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スピーカーについて、知っておこう!

オーディオアンプは、スピーカーを動作させて音を出させる機器です。
けれども、設計・製作するうえで、アンプ技術者はどの程度理解しているのでしょうか?

動作原理

フレミングの左手の法則で、磁界の中に電流が流れれば、90度の方向に力が働くことで振動体が動く。このことは電動機(モーター)と同じです。音響振動を電流に替えた機器(オーディオアンプ)で、振動体を動かし、空気を動かし、音にします。

スピーカーの周波数特性は定電圧と定電流ドライブとで異なる

スピーカーの周波数特性は定電圧と定電流ドライブとで異なります。

定電圧ドライブとは、負荷インピーダンスが変化しようと一定電圧を供給することです。具体的には、8Ωと4Ωと変わっても送る電圧は変わらないから、負荷には2倍の電流が流れます。

スピーカーの周波数特性を測定するには、定電圧で出てくる音の大きさを測ろうとする方法が80年以上前、デンマークのB&K社が決めた以来、踏襲されています。
真空管アンプ時代にはB&Kの測定用ドライブアンプは6AR5ppで、多量のNFBが掛かっていました。

半導体アンプは多量(40~50dB程度、多量のNFBが掛かっていますから、定電圧特性に近い性能です)、特に、多数パラレルパワーデバイスを投入し、大変低い内部抵抗で作られているアキュフェーズアンプは定電圧アンプに近いでしょう。そこまで厳密に言わなくとも、アンプのDFが50以上あればそう言っても間違いはないと思います。従って、スピーカーカタログに載っているような周波数特性で聴いていると思われます。

一方、定電流ドライブは負荷インピーダンスが変わろうとも、一定電流を送り続ける方式です。具体的には、負荷より大きな内部インピーダンスアンプでスピーカーをドライブすることが定電流ドライブ方式です。

具体的には、100Ω程度の抵抗を直列に接続してスピーカーをドライブすれば、定電流ドライブと言えましょう。この方法で、スピーカー両端子の電圧を測定すると、いわゆるインピーダンスカーブが分かります。

半導体アンプと真空管アンプのサウンドの違い

半導体アンプと真空管アンプとで、出てくるサウンドにどのような違いがでてくるでしょうか?

半導体アンプは定電圧アンプと考えると、スピーカーシステムのインピーダンスが変わろうとも、スピーカー端子にかかる電圧は変わらないので、スピーカー設計者の自由度は広がります。

特に、ネットワーク設計において、回路教科書に書いてあるような定インピーダンス型のネットワークにすると、ほとんどのスピーカーはクロスオーバー帯域で周波数特性がアップして、うるさい音になってしまいます。

これは、ある程度、理論値よりも小型にスピーカーシステムはつくらないと、ユーザーは置き場所に困り、買ってくれないことになります。

その解決法がクロスオーバー帯域のネットワーク定数をずらすことです。

具体的に、500Hzでクロスさせるネットワークは、計算上ではWFは300Hzくらいに、TWは1kHzくらいに、ずらすことがおこなわれます。

当然、インピーダンスは規定インピーダンスよりアップします。

アップした帯域では、各ユニットへの電圧供給が低下するので、周波数特性の上昇は修正されます。

このようにして、スピーカーエンジニアは周波数特性を測定したり、ヒアリングをおこなって、ネットワーク定数を決めます。

一方、そのようなインピーダンス特性になったスピーカーシステムを定電流アンプにドライブするとどうなるでしょう。

定電流アンプに代表されるものとして、例えばEL34シングルアンプで駆動したら、クロスオーバー付近の帯域にも定電流が流れます。従って、アンプ負荷が軽くなるので、スピーカーにかかる電圧はアップし、その帯域の周波数特性は少し持ち上がります。このあたりが、真空管アンプで聴けばサウンドが暖かく、ゆったりすると言われる所以です。

