オーディオファイルの方の中で、マルチチャンネルでオーディオシステムを構築して、特に、ミッドレンジ、ハイレンジに110dBを超えるホーンドライバを使っている方は少なくありません。
110dBの音圧というと、ジェット機の大轟音に匹敵するもので、このようなものすごい大きな音を1Wの入力で出してしまうのですから、驚くほかありません。したがって、これらのドライバーの最大入力(音楽ソースで)スペックは5Wが限度と規定されていることが多いのです。オーディオ界を見渡すと、ホーンドライバにマッチしたアンプがないのではないかと思います。どう考えても、アンプ出力は2Wもあれば充分です。2Wですと、1m離れて113dBの大音量が鳴らせるので、2m離れても6dBダウンの107dBの大きな音になります。
ちなみに、4月29日に開催された“ウエストリバーアンプ”の視聴会で、音圧計で音の大きさを測定しましたが、フォルテシモ(ff)のところでも、2m離れて85dBでした。1mのところでは、6dBアップの91dB出ていたことになります。
このスピーカの効率は87dBですので、アンプは1W出すと87dBの音が出て、さらに、4dBアップの91dBでは、アンプ出力は、概算2.3倍くらい、2.3Wの音を出していたことになります。このレベルの音は、近所迷惑であるような大音量です。
通常の皆様のヒアリングレベルは、スピーカの効率を88dBくらいとして、せいぜい0.1~0.5Wくらいです。その代わり、小さいレベルで聴いているのですから、ノイズは気になるはずです。S/N比よりも、残留ノイズが音楽再生の質に影響します。
もっとも、“ホワイト・ノイズが好きだ!”という方もおられるので、それはそれで、よろしいと思います。
最近、パワーを落として、かつローノイズのカスタムアンプのご注文をいただきました。プリメインアンプ“MASTERS AU-880L”,プリメインアンプ“MASTERS AU-890L”、コンパチブル・プリメインアンプ“MASTERS AU-700BD”等は、究極のローノイズを実現しておりますが、今回はさらにウルトラローノイズを目指して、パワーは2W+2Wあれば充分というリクエストに応えるべく検討開始して、近々実現する予定です。価格も、他ブランドに比べて低価格を実現するつもりです。
写真は、最近納入したバッテリードライブの8W+8W、高域用スピーカネットワークを内蔵したカスタムパワーアンプです。“MASTERS BA-208BD CUSTOM”といいます。バッテリードライブならば、このようにコンパクトに作れます。
また、100V電源内蔵アンプでも、2W+2Wですと、アイドリング電流をAクラス領域まで流すことは、ケースを一回り大きくしてヒートシンクを大きくすることにより可能です。少し熱くなるのは省エネの面から避けたいという方には、ABクラスのバイアスを掛けて、ホーンスピーカ向けアンプを実現することができます。
様々なカスタムアンプ、オンリーワンアンプの製作も可能ですので、興味をもたれた方は是非お問い合わせください。
イシノラボの工房に視聴に来ていただければ、同じ回路のアンプで、商用電源とバッテリー電源とを聴くことができます。
プリメインアンプ“MASTERS AU-880L”,プリメインアンプ“MASTERS AU-890L”にしても、大好評をいただいておりますが、ひとたびバッテリードライブのサウンドを聴いてしまいますと、そのピュアさに虜になった方が多いです。コンパチブル・プリメインアンプ“MASTERS AU-700BD”がその代表例です。バッテリードライブアンプの素晴らしさと、100V電源でも素晴らしいサウンドを楽しめるコンパクトなアンプです。
巷では、電源ケーブルやクリーン電源などが話題になっております。けれども、商用電源を整流してクリーンな直流にするのは、やさしくありません。けれど商用電源は、やはり使い勝手がよろしいので否定はしませんし、私も、そういいながら商用電源で聴くことのほうが多いのです。
バッテリーはクリーンなだけでなく、車のセルモーターを始動するだけの多量の電流(瞬時に100A以上流せる)電源インピーダンスの低さがあります。そのあたりがサウンドにも表れるのでしょう。清らかな中に、パルシブなサウンドの立ち上がり感、立下り感の表現には思わず唸ってしまいます。±12V電源で動作させていますので、バッテリーは2個必要で、-電源側の充電には、充電器の+側をグランド側に、アース側をー側端子に接続して充電する必要があります。このことは、一度理解すれば間違うことはないでしょう。
