イシノラボの近くにお住まいのSさんは、MJ誌 リスニングルームに登場したこともあるオーディオ大好き、音楽大好きな、お方です。Sさんはいろいろな遍歴の結果、ここ数年、ALTEC A7のスピーカに、フルバランス・パワーアンプ“MASTERS BA-225FB/S”(カスタム品)をベースに日立のTO―3型MOSFETを搭載したカスタムアンプで、バランス伝送,増幅で使っておられました。
ALTEC A7スピーカは100dB以上の高効率なので、残留ノイズを極力少なくして音楽情報を充分に味わいたいというご要望でした。
これまでお使いのプリアンプも充分ローノイズでしたが、今回さらにピュアなサウンドに浸りたいということでした。また、深夜でも小音量で聴きたいとのことで、ノイズが発生しない、トランス式パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999FBS”のご注文を頂きました。カスタム部分は、L/Rチャンネルにバランスボリウムを兼ねたボリュームを設置したいということで、そのようなご希望に応えました。
早速Sさんからご感想をいただきました。要旨をご紹介させていただきます。
イシノラボのパッシブプリのサウンドのパフォーマンスは、パワーアンプをバッテリードライブアンプに致しますと、まさにマイクセッティングが分かってくるようなリアルさで、音楽の持つエネルギーを再現してくれます。けれども、バッテリー充電の扱いは±2電源ですので、このあたりをご理解いただく方がお使いになれます。また、充電の手間(2~3週間に1回くらい)をこまめにおこなっていただく手間がかかります。しかしこの手間を惜しまずに行っていただければ、このような素晴らしいサウンドが楽しめます。
手間をかけることなくリアルサウンドを体験したいという場合は、はじめは100V電源による外部電源方式で始められるのもよろしいかと思います。
プリメインアンプ“MASTERS AU-880L”は10W+10Wのパワーで、横幅330mmのコンパクトなプリメインアンプです。
発売して半年くらい経ちますが、パッシブプリアンプの影に隠れて目立たない存在でした。けれども、自宅でこのアンプを使ってみて、そのパーフォマンスの高さには驚きました。おそらく、世界一、残留ノイズが少なく(LPF80kHzで30μV以下)、ひずみも極小、ワイドレンジで、全くと言って良いほどノイズが少なく、これまでノイズに埋もれてしまった音楽、オーディオ情報を聴ける、その清らかな印象は注目に値します。しかも、アイドリング状態の消費電力は3W、1W程度の大きいサウンドで動作させても、5Wの消費電力にもびっくりです。ちなみにEL34pp真空管アンプでは160Wくらいの電力を消費します。
クラシックでも微妙なホールの空気感、スタジオ録音での、隠し味に入れた微妙な細かいサウンドも聴こえてしまいます。打ち込み音楽でも、ミュージシャンがリスナーには聴いてもらえないような細かいサウンドも検知できてしまいます。 思い切って、3年ぶり?くらいに、“オーディオ・アクセサリー誌 141号”に、このアンプをヒアリング評価に提出してみました。135ページをご覧になると、私が感じていた以上のヒアリングライターの方のコメントが読めると思います。マスターズのような零細なブランドでも、きちんと評価頂いたことにありがたく思っております。
さて、オーディオアンプの仕様で、S/N比について記述されることがあっても、残留ノイズの記載はあまりされません。例えば、8Ω/100Wのアンプで、90dBのS/N比というと、このアンプの残留ノイズは28.3V(100Vの出力電圧)×0.000033≒0.93mVです。ユーザーの方の再生出力は大きい音のときでも、せいぜい1W(8Ω/2.83V)です。そのときの上記アンプを聴いているときのS/N比は、0.93mV÷2.83V≒0.0032→70dBに低下しています。簡単にいうと、最大出力の1/10のパワーで聴けば、20dBもS/N比が低下します。この0.9mVに貴重な音楽情報が埋まってしまっているとも考えられます。 AU-880Lでは、残留ノイズが30μV→0.03mVですから、1Wで聴いたとき、S/N比は100dBを超えます。優れたS/N比ですから、これまでノイズに埋もれた、聴こえないサウンドが聴こえてくるのです。特に、高効率スピーカをお使いの方は、本当の音楽情報を聴き取ることができます。 究極なところでは、MASTERSのパッシブプリアンプである、“MASTERS CA-777S”や“MASTERS CA-999FBS”ならば、プリアンプの残留ノイズはゼロで、音楽情報が全て再生されます。
