店長が日々感じたことを、オーディオエッセイ風に綴ります。開発日誌、コラムなど、様々な内容を情報発信しています。

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修理からみる問題部品

ここ数年、オーディオアンプの修理依頼の問い合わせが、ひっきりなしにきております。

その主な不具合症状は、音が出たり出なかったり、ガリノイズが出るとか、オーディオ回路における接触、接続が問題になることです。
どうして、そうなってしまうのか?
推測として、【図1】をご覧ください。

【図1】スライドロータリースイッチ(小型でプリント基板に直付けできる)
【図1】スライドロータリースイッチ(小型でプリント基板に直付けできる)

50年前のアンプは入力切替にロータリースイッチを採用していました。
けれども、コストダウン、量産性向上のため、スイッチメーカーは【図2】のようなスライドスイッチを回転で動かすスライドロータリースイッチを開発して、アンプメーカーに売り込みました。
コストが安い、小型化できている。プリント基板に配線できると、良いことずくめと当時言われました。
さらには、アルプス電気はリモート・スライドロータリースイッチを開発し、アンプ配線はシンプルに合理化されました。

【図2】アルプスSRRN密閉ロータリースイッチ
【図2】アルプスSRRN密閉ロータリースイッチ

月日が流れました。まさか、30年40年、いや、50年近くアンプが使われることは想定していませんでした。
アンプメーカーのサービス部署は、発売から15年くらい過ぎたところから、交換部品を廃棄しはじめます。

そのころから、長年使用しているアンプの音が出なくなったとか、音が小さくなったとか、動作するときノイズが出るとかいう修理依頼が増えてきました。

そのような修理依頼に対応するには、交換部品がないためにスイッチの接点をクリーニングする以外、手が無くなりました。
直るもののまた再発するケースが多く、困ったことです。
器用な修理業者は、このようなスライドロータリースイッチをシャーシから取り外し、分解して接点を根元からクリーニングすることもやり始めましたが、すでに接点自体が摩耗しているので100%の処置ではありません。

近年のアンプではスライドロータリースイッチを採用せず、ロータリーエンコーダーを採用して、このような接触不良問題に対処しているようです。

マスターズアンプでは、入力切替スイッチはアルプスSRRN型密閉タイプを採用しており、25年以上経ったアンプといえど、接触不良修理はゼロです(【図3】参照)。

【図3】通常のロータリースイッチ。操作感がイマイチ
【図3】通常のロータリースイッチ。操作感がイマイチ

それでも、さらなる信頼性と接触性能の向上のため、高価ですが、セイデンロータリースイッチをリクエストに応えて採用しています(【図4】参照)。

【図4】セイデンロータリースイッチ
【図4】セイデンロータリースイッチ

セイデンロータリースイッチのうち、特に32型は最高の性能とメーカー側は自負しているだけあって、ヨーロッパ製のもの、測定器メーカーのロータリースイッチははるかにセイデンに及びません。
確かに、配線の手数はかかりますが、気持ちよく安心して、長年使えます。


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