EL34によるバランスプッシュプルパワーアンプは3年経過のうちに好評に推移して、カスタム化したアンプも数台の製作を致しました。
そこで、今度は300Bで実現しようと検討を開始し、このほど、やっと形になりかけております。画像に示すように、整流回路に2本も整流管を採用して、他の真空管アンプにはないL/R2電源方式としております。
300Bの定評ある良好なサウンドと、整流管整流の整流ノイズや逆流期間のないスムーズな電源で、かなり優れたサウンドが出てくるような期待があります。
但し、パワーは16W+16W程度に抑え、充分なロングライフが実現できるように致しました。まだ配線中なので、10月になりましたら完成報告出来ると思います。
そして、新開発Zバランス回路の新アンプの試作もシャーシケースが出来上がってきたので、注力しているところです。
とりあえずの試作機は、デザイナーの大友さん(熱心なオーディオファン)に3週間前に送ったところ、益々好ましいパワフルサウンドになってきたとの報告がありました。
それでは、微力ですが、ご期待下さい。


私事で恐縮です。先週、アメリカ・NJ在住(永住権取得)の35年来の仲間、I・Fさんが1.5年ぶりに来日し、秋葉原で会いました。
お互い、年だな!という挨拶はそこそこに、モノ作りの意味はどうなんだろう?という話になりました。
私は、“アメリカの産業は何があるの?”と問うたところ、複雑な顔つきで、“車かな?”と、言うので、“アメ車の占有率は?”と聞くと、“40%くらいかな?”、続けて、“最近はヒュンダイ(現代自動車)が10万マイル保証!ということで、売れ行きを伸ばしている。もちろん、日本車はトップであるけど、米国製”。
“次は、軍需産業、飛行機あたりか!”、第2次産業としては、アメリカは相当沈下しています。一時、金融工学!がもてはやされましたが、リーマンショックで吹っ飛びました!
いつまで経ってもアメリカの失業率は下がりません。それに、アメリカは貧乏人を助けるという気風はありません。自己責任の世界です。(特に共和党)
やはり、ものを作ることは雇用を生み出します。また、いくら製造マニュアルを整備しても、作らないと製造のノウハウは得られません。
ちなみに、“真空管アンプ製作でも、参考書籍だけでは微妙なポイントについてもノウハウも得られません”。
更に、作ることを重ねて、実績、経験、知恵、発展が生まれてきます。
アメリカの“シリコンバレーは健在!”と、I・Fさんは言いますが、開発・試作までで、製造は中国中心です。製造業が無ければ、開発、設計人材の雇用は生まれますが、製造者雇用は生まれせん。MACやウォールマートの店員の仕事のような販売労働になって、失業率は改善しません。
翻って、30年前のアメリカでは、オーディオではスピーカ組立ライン、アンプの製造ラインは残っていました。
そのような、あとを追っているのが日本です。近い将来(10年以内)、国力はインド、ブラジルに抜かれるかも知れません。
サムソン、ヒュンダイの韓国勢にしても、同じような傾向はウォン安が退潮すれば、同じように衰退傾向になるでしょう。
市場経済の原則から言えば、同じような仕様、性能ならば、安いところが繁栄します。
かつての日本は、そのような生産地を求めて、経営者は、1970年代は国内の労働力の安いところ(東北、長野、北海道、九州など)に生産拠点を移し、採算を取ってきました。
1970年代~1980年代の日本のオーディオ界はそうでした。そうすることによって、地方の経済、雇用が成り立っていました。
ところが円高になると、相対的に、労務費は海外の発展途上国に比べ割高になり、経営が厳しくなってきました。
私が在籍していたサンスイも同様です。まずは、1980年代、台湾企業と提携して、海外生産をスタートしましたが、うまくいかず、ついにサンスイは海外資本によって経営権を失いました。それから30年後、完全にサンスイブランドは消滅しました。
話を戻して、具体的な話として、1990年代まで、アメリカ在住の友人経由で、アメリカのトランス会社にトランスを作って貰っていましたが、経営が厳しくなり、また、設計・製作するエンジニア、職人が老齢化して、その会社は消滅してしまいました。
いっとき、アメリカ人は“BY アメリカン”ということを重視していました。けれども、ものが作れなくなり、作れるのは軍需、飛行機くらいになってしまい、ドル安になっても景気は上昇しないし、雇用は改善しません。
一歩退いて、価格が勝負の家電、アパレルはある程度の海外生産はやむをえませんが、趣味製品、グレードを気にする製品、先端技術製品は、やはり自国で頑張るべきでしょう。
最近の中国事情を中国で働いている日本人の友人に聞くと、中には意欲のある優秀な方がいて、結果として、製品レベルは非常にアップしてきており、長くない将来、自分は解雇され、帰国する結果になるだろうと言っておりました。
オーディオに関しては、ピュア・オーディオビジネスで、今や国内資本で国内生産で頑張っているのはアキュフェーズだけと言えましょう。(フォステックスにしても、開発は国内ですが生産は全部中国です。)ヨーロッパのオーディオ製品も中国生産が激増しています。
自分の思い込みとして、イシノラボ/マスターズのような零細規模の会社は、他にないユニークさを持って、お客さんのニーズとこちらの開発シーズとがうまくコラボすれば、ユニークなピュア・オーディオ機器が生まれるでしょう。
50年来の盟友、川西さんの主宰するWestRiver(ウエストリバーアンプ)もそうあるべきと思っております。