3月11日の大震災の復興は長い道のりです。先週、皆様のおかげで第3回目の寄付をすることができました。微力ですが、継続していくつもりです。また、被災地地域の方に、早く働く場ができることを願っております。
一方、放射能騒ぎには、日本人の潔癖さ、細かさが、マイナス要因になっているように感じます。ともかく、長期、微量の放射能被爆の医学的データが無く、あるのは、チェルノブイリでも、長期被爆で亡くなった方がいないという事実です。むしろ、そのためのストレスで、放射能被爆よりも免疫力低下によって、DNAが変化してガン化することを憂慮します。将来のある乳幼児の方は、B型肝炎のように30年後に発病することもあるかも知れませんが、少なくとも、60歳以上の方はふるさとの地で、ゆうゆうとお暮らしになることが良いと思っております。わたしが、そこに住めといわれたら、住んでもよいという気持ちです。皆様、もっと、おおらかに生きていきましょう。そして、楽しいオーディオで毎日を過ごしましょう。
最近の注目点として、秋葉原では、ガイガーカウンターが¥49,800くらいで売れています。¥13,900で、ガイガーカウンターのキットも販売されています。ガイガーカウンターは夜光塗料にも反応します。やるせない気持ちです。
カスタムアンプである、フルバランス・パッシブプリアンプ“MASTERS CA-999FB/super A custom”を購入されたユーザーA様から、レポートをお寄せいただきました。長文を、懸命に書いていただきました。非常にありがたいことです。
A様は福島県在住で、今回の大地震では、家財にダメージを受けられました。
A様の了解を得て、レポートを掲載させていただくことにしました。以下、文面です。
大震災後2ヶ月ほど経過して、ようやく部屋も片付きつつ、壊れた一部のオーディオ装置も片付き、オーディオセッティングも8割くらい復帰してきました。 そこで、CA-999FB/super A custom を改めて聴いてみました。アンプの組み合わせは、プリアンプCA-999FB/super A custom、パワーアンプBA-225FB/MOSで、バランス接続での組み合わせとなります。
1.操作系使用感と外観について
スイッチ類やボリュームはスムーズで、つまみ類は使いやすい大きさです。 つまみは、ベーク材の削り出しのようで(※1)、手触りもなめらかですが、滑りにくく、金属製ではないので、寒くなっても冷たく感じないのはありがたいです。
※1 店長注: 実はウッドの削りだしです。これに対して、以下の追加の感想をいただきました。 つまみは木製でしたか!とても良い感触で、操作がとてもしやすく、使って楽しいです。見た面のデザインだけではなく、さわって触れても飽きの来ないデザイン性なのですね。ここまでこだわったデザインとは!驚きました! 普通は、オーディオのつまみを木製にするというのは、思いつきませんでした。とても良い物ですね。目から鱗が落ちました。
全体のデザインは、奇抜なところはまったく無く、シンプルで、優しい趣きで、落ち着きがあって飽きない感じがします。気に入っています。このようなデザインが好きなのは、以前やっていた茶道の影響なのかな。。。 日本やヨーロッパの家具のように、長く使っていけることを意識したデザインと感じます。
私にとって、他社のアンプの多くは、第一印象優先のような、ぱっと見た目は、斬新というかケバイというか・・・・。これじゃ長く使っているうちに飽きちゃうよ~っていうものばかりでした。私にとって、自己主張の強すぎるデザインはどうも苦手です。(^_^;)
2.音質について
パッシブプリアンプは、他のユーザー様と同様意見となってしまいますが、音の切れ、厚み、輪郭、音像、直接音と間接音の分離、直接音ばかりではなく間接音や暗騒音も正確に再生すること、繊細さと静寂、音の鮮度感・・・・あらゆる点で素晴らしいです。
抑揚が大きいというか、演奏のダイナミックレンジが大きいというか、こんなに躍動感があって生き生きとして演奏していたんだ!いままで聴いていた演奏ってなんだったろう?同じソースなのに、このパッシブプリアンプを使っただけで、まるで別物のような演奏で 非常に音質的にも音楽的にも豊かな音で、なによりも音の鮮度が良い!と驚いています!