もちろん、真空管アンプでも多量(20dB以上)のNFBを掛けることが可能なユニットカップルアンプのマッキントッシュMC275とか、OTLアンプは定電圧/定電流アンプの中間的な特性であり、そのあたりがまた、異なるサウンドとなって楽しむことができると言えましょう。

スピーカーの効率とアンプ出力

スピーカーの効率は非常に低く、正確なことは記述できませんが、効率90dBのスピーカーでも効率は1%以下と思われます。

99%以上、ボイスコイルの抵抗で熱になって消費されてしまいます。

このような低効率の原因は、空気を動かして音にすることは大変なのです。

専門的には、振動体のインピーダンスと空気のインピーダンスとのミスマッチングによるものです。振動板の面積が大きくなれば、振動系質量を軽くして、磁気回路の磁束密度が大きくなれば改善されます。最も効果的なのは、振動体にホーンを付けて、インピーダンスマッチングを図ることですが、ホーンを通り抜けるときに反射が発生するので、特有の音色が付くことが少なくありません。

それでも、1W入力を入れて、1m離れた地点で90dBもの大きな音が出てくれれば、それほどのエネルギー消費にはならないと思います。

けれども、近年のスピーカーシステムの効率は、カタログに示す値で88dBと記載されていても、実際に測定してみると(ステレオサウンド168号で掲載されている)カタログ値よりも3dB~4dB低いのです。これは、メーカー側が何とか良い数値を示そうとある程度の良い数値を当てはめているのです。

このことを詮索しても、ほぼすべてのブランドがそうしているので、“みんなでやってしまえば、良いだろう!”という心理があるではないかと思います。

さらに、インピーダンス8Ωスピーカーの実測インピーダンスは、中低域においては4~6Ωと低くなっています。こうなると、1W/8Ωの電圧をスピーカーにアンプパワーを入力させれば、4Ωならば2倍のパワーが入っていることになり、2Wの入力が入っていることになります。

それほど、本当のことを表示しないのは、スピーカー効率が低いことのうしろめたさがあるのかも知れません。

その気持ちは、かつてのWEのスピーカーの効率は20%程度もあったからです。
ホーンドライバーの場合、高効率になるので、このようないわゆる“うそ表示”はないと思われます。

ちなみに、私がスピーカー設計をしていた1960年代では、割と正直な効率表示をカタログに載せていました。

結局、近年のスピーカーシステムは小型化を迫られ、そうかといって周波数特性を狭めることができず、振動面積の小さいユニットを小さいキャビネットに付けることによる低域不足を、振動系を重くして対処しているので、効率は低下しています。

