これまで、パワーアンプの負荷を軽くして、ひずみ、残留ノイズを低減し、特にニア・フィールドリスニングや高効率スピーカーをお使いの方に、プリメインアンプ“MASTERS AU-890L/T”は好評を得て参りました。
最近、トランスの接続法をオートトランス式として、パッシブプリアンプと原理的に同じような使い方を考え、さっそく、実験してみました。
基本的な接続法は【図1】のように、トランスの2次側という考え方はなくなり、オートトランスとしての使い方となり、1次,2次巻線間の結合の問題はなくなります。
従って、これまでのトランス接続法のメリットに加え、高域周波数特性がよりワイドレンジとなりました。
実験に使用したアンプは新発売のプリメインアンプ“MASTERS AU-900L”です。このプリメインアンプは12Wの最大出力がありますが、このトランス接続によって、最大出力は1W程度になります。
具体的な接続回路は第2図のようになります。
電気的特性は、以下のようにすばらしく、特に、高域ひずみは最高に優れた結果になりました。
出力 |
10mW |
100mW |
0.5W |
1W |
ひずみ率 |
1kHz |
0.010% |
0.007% |
0.010% |
0.05% |
10kHz |
0.010% |
0.007% |
0.010% |
0.06% |
また、残留ノイズは15μVと測定限界に迫ります。
従って、110dB以上の高効率のホーンドライバー用のアンプにも、トランスが介在するので、安全で静粛なサウンドを提供するでしょう。
さて、実際に聴いてみると、ジャズでは、ドラムスの表現がクリアでリアル感を非常に増します。また、ギター等の弾く楽器の切れ味も最高です。
クラシックでは、複雑な絡み合いも、ストラビンスキー“春の祭典”を例にとると、楽器の分解能、融合を気持ちよく聴くことが出来ました。また、フィメールボーカルでは、浸透的な清らかな歌声が眼前に広がります。
このトランス接続法を搭載したプリメインアンプ“MASTERS AU-900L/T”は近々発売致します。ご期待下さい!
マスターズ製品はリーゾナブルな価格ですから、それほどの負担にはなりません。
なお、プリメインアンプ“MASTERS AU-890L/T”をお使いの方で、この新しいトランス接続法に改造することは可能ですから、ご希望の方はご一報ください。
【図1】基本的接続方法
【図2】動作切換回路
発売以来、大好評をいただいているMASTERSパッシブプリアンプ(トランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-777S”,“MASTERS CA-999FBS”)ですが、画像に示すようなカスタム仕様の素敵なパッシブプリアンプも作れます。
はじめの写真は、L/Rを独立して、音量コントロールするカスタムパッシブプリアンプです。部屋・スピーカの音響特性を考慮して、L/Rバランスが取れる方法も意味あることです。
MASTERS CA-999FBS CUSTOM
次は、究極のパッシブプリアンプと言えるもので、バランス仕様、バッテリードライブによるトーンコントロール回路内蔵、L/R独立音量コントロール方式のカスタムパッシブプリアンプです。
MASTERS CA-999FBS CUSTOM(トーンコントロール付)
このように、お客様のオンリーワンアンプが作れます。
なお、以下の写真のように、パワーアンプ,STAXアンプ,チャンネルデバイダーもカスタムで作れます。
バッテリードライブパワーアンプ(モノラル仕様)
STAX用カスタムアンプ
4WAY チャンネルデバイダ
興味をもたれた方は、どうぞお気軽にご相談ください。
このところ、ピュアサウンドのトランス式パッシブプリアンプを聴いてから100V電源で動作するプリアンプを聴くと、ピュアなサウンドではトランス式パッシブプリアンプに及ばないにしても、半導体プリアンプでも、電源部に考慮を払えばかなりのレベルのサウンドになることを実感するようになりました。
その例としては、他に例をみない(オンリーワンと思います)真空管整流方式を採用したフォノイコライザーアンプ“MASTERS PH-700VTS”です。
真空管整流方式は、半導体ダイオードのような短時間整流電流が逆流してパルスノイズを発生することがなく、スムーズに整流する性能です。
PH-700VTSでは、充分な電流容量(150mA以上)を有する整流管を2本搭載して、電源部が大きく重くなりますが、そのおかげで、とてもなめらかで表情豊かなアナログレコードサウンドが聴けます。特に、MCトランス“MASTERS MC-203”と組み合わせると、しなやかで表情豊かなサウンドが聴けます。
MC-203は、オルトフォン、テクニカ、デノン等あらゆるカートリッジに対してインピーダンスマッチングを取って対応致します。
なお、日本で有数なアナログオーディオショップ、サウンドハイツさん(千葉県市原市)で視聴できます。
参考解説として、半導体プリアンプでは、通常は安定化電源を搭載しますが、流れる電流がほぼ一定なプリアンプでは、あえて安定化電源を搭載する必要がありません。むしろ、安定化電源が不安定動作した場合、オーディオ信号出力に発振状況に似たノイズが混入して、良くありません。
もっとも、バッテリー電源による半導体プリアンプは、リップルゼロ・ノイズゼロなので、内部抵抗が低いバッテリーで動作させれば、素晴らしいサウンドになります。(但し、内部抵抗が大きく、すぐに電圧降下し容量の小さい乾電池はだめです。)