コンパチブル・プリメインアンプ“MASTERS AU-700BD”の話題です。
このキュートなアンプをお買い上げいただいた水戸市にお住まいのM様から、“素晴らしいパーフォーマンスが得られた”との嬉しいお知らせがあり、“ついては、もう1台、買いたい”とのお話がありました。
“どうされるのですか?”とお尋ねすると、“2台揃えて、バランスアンプ動作にして、結果的にモノラルアンプにします!”との方針をおしゃられました。大変、合理的な考えであるし、このアンプの活用性を見抜かれたことに感心しました。
そこで、正式にオーダーをいただき、でき上がりました。性能・音質を確認する上で、すでに納入した1台を返送していただき、同じような電気的性能・音質となるように調整・確認しました。
次はいよいよバランスアンプ動作のテストです。パワーは、トータルして3倍以上で、バッテリーでの動作の場合は18Wで、電源ユニットでの動作では25Wでるようになりました。(電源ユニットでの動作では、電源電圧をアップさせられるので、パワーは上がるのです。)
そして、ヒアリングです。最初はバランス出力付きのCDプレーヤーにダイレクトに接続です。(もちろん、XRL~RCA変換ケーブルは作りました。)パワフルで澄み切ったサウンドは大変な魅力です。電源ユニット動作接続で、すばらしいパフォーマンスが得られました。これは、やはり、L/Rの電源が干渉しないモノアンプ、そしてバランス増幅のメリットがあるのでしょう。
ニュー・ミュージック,ジャズ,クラシックと、次々と聴き続けること2時間。満足感に少し浸りつつ、次はバッテリー電源による動作を聴く事にしました。バッテリーユニットを2基用意できたので、L/R独立電源バッテリーによるモノラルアンプ、バランス増幅アンプによるサウンドを聴くことにしました。
バラード風な音楽再現は、何という澄み切ったサウンドでしょう!清らかな清流を感じる!大して涼しくもないヒアリングルームに涼風が流れる感触です。そして、パワフルな部分、例えばストラビンキーの“春の祭典”におけるグランカッサ(大太鼓)の一撃には度胆を抜かれます。更に、ビル・エバンスのジャズ名演、それもライブ音源には迫真のライブ感を感じます。各楽器の分離も明確で混濁することはまったくありません。
バッテリー電源では、±12Vなので、パワーは18W程度と低下しますが、バッテリーのレギュレーションは素晴らしく、パワーを上げても、アンプ電源の変動は、繋いでいるケーブルの10mΩ程度の抵抗による電圧低下だけです。それさえも、良質な電源用ブロックコンデンサを搭載しているので、見事にカバーします。
AU-700BDは入手しやすい価格(税込¥50,400:アンプ本体)ですし、コンパクトでスペースを取らないメリットもあります。回路の工夫で電源ON時でのアンプの立ち上がりはスムーズなので、SP用リレーは排除することもできました。また、このアンプをモノアンプにするとか、バランス変換回路を搭載するなど、カスタム仕様もリーズナブルな費用で可能です。
コンパチブル・プリメインアンプ“MASTERS AU-700BD”について考察してみましょう。
最近、このキュートなアンプに多くの関心が寄せられています。
今、ブログを書きながら、聴いています。歯切れが良く、明快で、分解能が良く、反応も抜群です。POPS、ジャズ、クラシックも、バロック、室内楽にも最適ではないでしょうか?