幸い、アンプ出力の増大は可能だったので、ある程度の誇大表示はユーザーにとっても許されたのでしょう。

象徴的なことが、1980年代頃までのスタジオモニターは38cmウーファーを採用した大型システムでした。今はNS-10Mクラスの小型スピーカーが主力です。

少し話がそれましたが、具体的に記してみましょう。

  • 多くのスピーカーシステムの実測平均効率は87dB(公称8Ω表示)くらいです。1m離れた地点で90dBの音を聴こうとすれば、アンプは3dB分、多くパワーをスピーカーに注入しなければなりません。
    そうなると、アンプ出力は2倍の2W必要になります。
    2m離れて90dBの音を聴こうすると、さらに4倍の8Wになります。
    90dBの音は相当うるさい音です(無響室内で聴くと部屋の反射がないので、何とか我慢できる音です)。
    ところが、普通の部屋で聴くと反射が多くなるので、我慢できないくらいのうるさい音になります。ff時の再生のためには、アンプ出力は8Wもあれば良いのです。
  • 上記の話は、現実をはるかに超えたうるさい音の世界です。
    皆さん、ff時、80dB程度が近所迷惑にならない限界と思います。
    そうなると、10dB下がるとアンプ出力は1/10の0.8Wあれば充分です。
    そして、皆さんの聴いている平均音圧レベルはさらに10dB下がった音量と思われます。アンプは0.08W(80mW)になります。そのときのアンプ出力電圧に換算すると、0.8V(8Ωスピーカー)と小さい値になることが分かります。
  • 遮音をしっかり施した大きなリスニングルーム(14畳とか)を持てる方なら、4mくらい離れて聴くと、2mの場合の4倍の32Wになります。
    せいぜい、30Wの出力を有するアンプがあれば、99%の方は満足できるでしょう。
  • けれども、オーディオ界には、100Wとか200Wとかのハイパワーがそれなりに売れています。これは3000ccの車で時速40kmで走行するような感じを楽しんでいるようなものです。
  • 一方、50kgのヘビーウエイトの純Aクラスアンプも同時に売れているということは興味深い現象です。細かい話ですが、純Aクラス、50W/8Ωのアンプもスピーカーのインピーダンスが先述のように下がってしまうと、ABクラス動作になってしまいますし、アイドリング時を含めた消費電力は膨大で、夏季には使用を避けたいものです。
  • マスターズのAクラス動作アンプは、マッチングトランスによってアンプは80Ω以上の負荷で動作するので、消費電力は通常のアンプより少ないくらいで、Aクラス領域で動作しています。
    このようなアンプは大げさに言えば、マスターズにあるだけです。
  • マッキントッシュの半導体トランス付きアンプは、逆にABクラスで動作するようにハイパワーを維持する目的で採用されていると想像します。


戦後日本の音楽系譜

これまでブログで戦後直後の音楽の流れを少し記述しました。

1960年代頃まで、日本のポップシーンは欧米、特にアメリカからの音楽の影響を強く受けて、ラジオ放送ではその紹介が主な内容でした。

私の感じでは、1970年代になってステレオ装置が家庭に普及し、ステレオレコードを聴くようになったり、さらにTVで音楽番組に人気が出てきたりして、日本人の作詞・作曲による音楽がメインとなってきました。

各レコード会社での録音、レコード化がホットになってきました。

日本の音楽シーン

演歌では、遠藤実、船村徹に名曲が生まれました。

そして、ポップな音楽の流れを汲んだ、筒美京平、三木たかし、浜圭介、平尾昌晃、宮川泰、いずみたく、村井邦彦、浜口庫之助、すぎやまこういち、川口真、小林亜星、猪俣公章、都倉俊一などなどです。

そしてフォークの流れもあるシンガーソングライターから名曲が生まれました。ユーミン、宇崎竜童、桑田佳祐、吉田拓郎、南こうせつ、来生たかお、谷村新司、堀内孝雄、小田和正、五輪真弓、中島みゆき、松任谷由美、宇多田ヒカル、と欧米音楽はサブ的存在になってしまったと思ったら、ラップミュージックの影響が近年のポップミュージックの中心になりつつあります。

このあたり、これまでの日本音楽に愛着を覚えた世代と、いわゆる団塊ジュニア世代との乖離が始まっているようです。

一方、古賀正夫、遠藤実、船村徹等作曲の演歌は下火になってしまいました。やはり、四・七抜きの演歌5音階からはこれ以上、ユニークなメロディは生まれないのでしょうか。

近年、演歌歌手は苦労しています。売れる気配は、なかなかないでしょうか?
何か、東南アジアからの近親音階をアレンジして、魅力あるメロディが生まれることを期待します。

そして、日本が世界に誇るアニメのアニメミュージックというジャンルが出てきて、若い方々に人気がありますが、団塊世代中心の方々は付いていけません。私もその一人です。

話をぐっと、上記音楽から遠くなる音楽として、クラシックジャンルはいかがでしょうか?
戦後のにぎわいはワルター/コロムビア交響楽団から始まったと言えるでしょう。
引退したワルターのために録音用オケでステレオ録音したレコードは、日本では空前のヒットとなりました。
ストリングスはわずか2プルト(各4人)にも関わらず、それなりにきれいな音で録れています。
ベートーベン“田園”は大ヒットになりました。
そのうち、DECCA(ロンドン)のカルショウ/ゾフィエンザール/ウィーンフィルのシリーズは録音の良さとオペラ(特にラインの黄金)、有名曲で、好評を博しました。