東日本大震災の影響で、東京/東北電力地区在住の方々には、一層の節電が望まれます。
オーディオ好きの皆様は、ヘッドフォンヒアリングで済ますのもひとつの解決法です。けれども、少しはスピーカからのサウンドも聴きたいことと思います。
そこで、“オーディオ機器は実際どの程度の電力がかかるのか?”について述べてみたいと思います。
アンプのリア面を見ると、PSE表示で消費電力が記載されていますが、これはPSE試験法での電力消費量で、実際の使用にはそれほどマッチングしていません。
具体的なPSE試験条件は(1)電源電圧は+10%とします。(2)入力信号は1kHzを8波、出力がクリップする出力を加えますが、8波のあと24波の休止期間があります。(3)負荷はそのアンプの許される最低インピーダンスとします。
このPSE規定は、安全面を重視してこのような最大出力で音楽を聴くことを想定していますので、ユーザーのみなさんの実使用時のアンプ消費電力とは違います。そこで、実際の使用条件での消費電力について、述べます。
- 真空管アンプの場合: 真空管アンプのヒーター電力は、入力信号に関係なく消費されます。EL34のプッシュプルアンプなら、ヒーター電力だけで60W程度消費されます。それにプレート電流消費が加わるので、120W~160Wくらいは常時消費します。2A3シングルのアンプではどうでしょう?ヒーター電力は30W程度、プレート電流消費は50W程度、80Wくらいは消費します。真空管OTLアンプでは、効率が悪いので、200W以上消費する場合が多いです。これらの数値は、こちらには電力計があるので確認済みです。
- 半導体アンプの場合:
- 消費電力は、動作条件で大きく変化します。常時、最大出力と同じコレクタ(ドレイン)電流を流すAクラスアンプの消費電力は、非常に大きくなります。この熱は音を出しても出さなくとも同じような消費電力になり、音を出さないときの(節電の観点から)無駄な電流は全て熱となります。冬季のストーブの代わりならば、それはそれで役にたっていると思います。50Wクラスのステレオアンプで200Wは超えると思われます。
- 出力が大きいアンプはアンプの電源電圧が高いので、同じアイドリング電流でも電力は電圧×電流になりますから、AB級アンプでも、音を出さないときでも消費電力はそれなりに消費します。大体100Wクラスのアンプで、30~50Wくらいとなります。従って、出力の小さいアンプは電源電圧が低いので、音を出さないときの消費電力は小さくなります。ちなみに“MASTERS BA-225FB/MOS”で10W程度です。“MASTERS AU-700BD”,“MASTERS AU-880L”では5~6W程度です。
- それでは、音を出して聴いているときはどうでしょうか?皆さんの聴いている出力は効率88dB程度のスピーカで、平均、せいぜい0.5W程度です。それでもパワーの大きいアンプは、小出力のときの効率は10%以下に落ちるので、意外と消費電力は大きくなり、音を出さないときの電力に10W程度は加算されるケースが多いです。ところが出力の小さいアンプでは、パワーの大きいアンプに比べ、効率が20~30%程度でそれほど低下しないので、2~3W程度加算されるくらいです。
- Dクラス(デジタル)アンプの場合: Dクラスアンプは、音を出さない時は原理的には電力は消費しないことになっていますが、それではスイッチング時に過大電流が流れ、アンプが壊れてしまうので、デッドタイムコントロールと称して、いわゆるアイドリング電流を流す必要があります。また、効率も最大出力時に最高(80%くらい)になりますが、小さい音のときには効率は20%くらいに下がりますので、思ったほど消費電力は下がりません。但し、小出力(10W程度)のDクラスアンプなら、2~3Wの消費電力になります。
- プリアンプの場合: 半導体大型プリアンプでは50~60W程度消費しています。当然パッシブプリアンプでは、消費電力はゼロになります。
真空管アンプは、節電の観点からは不利な形勢です。また、Aクラスアンプも同様です。そうなると、5W~10WくらいのアンプでALTEC,JBL,TANNOYのような、ある程度の大型スピーカならば、バンバン、ガンガン鳴らしても、10W以下の消費電力で済むでしょう。
上記のような考慮は、これまでほとんど必要がなかったことですが、このような非常事態時には、オーディオ趣味も生活あってのものです。参考になれば幸いです。
ちなみにデスクトップパソコンは意外と消費電力は大きく100W近く消費します。使わないときは、電源を切りましょう。