実です。

1979年代、オーディオ全盛時にはケミコンメーカーはケミコン、とりわけ、整流ケミコンのおおもとであるブロックケミコンのサウンド改善に熱心に取り組みました。
ニチコンは山水にオーバル(楕円)型ケミコンを提案してきました。その中身は、円柱状に巻いたケミコンユニットから太い電極端子(タブと言う)を数本引き出し、電気的に超高域まで等価電源インピーダンスが低くキープされるというものでした。AU-D907に採用され、好評を得ました。
また、ケミコンに詳しいオーディオ評論家、故 金子秀男さんは日立コンデンサ等のケミコンメーカーと共同で、高音質ケミコンの開発に取り組んでいました。その成果がAUREXをはじめとするオーディオブランドのアンプに一時、採用されました。
結果は悪くはなかったですが、コストがかさみ、1990年以降は尻つぼみになってしまいました。
ケミコンメーカーは、納入数が少ないオーディオ向けより、当時から発展してきたスイッチング電源用ハイリップルケミコンのニーズが爆発的に増えて、オーディオ用ケミコンの開発改良は、その時点で終焉を迎えたと言ってよいでしょう。
そして、驚異的なハイエッチング技術の開発により、ケミコンは飛躍的に小型・大容量化して、工業用電源への用途が大多数になりました。
この進歩は静電容量が取れるもののケミコンの抵抗成分は増えているのです。
それ以来、電源用ケミコンのオーディオ分野での進展はなくなったと言ってよいでしょう。

マスターズアンプでは、オーディオ全盛時のケミコンを在庫し、優先的に使ってきました。
そのようなとき、2016年7月、長時間聴いても疲れない、そしてサウンドが絶対混濁しない、ほぐれた感じのアンプを作って欲しいとのリクエストを受けました。
その注文した方の用途は、1日12時間以上使うジャズバーで、アナログレコードを主体にジャズをJBLスピーカーで流すとのことでした。
そこで、個別ケミコン(ぜいぜいφ35くらいまでの)を多数個、また、ブランド、容量を替えて、トータル24個でそのアンプの電源部を構成してみました。アンプの電源部はこれらのケミコンでいっぱいになりました。これらを並列接続して、電源部が完成しました。
もちろん、ケミコンだけでなく、超高域の低電源インピーダンスのキープにフィルムコンも並列に接続しました。
この状態で、長時間エージング後、聴いてみて、私はそのしなやかで、まったく混濁のないほぐれた音調には驚きました。
パワフルさを出すには大きなブロックケミコンは効果があるのはこれまでさんざん経験済みですが、この年になって、このようなシンプルなアプローチでの体験は新鮮でした。
また、安定化電源でこのアンプを動作させてみましたが、このような音調は再現できませんでした。
以後、マスターズアンプは、φ20~30程度のケミコンを置くスペースが少しでもあれば、多数個ケミコン電源構成を実践しております。

パーマロイOPTによるサウンド

限定数のパーマロイコアによる出力トランスは好評で、あと2台分を残すのみになりました。
何と言っても、断然のひずみの少なさは、電気特性がヒアリング結果と相関が高いということは明言できます。多くの真空管アンプに感じられるおおらかさよりも、楽器、ボーカル等のサウンドの細やかな表情が聴き取れます。
その意味から、朗々と耳から血が出るようなALTECサウンドにはあまり向かないと思います。
それよりも、B&W、KEFのようなヨーロッパのひずみの少ない、音響研究が進んだスピーカーに合いそうです。かつて、スピーカーは進歩が遅いと言われ続けてきましたが、近年のヨーロッパを中心として、スピーカーメーカーの研究、検討成果が製品に反映されていると思います。
特に、キャビネット形状、キャビネット内の定在波処理、キャビネットの振動防止処理などなど素晴らしいと思います。唯一の難点は価格が高いことです。¥100万以上出さないと、これらのスピーカーは買えない。
思わず、愚痴が出てしまいました。

パーマロイコアにより、出力トランスをうまく設計し、合致した真空管回路で真空管パワーアンプを作れば、これまでにない音調のアンプができます。
イシノラボでは、残り少ない限定出力トランスの後継トランスの開発に時間が少しかかるかもしれませんが、努力する方針です。

アクリルプレートケースの素晴らしさ

2016年はアンプ型番の変更、デザインの変更があり、少なからず、戸惑いを覚えた方もおられると思います。
大友デザイナーの優れた感性と工夫により、輝かしいフロントパネル、それに何度も研磨、塗装を施して作られたサイドウッドのケースが、マスターズアンプに採用されております。このケースを採用したアンプは、アンプ型番にG文字を入れております。
透明アクリルプレートでブラッシュアップされたフロント面がつややかで、美しく輝いております。
マスターズアンプのような小規模ブランドにおいては、このケース作りは大友デザイナーの手仕事により生み出されています。
オーディオは観て、触れる楽しみは、少なからず重要と思います。
まだ、まだ、名人、大友さんは健在です。
ちなみにメーター付きアンプをご覧ください。

MASTERS CA-707 custom
プリアンプ MASTERS CA-707 custom

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プリアンプ MASTERS CA-707 custom

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