また、ホールエコーが極端に長く、さらに録音ノイズの多い 「UNE NUIT DE NOEL A NOTRE-DAME DE PARIS」のCDやADも、直接音と間接音と録音ノイズの分離も容易に区別がつきます。高解像度のプリアンプでもあります。パッシブ特有の内部損失の少なさがなせる性能なのでしょうか。
プリアンプ無しでパワーアンプの抵抗ボリュームを使ったときでは、中~高音で、音が荒くなるような濁るようなノイズが乗っかっているようザラついた感じがありました。特に、音量を絞り込むとより強く出ます。 一方、パッシブプリアンプでは、濁りや荒さが大幅に改善されて、音の切れはあるが耳当たりは良い。音の厚みあるが透明感や繊細さも良く表現される。直接音はシャープでフォーカスが鋭いし、間接音は豊かであるがボヤケていない感じがします。暗騒音もしっかりとリアルに再生してくれます。
直接音のリアルさ、演奏後の残響のきれいさ、残響の減衰のきれいさ自然さスムーズさ、そしてその後に訪れる心地よい静寂さは、何よりも美しい!音の一期一会と言ったらよいのか、私がオーディオ的音質で特にこだわりたい、この点について、表現力はすばらしいです!
パッシブプリアンプは、音量を絞り込んでも、透明感や繊細さや定位や音場感が崩れにくいですね。音場も広いし、奥行きも良く出ます。音の立ち上がりは鋭いですがドギツイところは皆無で、自然で耳当たり良く疲れない音だと思います。
抵抗ボリュームでは、音を絞るとステレオ感が急に無くなってきて、高音・低音も極端にやせ細ってダンゴ状の音のようになります。全てラウドネス効果と思っていましたが、そうではなかったのですね。パッシブは抵抗ボリュームほど極端になりにくいところが良いです。 パッシブプリアンプは、中小音量でも楽しめるアンプだと思います。
一方で、パッシブがあまりにも素晴らしいので、抵抗ボリュームを使ったトーン使用時では、音の劣化というか鮮度というかが劣ってしまうかなっと思っていました。(先入観ですね) たしかに厳密には、音の鮮度はパッシブに譲るとしても、トーン使用時でも音の新鮮さは充分に満足できる水準です。バランスタイプのトーンコントロール、将来バッテリー駆動も可能なようにと外部電源化して頂いたのも大きく貢献しているのでしょうか。 この音質でしたらトーンコントロールは気兼ねしないで、どんどん使って、パッシブもトーンの両方とも積極的に使い分けて音楽を楽しむことが出来ます!
トーンコントロールは最大で±10dBとのことで、利得幅を欲張っていないためかボリューム調整がとてもしやすいです。聴くソースによっては、特に録音状態の悪いようなソースでも、左右独立トーンコントロールのおかげで、微妙な調整も容易です。 大手メーカー製の高級アンプでも、あまりお目にかかれない左右独立トーンコントロールですが、特注してよかった!と感じています。音量の左右独立といっても、思ったよりも操作上で面倒なこともありません。
音量については、これも左右独立調節可能で、なおかつ、左右のゲイン可変スイッチを1dBづつ調整可能としたのが威力を発揮しています。 この最強の組み合わせでの音量調整は、繊細に、かつ、かちっとして、あいまいなところは一切無い、正確な音量と左右のバランスが得られて、大いに満足しているところです!
