店長が日々感じたことを、オーディオエッセイ風に綴ります。開発日誌、コラムなど、様々な内容を情報発信しています。

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プリメインアンプ“MASTERS AU-900L”のパフォーマンス

最近発売した、プリメインアンプ“MASTERS AU-900L/HP”,““MASTERS AU-900L”は、大好評をいただいている““MASTERS AU-880L”,““MASTERS AU-890L”の第3世代として、開発致しました。

パワーは(12W+12W)と十分なパワーを有しており、アンプ回路はインバーテッド増幅回路に磨きをかけております。具体的には、最適動作の検討結果、図に示すような極めて優れた電気的特性を得られています。

但し、使い方は、“ユーザーさんに少し時間をいただき、ゆったりとオーディオを楽しんでいただくことが重要”ということが、ひずみ特性グラフから読み取れると思います。

電源ON直後は、1KHzのひずみは極小で、極めて優れています。高域10kHzでは、安定動作のため、NFB量を減るように設計してあるので、0.05%程度となっています。この結果はオーディオアンプの常識から言えば、優れたものといえましょう。ところが、電源ON後、20分以降では、十分に回路が熱的均衡して、アイドリング電流が少し増加して、オープンループ特性が改善、安定し、1kHzに変わらない優れた低ひずみを示すことです。この成果がAU-900Lの優れたポイントです。無理にNFB量を増やして、NFBのデメリット(TIM歪等)が出てくるのを巧みに防いでおります。
具体的には、NFBを掛ける前のアンプ本来のオープンループ特性に、十分な発振マージンを取ってあります。

また、それだけでは、アンプの安定動作には充分ではありません。特に、半導体回路の入力回路(ベース,ゲート)には発振を生じる負性抵抗ができやすくなります。これは、エミッタ(ソース)フォロア一回路だけでなく、コレクタ(ドレイン)フォロアー回路でも発生します。負性抵抗による発振現象については、どのオーディオ回路書籍を見ても、ほとんど触れられていません。多くは、体験的に発振防止ノウハウとして、設計試作時に現場対応し、飛びつき発振,寄生発振防止ノウハウとして処理してしまいます。(発振検出に効果的なのはAMラジオ受信です。発振すれば、“ザー”ノイズとして、発振認識できます。)
その発振が超高域(100MHz以上とか)ですと、オシロスコープで観測できないときは、大メーカーの設計者、品質保証関係者でも見逃していることは少なくないでしょう。(特に、近年、普及してきたデジタルオシロは過渡現象の可視化には有効ですが、高周波領域の発振では、高周波数用オシロスコープのほうが見つけやすいです。高周波発振がありますと、オーディオ帯域の電気的特性は良好でも、聴いてみて、どこかぎこちなかったり、表情がうまくでなかったりすることが生じてしまいます。)

私が眺めたオーディオ書籍のなかで、唯一、負性抵抗による発振が触れられていたのが、尊敬する黒田徹さんの書籍でした(はじめてのトランジスタ回路設計:CQ出版)。
その解決方法で有効な方法は、負性抵抗を実抵抗で打ち消す(中和)することで安定動作になることを数式で示してありました。また、回路によっては、CR回路負荷によって改善できます。

以上のような配慮をおこなったAU-900Lは、極めてしなやかで表情豊かなサウンドを奏でてくれます。さらに、コンパクトで、価値感あるサイドウッドを排した素敵なデザインも魅力です。価格は6万円台とリーズナブルです。

さらに、すでに発売しているMASTERS定番アンプにも、当然、以上のような考慮を払っております。

MASTERS AU-900L ひずみ率特性(時間経過特性)
【MASTERS AU-900L ひずみ率特性(時間経過特性)】


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