また、高効率スピーカからは本当の静寂に、炸裂するサウンドを聴けるでしょう。
そこで、落ち着いて、このアンプの電気的性能の測定を思い立ちました。
まずは、電源はAC100Vの電源BOXから供給される方式で行いました。
【図1】に示すのが、周波数特性です。これは、10~100kHzまでの周波数応答を測定したもので、10~100kHz±0.5dBで、フラットです。これは、優秀なアンプならこのくらいの値を示すので、そう珍しくはありません。
【図2】に示すのが、何と1mWから10Wレンジまで、ひずみを測定したものです。通常の測定データですと、100mWで済ませてデータがあります。100mWと言うと、(8Ωなら)1V近くの出力があるのですから、90dBのスピーカでもがんがん音が出ます。
そこで、わたしは、1mWまで測定することを試みました。10mW(8Ω)で0.28Vですから、10mWなら性能の良いひずみ率計ならば測定できます。わたしの使っているHP8903Bは、更に10dB以上少ない電圧でもひずみ測定が出来ます。
1mWは0.086Vですから、何とか、測定できました。それ以下はHP8903Bでは測定不能です。
また、ひずみの測定は、ノイズもひずみと一緒に測定するので、ひずみ率計のローパスフィルターの値がひずみデータに影響します。AUDIOPRECISIONの自動測定器のように、ローパスフィルターを20kHzにして、10kHz以上のひずみ成分が測定できす、結果的に良いデータがとれる業界向けの測定器もあります。
さて、ローパスフィルターは80kHzとして、ノイズ成分の有害として、ワイドバンドでひずみを測定しました。
【図2】のデータで素晴らしいのは、1kHzと10kHzのひずみがほとんど同じ値を示したことです。普通は、高域になるとデバイスの高域特性の影響でNFBが減り(減らし)、ひずみが多くなるのが普通です。
AU-700BDでは、それはほとんど一緒で、しかも極めて低い、優秀な結果を示しました。また、残留ノイズが少ないので、何と24.4μVを記録しました。この値は真空管アンプが1mVの残留ノイズとすれば、1/40の低さです。半導体アンプは300μVくらいですから、これと比べても、1/10以下です。
従って、深夜、ニアフィールドで聴いても、まったくノイズは聴こえません。
また、110dBという高効率ホーンドライバーでも、ノイズは聴こえません。
静けさの世界があります。皆さんが105dBくらいのALTECスピーカで聴いたとしても、静けさは保てます。85dBくらいのスピーカで聴いたとしても、その音の大きさは100mW(±20dB)で充分なのです。
本格的なオーディオルームがあるとしても、平均レベルは1Wならばとても大きいほうです。
要は、微少なサウンドには人間の聴覚は危険を感知する本能から鋭敏です。大きな音になると、鼓膜を守るためにブロード(それほど精密ではありませんが)なのです。従って、微少レベルのクリーンさ、ひずみのなさが重要なのです。
ここで、数字が分かりにくいというご感想も頂いていますので、参考に表を示します。
前提として、負荷抵抗(スピーカ)は8Ωとします。
パワー |
出力電圧 |
音圧比 |
|
200W |
40.0V |
0.0dB |
200Wを基準するとたった3dBの違いです。 |
100W |
28.2V |
-3.0dB |
50W |
20.0V |
-6.0dB |
|
20W |
12.8V |
-10.0dB |
|
10W |
8.9V |
-13.0dB |
|
2.0W |
4.0V |
-20.0dB |
|
1.0W |
2.82V |
-23.0dB |
皆さんが(90dBのスピーカで)聴いているレベルは、大きい音でこの程度です。 |
0.1W(100mW) |
0.89V |
-33.0dB |
|
10mW |
0.28V |
-43.0dB |
|
1.0mW |
0.086V |
-53.0dB |
ひずみ測定限界 |
0.1mW |
28.2mV |
-63.0dB |
まだまだ聴こえる音です。 |
0.01mW |
8.9mW |
-73.0dB |
これでも聴こえます。 |
0.001mW |
2.82mW |
-83.0dB |
SPに耳をつければ聴こえます。 |
0.0001mW |
0.89mW |
-93.0dB |
優秀な真空管アンプの残留ノイズ |
0.00001mW |
0.282mV |
-94.0dB |
トランジスタアンプの標準ノイズ |
0.000001mW |
0.089mV(89μV) |
-104dB |
|
0.0000001mW |
28μV |
-114dB |
MASTERSのアンプの残留ノイズ |
【図1】 周波数特性
【図2】 ひずみデータ
【図3】 バッテリー電源で動作させたときのひずみデータ
最近販売を開始したコンパチブル・プリメインアンプ“MASTERS AU-700BD”についてお話しします。
その構成はパワーアンプダイレクトで、RCA入力、3系統に対応するものです。
2009年12月頃から試聴機貸し出し依頼されていた方がいらっしゃったのですが、大変お待たせしましたが、やっとこのアンプでマスターズのBA225系のサウンドを聴いていただけることになりました。
このアンプは、バッテリーと商用電源のどちらでも動作するようになっています。
まずは、商用電源で聴いて見て、更にバッテリーで聴いてみるのも、ご負担のかかる金額ではないのでよろしいかと思っています。
私自身、昨日から仕事をしながら聴いてみると、分解能にすぐれ、さわやかで、きついところがなく、それでいて、鮮明、切れ味もGOODです。けれども、製作者が自己陶酔で語ったところで、その訴求力は知れています。
とりあえずは、1週間程度であればお貸しできますので、ご希望の方は、是非ご連絡をください。費用は送り返す時の送料だけご負担いただいています。
バッテリーは重いので梱包の手間や送料負担もそれなりにかかりますので、バッテリー電源のご購入を計画されている方に限らせてください。
商用電源で動かすのは、別売の電源BOXを一緒にお送りします。
是非、この機会をご利用下さい。
近郊の方は、せまく綺麗でないですが、当方の工房でいろいろなアンプのサウンドで聴いて、差異を確かめていただくこともできます。
このアンプは、既に休み明けに1週間の貸し出しの予定があり、5月12頃に戻ってきます。
ご興味をもたれた方は、お問い合わせフォームやお電話でご連絡をいただければと思います。