震災後、2ヶ月たっても毎日余震が続くため、アナログディスクをじっくり聴くことが出来ない状況ですが、フォノ用にとサブソニックフィルターを付けて頂きました。 所有するレコードの中には、反ったレコードも多くあるので、サブソニックフィルターがあると安心です!オーディオを始めたときからあるアナログレコードは、今でも重要なソースになっています。反ったレコードの再生では、大きく揺れるスピーカーコーンは、見た目でもヒヤヒヤもので、気が気でなく心臓に悪い・・・・。私にとっては、やはり、精神衛生上でも?サブソニックフィルターは必需品だと感じています。
3.今回使用したCDについて音質の確認のために使用したCDです。
使用したのは、主にCDで、外盤が多くなった構成となりました。 CDもラックが壊れて、散らかり放題になってしまい、お目当てのCDが探しきれない状態でしたが、とりあえず見つかった範囲で聴いてみました。
ジャンルは、古楽、クラシック、邦楽(伝統芸能・民謡)、民俗音楽、ソフトロック?、自然音(環境音?)などと、無節操です。 録音も、SPやLPの復刻、モノラルからデジタル録音と、玉石混淆状態です。聴く音楽(音質や演奏や演奏の質)によっては、オーディオ愛好者になったり、音楽愛好者になったり、両者が混在してみたりと、鑑賞スタイルも変化しています。
アコースティックの演奏が主ですが、このカスタムアンプではジャンルや演奏規模、録音状態を問わず、実に躍動感のある演奏してくれます。そして美しい間接音やリアルな暗騒音と、演奏の後に訪れる静寂の表現も、ジャンルを問わずに表現してくれます。オーディオ愛好者としても音楽愛好者としても、このカスタムアンプは充分満足するアンプであります。 少なくとも、アコースティック系ジャンルについては、音楽のカテゴリーを問わないオールマイティーなアンプであると思います。
当初は、カスタムアンプは費用的なことを考え、注文は迷いに迷っていました。 でも、今までのオーディオ経験を考えると、既存メーカーの既製品アンプに満足できず買い換えたり、デジタルアンプにも手を出して満足できずのありさま・・・・。 結局、費用がかさんでしまい、しかも音質的にも満足できない結果でした。 結局、お金をドブに捨てちゃっていたオーディオ人生です・・・・・涙。
もう、後悔したくないし、他人のためでない、我が家のための趣味のオーディオですし、せっかく大切なお金を使うのなら、長く使えるように、自分の好みを徹底して反映させた特注カスタムアンプを決断しました。思い切って清水の舞台から飛び降りました・・・・。
いよいよ完成間近となり、発送日の打ち合わせの最中に、東日本大震災が発生してしまいました。納品日の延期や代金支払いが遅くなり、御迷惑をお掛けしてしまいました。申し訳ありません。 大きな出来事を経て生まれた、このカスタムアンプは、結果として注文して大正解となりました!
原発が収束していない現状では、不安なことが増えていくばかりです。県内では不本意ながら故郷から避難せざるをえない方々が大勢います。私の住んでいるところでも、これから先どうなるかわかりません。こんな中では趣味のオーディオどころではないのかもしれませんが、心落ち着かせて冷静になって生活するしかありません。 このカスタムアンプで好きな音楽(環境音含む)を聴いて、落ち着くことができます。注文して心から良かったと思うアンプです。いまではすっかり大切な愛機となっています!
最後となりましたが、2011年4月10日の店長のブログで私のカスタムアンプを紹介して頂きましが、実は、カスタムアンプのことよりも、冒頭の原発事故以降の放射線についての記載の方に感動しました。 放射線による風評被害による差別や偏見が高まりつつあるなかで、早くから冷静で科学的、客観的な記載内容を感謝致します。
長文となってしまいましたが、ありがとうございました! 今回もまた、良いアンプをありがとうございました。まずは御礼と御報告まで。