私もお小遣いを工面して買いました。

そのうち、カラヤン/ベルリンフィル、バーンステイン/NYフィル、クレンペラー/フィルハーモニア、録音が多かったロンドン響、アムステルダム、フランス国立、ボストン交響、などなど、素晴らしい名演、名盤がいっぱい。
ところが、CDが出てきた1982年以降、デジタル録音ソースに切り替わり、新規需要をレコード各社は見込んでいました。
ところが、次々とCD盤が登場したものの、どうも魅力のない、違和感のあるサウンドに感じたのはあったと思います。

そのような状況で、SACD(100kHzまで再生できる)が登場しましたが、それも期待したほどではなかったです。

次第に、クラシックレコード会社は解散・統合するはめになって、今や、大手はユニバーサルミュージックにシュリンクせざるを得なかったように思えます。当然、費用のかさむオーケストラのセッション録音は激減して、コンサートと同時、いわゆるライブ録音ものをリリースしているのがここ20年の傾向です。もちろん、近年のクラシック演奏がカラヤン、バーンステイン等の名指揮者に及ばないことも影響していることは確かです。

アナログマスターテープから、マスタリング作業でリリースしたソースは評判が良く、ますます、新セッション録音がやりにくくなってきています。

音楽ソフトあってのオーディオ趣味です。

若い方々は、すでにクラシックでも新しいジャンル(例えば、ピアノソロ、ギターソロ等)に魅力を感じているのではないかと勝手に推測しています。

年寄の独り言で、“昔は良かった!”ということですめば良いと思っています。

音の大きさとアンプ出力とスピーカー効率

皆さん、音の大きさの単位はデシベルというのはご存じと思います。
詳しく言うと、空気振動の振幅を示します。
その感じ方は、対数的であり、リニア単位であらわすと天文学的な数字になってしまいます。
デシは1/10、ベルは電話機発明者のベルから取っています。

ところで、まったく音のない世界は真空空間ですから、宇宙での爆発も音は聴きえません(まして、宇宙映画で、音楽が聴こえるとか爆音が聴こえるとかいうことはありません)。
従って、我々が体験する静けさは無響室くらいでしょう。
私はスピーカー設計をやっていたので、無響室は嫌になるくらい出入りしての測定経験はあります。
実際、無響室内に測定用マイクを立てて、その音にレベルを測定すると、どう頑張っても(2重扉をしっかり閉める)、そのレベルは30~35dBくらいです。
実際、無響室に入っていると、まったく、音の反射がないので、耳鳴りが聴こえるような変な気持ちになります。
まして、無響室内で会話すると何とも気持ち悪い環境を感じます。

そのような無響室でスピーカーの測定はおこないます。
例えば、周波数特性の測定はJISで定められているので、SPユニット正面から1mの距離に測定用マイクを立てます。
スピーカーにはスイープ発振器の出力が通常、20~20kHまで、1W印加されます(公称8Ωインピーダンスなら、オームの法則から、√8V≒2.82V、4Ωなら、√4=2V)。
その時のスピーカーから出る音(音圧)がマイクに届き、その出力は専用記録装置で読み取ります(測定用入力信号は周波数特性が可視化し易い、スイープ信号:ビートオシレーターでおこなうと、すぐ周波数特性が見られます)。

それでは、どの周波数での出力をスピーカーの効率かというと、普通のスピーカーシステムなら、インピーダンスが低いところ(一番、効率が見かけ上よくなるところ)の数値を公称インピーダンスと言いますが、少しでも効率が良いように見せかけるために、大きめの数値をカタログ等の外部は発表データにしているところもあります。

そうして、分かりやすいように90dB(8Ω)の効率を示すとすると、アンプが1W入力すると、90dBの音が出てくるのです。

無響室に入ってその音を聴くと、大きな音ですが、耐えられる音の大きさです。ところが、無響室から出して、試聴室で聴いてみると、耐えられないくらいのけっこう大きな音に聴こえます。
それはボーズ博士が言うように、10%の音を出せば周りの壁面から反射して、100%の音が出ると言う理論はおそらく正しいでしょう。