マスターズはそうして、製作は国内、ハンドクラフトで頑張ります。
国内、国内生産で頑張っているブランドは、エアータイト,テクニカル・ブレーン,マックトーン,オーディオノート,ブリッジオーディオ,サン・オーディオ,オーディオ・テクネ,ソウル・ノート,ダイナベクター,協同電子,ハーモニクス,ゾノトーン,レーベン等々あります。できれば、買い易い価格で、ずっと継続してほしいと願うものです。
今回のブログは具体性に乏しく申し訳ありませんが、中国(西安)で働いている友人に先週TELしたところ、西安のデモは暴徒化して、自宅待機ということを聞いて、上述の状況だけでなく、カントリー・リスクをも考慮しなくてはと思うようになりました。
若い方は、“いまさら、モノつくり!”と言われるのも充分承知しますが、それならば、願わくば、世界に誇れる“アニメ産業”、“ゲーム産業”では、絶対、国内製作・生産で頑張って貰いたいです。
まとまりがなくて、すみません!
この度、長年イメージしていたバランス増幅回路を具体化しました。
回路名をZバランス回路とネーミング致しました。
その経緯を以下に記します。
バックグラウンド
1980年代、サンスイ在籍時代にバランス増幅回路を提唱し、Xバランス回路として、サンスイアンプの最後のかたちとして、30年近くが過ぎようとしております。
サンスイのXバランス回路について
発想のスタートは、当時(1980年代)、スピーカーをボイスコイル両側(+,-端子)からプッシュプルで動作させるという方式には、確信をもって素晴らしいサウンドを実現できると信じ、サンスイ研究開発技術陣の方々との協力作業の結果、具体化できました。そして、私がサンスイを辞したあともXバランス回路はずっと継続され、特に初段差動部は横手さんの検討により、ウイルソン定電流回路の採用によって、より一層洗練されました。
この回路をサンスイは使い続け、サンスイ終焉まで、サンスイアンプの主要部分であり続けました。
サンスイを離れてから気にはなっていましたが、Xバランス回路の改良版は出来ないかと、12年前頃から発想し、ここ2~3年、思いをめぐらせてきました。
サンスイのXバランス回路の素晴らしさは充分認識しておりますが、強いて難点を言えば、増幅回路が3段構成になっているので、回路が複雑になっていることです。
そして、3段目のオープンループ増幅度が高いので、対グランドのDC変動が少し大きいということが言えます。この調整は、3段目のエミッタ抵抗を調整してDC変動を調整しますが、調整後も変動するので、何回か調整をおこなう必要があります。
この部分をサーボ回路にすれば解決しますが、サーボ回路によってアンプの動作点が常に変動することが音質に微妙な影響を与えるので、実施には踏み切れなかったと思います。
新開発のZバランス回路とは!
バランス増幅回路を実現するには、差動回路から2組の差動回路を取り出すことが必要になります。
通常の初段差動回路では1組の差動出力しか取り出せないのですが、サンスイのダイアモンド差動回路では、初段にダイオードを3~4個、負荷抵抗にシリーズに設置して、2組の差動出力を作って次段のダイアモンド差動回路に直結されます。
ダイアモンド差動回路には2組の差動回路が出力されるので、それを差動プッシュプルで2組の3段目の回路を構築し、パワー段に導けば、バランス増幅回路となり、ホット・コールド間のDCオフセットを最少にするためにクロスフィードバックを掛ければ、反転増幅型のバランス増幅回路となり、Xバランス回路となります。
今回のZバランス回路は、もっとシンプルに実現できないかと検討し、初段を上下差動回路として、上下の差動ドレイン出力から2組の差動回路を導き、差動プッシュプルに導き、パワー段を構成してバランス増幅回路が実現できることになります。すなわち、2段増幅回路で、具体的な回路が実現できました。もちろん、ホット・コールド間のDCオフセット安定のためにクロスフィードバックを掛けております。
対グランドについてもDC安定度は、差動プッシュプル回路の片側のエミッタ抵抗を微調する方式は、Xバランス回路と同じです。
この回路の特長は
- DC安定度が優秀で、ホット・コールド間のDCドリフトがほぼゼロ(±1mV程度)。また、対グランド間のDCドリフトも大変少なく、一度設定すれば安定します。
- 増幅方式が完全にホット・コールド間が互いに影響し合ってバランス増幅動作するので、これまでのブリッジバランス方式よりも、より理想化されたか回路方式と言えます。
- サウンドは試作段階ですが、サウンドの立ち上がり立下りが非常に自然で、サウンドの透明感や奥行き感、そしてパワフルであると感じております。
- また、これまで製作したMASTRESのバランス増幅回路アンプ、とりわけ、フルバランス・パワーアンプ“MASTERS BA-225FB/MOS”,インバーテッド・フルバランス・パワーアンプ“MASTERS BA-225FB/MOSy”について、新回路への改造の可能性を検討中です。追って、ユーザーの皆様をはじめとして、ホームページ上で告知する予定でおります。
新製品への採用を考えております
図に示すような構成・レイアウトで、30W+30W程度のプリメインアンプの試作に取りかっております。いずれ、8月中にお披露目出来ると考えております。

【Zバランス回路(新開発)原理図】

【Zバランス回路を採用したプリメインアンプ“MASTERS AU-999ZB”の試作】