店長が日々感じたことを、オーディオエッセイ風に綴ります。開発日誌、コラムなど、様々な内容を情報発信しています。

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オーディオファイルの求める2種類のサウンド

オーディオファイルの求めるサウンドは2種類あるのでしょうか?

2020年12月号“ステレオ”(音楽之友社刊)に榎本憲男氏の記事で興味あることを見つけました。

ここでその部分ベースに私の解釈を記述してみます。

(注)この記事中、オーディオ趣味で、大元(マスター)の音を忠実に再現しようとする方々を“俺の音”派と定義しています。

私流に解釈してみます。

いわゆる原音再生

いわゆる原音再生、演奏会場の臨場感、ソフトマスターサウンドをそのまま正確に再生することを目指す。

この話題は古くても、今なお、根強い関心があります。

私の認識によれば、オーディオ黎明期に活躍されたオーディオ研究家 高城さんが広めたと言えるでしょう。
高城さんはオールホーンシステムを構築した方として功績を認められています。
高城さんは原音再生として、虫の音や雷鳴の自然音を録音・再生して、原音に感じるように努力されていました。

ほぼ同時代の オーディオ研究家 池田圭さんはWE 15Aホーン愛好家と知られていましたが、原音再生はマスターテープサウンドに近づけるかに努力されていました。

もう少し踏み込んで、演奏会会場でのサウンド認識をベースに再生サウンドを目指す方もおられます。
概して、クラシック音楽愛好家に多く見られるようです。
この考え方は良さそうに思えますが、クラシック録音といえども多数のマイクを使用し、モニターサウンドはレコード会社、録音場所等々いろいろな要素があって、この方向には飛躍があり、むしろ、“俺の音”を目指すことになるのでは!
要は、自分の好きなサウンドを追い求めるような気配も感じます。

私の考え方としては、バイノーラル録音・再生なら意味があると思いますが、スピーカー再生での妥当性は難しいと考えています。
むしろ、モニターサウンド情報にノイズ・ひずみを加えることなく、そのままスピーカーに送り込むことこそ、いわゆる“神の音”になるのではないでしょうか。
マスターズのトランス式パッシブプリアンプはそのような方向で開発致しました。
特に、NFBによる副作用を最低限にしたマスターズ Zバランス増幅アンプはそれです。

根強い方向として、高城さんを範にチャンネルアンプシステムを構築する方は意外と多いのです。

今なお、ゴトーホーン、エール音響、GTサウンド、Mズファクトリーズなどのドライバーブランドは健在です。

理屈では、最高の“神の音”ができそうですが、落とし穴がチャンネルデバイダーにあるように思います。
突き詰めていくと、デジタルチャンネルデバイダーはアナログ・デジタル、デジタル・アナログ変換にどうしても特有のデジタル臭さを感じて、アナログデバイダーに戻る方が少なくないようです。
確かに、マイクで測定してフラットレスポンスを実現しても、それは“神の音”とは違う感覚(聴感)なのです。

再生原則を変えないのを基礎に俺のサウンドを楽しむ

再生原則を変えないのを基礎に俺のサウンドを楽しむことを目指す。

一方で、『神の存在を忘れ、もう一度自分なりのマイルスやカラヤンを2本のスピーカーの間に出現させようとするのが“俺の音”派である。』と榎本氏は記述しています。

オーディオは、再生原則を変えないのを基礎に、俺のサウンドを楽しむものではないでしょうか。

概して、ジャズやポップスなどのリズム主体の音楽を好む方に多いように感じます。

“俺の音”を形作るために、再生側で、トーンコントロール、グラフィックイコライザー、ラウドネスがありますが、使われるチャンスが少ないです。
せっかく、アンプにそのような機能があるのに使わないのはもったいない話ですが、その重要性を指摘していた菅野沖彦さんや上杉佳朗さんのご自宅のプリアンプは、確かフラットポジションだったと思います。
もっとも、菅野沖彦さんはマッキントッシュのスピーカーの調整には、マイクを指標にしたボイシングイコライザーは採用していました。

オーディオサウンドを、ソフト側から与えられたオーディオ情報を元にアクティブに楽しみたい方々です。
そうは言っても、トーンコントロールやグラフィックイコライザーは使いたくないという考えです。
そうなると、電源ケーブルを交換する、スピーカーケーブルを交換する、RCAケーブルを交換する、いわゆる“ケーブル選択エンジョイ!”です。

さらに、今やオーディオアクセサリーはたくさんあり、まだ増えると思います。
けれども、これらは微妙な差異で統計的有意はありません。そのあたりの繊細なヒアリングを楽しむオーディオと言えましょう。

CDが出現したとき、一時、プリアンプ不要論は流布した歴史がありますが、さらにはプリアンプに“俺の音”を求める方が少なくないことも気が付きました。

プリアンプに個性を持たせることは、アクティブプリアンプに製作者側が意識的にしなくとも、結果的にそうなることが多いようです。
その要素は回路・部品・構造によって形作られるのでしょう。具体的には真空管アンプにその傾向が生まれます。
なぜなら、真空管プリアンプは半導体アンプほど多量のNFBを掛けられないので、真空管自体の個性(高調波特性、増幅率、残留ノイズ等)があるからです。
例えば、テレフンケンとRCA、松下等で微妙に異なります。また、設計者のバイアス電圧、プレート電流、プレート電圧のかけ方でも違ってきます。

私は、俺流サウンドを求めるならアクティブプリアンプをお勧めします。
より個性的サウンドを望むなら、真空管プリアンプが良いでしょう。


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