一方、戸外に出して、周囲の反射が少なくなると、音の大きさは無響室ほどではないですが、下がります。
このことは、ブラスバンドは戸外でもうるさくないように聴くことができますが、音楽ホール内で聴けば、うるさいくらいの音になります。
オーケストラは戸外演奏では、とても音が小さく、PA(SR)で補強しなければ、聴けたものではありません。

このあたりで、話をアンプ出力とスピーカーの効率、その程度の距離で聴けば良いかな?ということを記述してみましょう。

これまでの記述で、90dBのサウンドはとてもうるさいレベルと言えましょう。
皆さん、普通、スピーカーからの距離は2mくらいです。
そうなると、音の大きさは6dBほど下がります(84dB)になります)。
4m離れたら、さらに6dB下がり、78dBになります。
それでもかなりうるさく、近所迷惑になります。
せいぜい、2mで、80dBを最大音量としても、かなり気を遣うレベルです。
その場合、アンプの出力は、80dB+6dB=86dBに対応すれば良いのです。
アンプのパワーは3dB下がって、1/2で良い計算になりますから、-4dBとなると、0.3Wくらいで充分ということになります。

一方、オーディオ界では、100Wものパワーでも、すごいと思わないという常識があります。
これは、100Wくらいのアンプが、半導体アンプでは割と安価にできてしまうことにあります。
本当を言えば、1W以下で、ローノイズ、低ひずみ、ワイドレンジが望ましいのです。

私の主張したいところはここなのです。
マスターズアンプは、特に一番大切な音量レベルを重視しているアンプです。


オーディオアンプのキモ(かんどころ)

アンプに関して言えば、皆様の関心はアンプ機構部品に多いです。

このことはオーディオ誌で取り上げられているからと思われます。

オーディオライター、オーディオ評論家は、その効果がはっきりしなくとも、何か記事を書かなくてはなりません。

今から40年前、故 長岡鉄男さんは、100V電源の極性による音質差異を指摘しました。
このことは、電源トランスの1次巻線の巻き始め、巻き終わりが変わることによって、1次巻線からの対アース容量がかわることです。

オーディオアンプにとって、ひずみ等の電気特性は変化ありません。

けれども、オーディオメーカーは、電源ケーブルに極性を表示することによって、評論家の指摘に追随しました。

当時、メーカーエンジニアたちは、特にヒアリングすることなく、オーディオ誌に取り上げられれば売れると言われて、そうしました。別に、悪いことではありません!
その後、オーディオマニア・クラフトマニアの皆さんは、シャーシ交流電位を測定して、低いほうが極性が合っているとして、ある程度常識になりましたが、心あるメーカーは、聴いてみて気に入ったほうでお使いくださいと、記述している良心的な取説もあります。
(熱心なクラフトアンプマニアの方々はこの現象を信じている方が少なくありません。)

参考になりますが、医療用の電源トランスはコアに厚い絶縁紙を巻いて、巻線のストレーキャパシティをゼロになるくらい小さくしています。患者に万が一、静電的に感電しないように。この仕様の電源トランスを使うと、長岡鉄男さんの指摘する現象はなくなると言っても良いでしょう。具体的には橋本電気が納入していた医療用トランスはそのようなノウハウが詰め込まれていたようです。

次に、電源ケーブルが35年前くらいから、ACインレット付きとなりました。この傾向は海外電気機器ではこうしたほうが取り扱いに便利だからです。

この機会を見逃さなかったのがアクセサリー関係業者です。

彼等は、すぐに特別の電源ケーブルを作りました。

さて、アンプの電源ケーブルは180cm程度です。一方、100V家庭内配線はFケーブルで、柱状トランスから20m程度あります。一方、電源トランスの1次巻線は、100Wクラスのアンプでは20m程度あります。それぞれの銅線純度は4N程度です。

