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オーディオアンプの動作状態についての考察:オーディオアンプの安定動作について

電子工学、オーディオアンプ専門書を眺めると、アンプにNFBを施すことは、そのメリットがたくさんあり、オーディオアンプにNFBを掛けることは当たり前、必須になっているように感じます。一方、NFBを掛けると、音質上、必ずしも良くない結果にならないことも言われております。私自身も、特に真空管アンプでは、掛け過ぎると詰まって伸びないサウンドになる傾向は体験しております。

NFB理論からすれば、NFBを掛けない前の状態、特に、周波数特性はフラットであれば、NFBを掛けても、位相ずれ、時間遅れがなく、上記のような状態が発生することはスピーカにいろいろ課題があるにせよ、NFBには問題ないはずです。

NFBは、限りある周波数帯域を、NFBにより、見かけ上、ワイドに、ひずみを低く、内部抵抗を低くするので、大変なメリットです。けれども、どのような技術、理論でも、必ず光と影があります。

NFBを掛けた分だけ、位相ずれを起こした成分で特性改善するので、NFBを掛ける前の特性を良くしておけば、NFBによりさらに良くなり、安定動作するのです。従って、NFBを掛ける前の(オープンループ特性と言う)特性に充分に考慮を払うことに、サンスイ時代では、努力、注意を払ってきました。古くは、AU-607/707から始まった2ポール位相補整技術は、できる限りオープンループ特性の改善を図ってから、NFBを掛ける方法でした。

専門書によれば、アンプの発振条件は、位相特性が180度を超えないこと、そのときのゲインが0dB以下であることと書いてあります。それらを計算して解析する方法は、ボーデ、ナイキストの方法でできます。オーディオエンジニアは、それらを考慮して設計していると思いますが、高周波帯域での位相特性が120~130度以内なら発振せず、安定動作すると言われています。

それは、連続信号の場合であって、過渡的な入力信号でも動作はしているでしょうが、はたして本当に、安定な動作をして理想的なアンプになっているのかは、現在のところ決定的なことは分かりません。IC OPアンプのように、100Hz位からオープンループ特性を落として、とにかく、安定動作としている方法もあります。
また、NFBにより、WestRiverアンプ主宰者の川西さんが解析されたように、位相特性だけでなく、負性抵抗発生をできるだけ少なくすることが重要とする指摘には、私もそう思います。概して、負性抵抗について記述している専門書は少なく、そこにオーディオアンプの不備が残っているように思います。負性抵抗については、発振回路やコレクタフォロア回路において、超高域での発振現象で軽く触れられているだけで、負性抵抗についての記述は、尊敬する黒田徹さんの書籍に出てくる程度です。

山水時代では、負性抵抗という言葉が出てきたことはないですが、先輩から、安定度対策として、パワーステージには必ずベース抵抗を最適に入れること、C-B間に小容量のコンデンサを入れることは実施されていました。ある意味、この配慮は負性抵抗が発生しないための回路技術といえましょう。

真空管アンプでも、回路図をよくよく眺めてみると、例えばマランツのパワーアンプでは、初段に高周波低域でも部分帰還(NFB)が掛かっています。これも、負性抵抗発生防止回路と私は理解しています。

要は、NFBアンプはNFBを掛ける限り、位相特性と負性特性の両面から考慮を払ったアンプは、過渡的な入力信号においても電源コントロール性能が安定して、入力信号に忠実にスピーカをドライブすると思っております。


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