180cmmの電源ケーブルに6N、7Nとか、ハイブリッド銅線とか、特殊被覆材料を採用して高額なケーブルを作って、販売して、利益を得て活動しており、今やオーディオ産業において、欠かさない分野になっています。

私は、特にこだわらす、許容電流に余裕のあるケーブルなら問題ないと思います。

アンプのアイドリング時の消費電力は10W~30W程度(純Aクラスアンプを除き)です。大きな音になったところでも、平均消費電力は50Wも超えません。純Aクラスアンプは常に最大出力に対応する電力を消費するので、地球温暖化にとっては有害(特に夏季は有害、冬は暖房になるが、)です。

Aクラス動作にこだわるなら、アンプの負荷抵抗を上げて、Aクラスに対応する方式のほうが賢明と思います。
純Aクラスアンプでも、負荷抵抗が下がると(例えば4Ω)、ABクラスに変動せざるを得ません。消費電力は下がりません。

スピーカー端子

1960年代のオーディオアンプの出力端子は、みじめなほど小型で、細いスピーカーケーブルは、小型端子でやっと接続できる代物でした。

これを飛躍的に改善したのが、JBLです。JBLスピーカーの入力端子はスプリング入り構造となって、端子を押して、孔にスピーカーケーブルを入れれば、あとはスプリングの残留応力で固定できるものでした。

日本メーカーはすぐさま取り入れ、スピーカーの入力端子、アンプの出力端子はそうなりました。

さらに、1970年代に入ると、アンプ出力端子はねじ止め構造のほうが確実という考えが支配的となり、部品メーカーが安価に2組用の出力端子を商品化しました。それからずっと、その構造は形が大きくなったにせよ、踏襲されました。

けれども、スピーカーケーブルが太く、純度の高い銅ケーブルに対応するには、やや見劣りがするようになりました。

その時期、アンプクラフトマニア用に立派なスピーカーケーブ端子が登場するようになりました。

特に、バナナ端子が使用できるので、スピーカーケーブルをそのように準備しておけば、バナナ端子を差し込めば接続できるようになったし、大型のYラグ端子でも対応できるようになりました。

まだ、オーディオメーカーは原価的にそこまで豪華にできないようです。

というのは、私を含めてメーカー出身エンジニアは、内部配線、プリント基板等を考慮すると充分と考えているからです(アキュフェーズ、LUX、マランツ等、等も同様)。

それほど豪華にしなくとも、充分な低い接触抵抗で、高いDFも実現できるからです。けれども、自分のアンプを格好よく、豪華に見えるようにしたいという欲求は理解できますので、マスターズでは、金メッキ、バナナプラグ対応端子が標準です。それ以上をご希望の場合は、お客様より支給下されば、対応するようになっております。

RCA端子

そもそも、RCA端子は今やなき名門ブランドRCAが開発した接続端子です。ホットから先に入ってしまう欠点があるにせよ、ホットの周りをグランド側でシールドされる工夫がされています。今なお、使われる理由が理解できるでしょう。

但し、メーカー向けのRCA端子は間隔が18mm程度しかなく、太いRCAケーブルが差しにくいです。マスターズアンプでは、間隔を充分に広げて対応しています。

整流回路

AC商用電源をトランス使って、アンプ電源電圧に対応して2次巻線AC電圧/取り出せる電流を設定して、半導体ダイオードにより整流するのが普通です。通常の半導体ダイオードは約1V程度の電圧降下があります。

また、ダイオードのON/OFFにより、電磁波ノイズが発生します。

このノイズは安全規格にひっかかるほどあり、電磁波吸収用コンデンサーの設置は必須です。
真空管整流では発生しません。

また、電圧降下が飛躍的に低いショットキーダイオードは整流効率がアップしますが、逆流する期間があり、考慮しておくことが必要です。

ファーストリカバリーダイオードは、100kHz近辺で整流するスイッチング電源に対応して開発されたもので、50/60Hz整流に採用しても、ほとんど意味がありません。

整流用コンデンサー

整流するためにリップル成分を吸収するコンデンサーは重要です。充分なリップル除去となると、アルミ電解コンがメインとなります。

近年のアルミ箔エッチング技術の進歩は著しく、近年の電解コンサイズはかつての数分の一程度のサイズです。このように電気分解作用は表面積が大きいほど、静電容量がとれるのです。但し、残留抵抗成分は小さくはならず、増大します。電源インピーダンスが下がらないことになり、アンプ回路動作の安定性にはマイナスです。

一方、昔ながらのエッチングしない箔(プレーン箔)のケミコンは、もはや市販されてはおりません。静電容量がとれないからです。

けれども、電解コンにプレーン箔電解コンデンサーにパラレル接続すると、内部抵抗が低く、容量の取れる整流コンデンサー回路が成立します。

もはや、ブロックタイプのケミコンより、上記のようなパラレル接続方法のほうが結果的に良好な音質になるようです。マスターズアンプではたまたま、プレーン箔ケミコンをエルナーに試作してもらったものを在庫しているので、そうしています。そして、さらに高周波対応として、フィルムコンもパラレル接続しています。

CR部品

アンプ回路の主要受動部品はコンデンサーと抵抗です。

回路定数が決まったら、次はどのような部品を選択するかになります。

この作業は、交換して、ヒアリングを繰り返すのが一般的です。アンプメーカーの設計者間では、“謙虚”に、“卑下”されての意味を含んで、“チェンジニア”と呼ばれていることがあります。

そうは言っても、アンプクラフトマニアにとっては、部品選択・交換は興味あることで、今なお、重大関心事です。

かつて、評論家 故 金子英男さんは部品知識に詳しく、部品メーカーとかアンプメーカーの関係者が、開発を委託した関係になっていた時期がありました。

特に、ニチコン、ニッケミ、エルナー、日立コンの電解コンメーカーは、そのような関係になっていたこと(数年)がありました。

フィルムメーカーも2~3社、頼った時期があり、この結果、Vコン、ラムダコンなどが生まれました。

理研抵抗社は抵抗にリード金メッキ等の工夫を加えて、RM抵抗が生まれました。
金子英男さんは毎年、バイロイト音楽祭に行ったり、N響の定期会員になっていたりして、聴覚を研ぎ澄ましていました。

ここ20年、このようなことは無くなったのは、それほどオーディオアンプが売れなくなったからです。従って、各メーカーが採用しているCRは特殊なものではなく、いわゆる、一般品です。

ケミコンメーカーにしても、カスタムコンを依頼されても、数量が少ないので、外装紙にカスタム印字する程度しか対応できないです。

その点では、アンプクラフトファンのほうが、気に入ったり良いと思った部品を、それら販売している専門店から入手して楽しむことができます。

とうとうディスコンとなったSEコン(@¥2,000くらいする)はその最たる部品でしょう。 

マスターズアンプでは、上述したプレーン箔ケミコンの並列使いほか、特別な部品は採用していないです。

マスターズアンプでは、位相補償用小容量コンデンサーは2個。ステレオアンプしか使うところがないので、コストアップにはなりません。オープンループ特性の発振安定度が高く、従って、NFB量が少ないからです。

配線材

電源ケーブル、スピーカーケーブルの高級化が広がっています。

それでは、アンプ内の配線材をアンプメーカーはどう考えているのでしょうか?

オーディオアンプはプリント基板化が進んでいるので、配線は基板―端子間が主要と言えましょう。特に、例えば、アキュフェーズアンプに特別なケーブルを採用したとの噂は聞いたことはありません。

アンプ内の接続用配線には、組立工数を減らすためにマルチケーブルを採用して、ケーブルのハンダ付けをしないで端子化することもおこなわれます。

マスターズアンプでは、配線ケーブルは錫メッキなしの被覆より線を採用しています。特に個性(くせ)がなく、これで充分と思います。

まれに、内部配線材にリクエストする方がおられますが、支給下されば、採用できる箇所には採用します。音質がどう変化したかは、コメントしません。

ここまで、拙文をお読みくださり、ありがとうございます。

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