先日、パワーアンプ“MASTERS BA-600/JBL”をバッテリーで動作できないか?との問い合わせがありました。
そのままの回路定数ではうまく動作しないとの返信を出したものの、気になってきました。
まずは12Vバッテリー2個で動作するように回路を検討した結果、うまく動作するようになりました。最大パワーは5.5Wでした。
それでは試作して、ステレオパワーアンプとして聴いてみよう!というやる気が出て、試作機で聴いてみました。
やはり、バッテリーは完全DCですので、そのサウンドは透明感が出て、音の分離、深みが良く感じられます。持ち前のパワフルさも充分すぎるほどです。
再生が難しいとされるピアノソロアルバムもあえて聴いてみました。ユニークなピアニスト、音楽技法の持ち主、清塚信也のソロアルバムです。キラキラ輝く、透明なサウンドはとてもB&W 805MATRIXとは思えないサウンドに聴き惚れました。製品化した場合、¥4万以下でご提供できると思います。
また、パワーをもっと欲しいという指向にはブリッジ回路接続にすると、20W近くのパワーが得られました。
けれども、JBL回路では、ハイパワーを求める場合はアンプの電源電圧を高めるほうがコストパフォーマンスが高いです。なぜなら、アンプの出力は電源電圧の2乗に比例するからです。例えば、電源電圧を±30Vにすれば、アンプ出力は5W×4の20Wを超えます。3倍の±45Vとすれば、45Wの出力が得られます。
ご興味のある方は、お問い合わせください。
JBL SA-600回路の本当のユニークさによる躍動サウンド
約50年前に出現したJBL SA-600アンプは当時としては画期的でした。日本のエンジニア達が衝撃を受けたのは、全段直結コンプリメンタリーを実現した出力ステージのTサーキットでした。
けれども、その先にある、独自性を見逃していたようです。
それは・・・
初段の定電流回路を必要としない、かつ、NFBサミングポイントを明確にす反転回路構成
初段の定電流回路を必要としない、かつ、NFBサミングポイントを明確にす反転回路構成です。
非反転アンプでは、初段回路には定電流回路を入れないと、ひずみが残ります。反転構成回路は入力インピーダンスが高く取れないもどかしさはありますが、プロ機器における10kΩの入力インピーダンスを実現していて、全く問題ありません。
位相マージンを充分とった位相補償回路による発振安定度の見事さ
位相マージンを充分とった位相補償回路による発振安定度の見事さです。
このことは位相特性を回路図から計算してみると、充分な発振マージンが採れています。
唯一の欠点、アイドリング電流の調節ができない
唯一の欠点は、オリジナル回路の温度補償回路がダイオードのみによるので、アイドリング電流の調節ができません。
このことをトランジスタを採用した温度補償回路で解決しているのが、プリメインアンプ“MASTERS AU-600G/JBL”です。
ブート・ストラップ回路の優れた立ち上がり特性
また、2段目に採用されているブート・ストラップ回路は立ち上がり特性を優れたものとします。
けれども、現在、ブート・ストラップを採用したアンプは存在せず、AU-600G/JBLだけです。
私の使っているスピーカーとの組み合わせ
私の使っているスピーカーは、TANNOYアーデン、JBL4320、そして、最近入手したB&W 805MATRIXです。
やはり、ジャズやポップスを聴くとなると、JBL4320にAU-600G/JBLに決まってしまいます。
もちろん、小型のB&W 805MATRIXでもそれなりにパワフルに鳴ってくれます。
TANNOYアーデンでクラシックを聴くには、AU-600G/JBL はあまり使いません。
さらなるパワーをご希望の方へ
さらなるパワーをご希望の方は、30W以上のパワーアンプも製作できるのでご相談下さい。
ともかく、“JBLスピーカーや長岡さんの提唱している高効率アックロードホーンスピーカーには最適!”と言い切れます!
私はサンスイ在籍当時から“JBL SA‐600”アンプに注目しておりました。
その後、サンスイを離れたあとも、関心をもっておりました。
30年前にラジオ技術に、この回路を分析し、改良を加えた回路による試作アンプ記事を掲載させていただいております。
その要旨は以下の通りです。
- コンプリメンタリー回路、全段直結DCアンプ構成。
- TRの電荷蓄積を防止するTサーキット。
- 初段の定電流回路を必要としない、かつ、NFBサミングポイントを明確にする反転回路。
- 位相マージンを充分とった位相補償回路による発振安定度の見事さ。
但し、オリジナル回路の温度補償回路がダイオードのみによるので、アイドリング電流を最適にできる回路に変更してあります。
最近、気が付いたのですが、2段目に採用されているブートストラップ回路もパワフルサウンドに寄与していると感じています。
現在では、どこのアンプにも採用されていません。
こうして近年、作って、希望者にお分けして、もう10台以上となっています。
2/28に納入したJBL改良回路を搭載したアンプのパフォーマンスについてのレポートをM・M様からいただきました。
ご了解をいただきましたので、ご紹介させていただきます。
2・28、11時到着して、3/1の1時まで、14時間、ぶっ通しで聞きました。
ねいろ(音色)が良いです。ホーン乾いた音がしません。
有機的で艶っぽい音です。ねいろのコントラストが良いので、音だけを聞いていても
楽しいし、 4367WXがまるでフルレンジのようにシームレスに鳴るので、音楽のもつ躍動感や陰影もよく出ます。
歌謡曲やジャズ・ロックは当たり前として、クラシックが実に良い塩梅で鳴ります。
駆動力は過不足のない絶妙な感じです、おおらかに、朗々と鳴ります。
70dB以上は音量をあげないので、アンプのパワーは0.01Wしか使っていないせいか、 14時間つかっても、天板は冷たいままです。
僕は今64歳ですが、中学のときに買ってもらった家具調のコンソールステレオを思い出しました。郷愁溢れる音です。
AU-600/JBL(カスタム品)を購入されたM様からのメールです(原文)。
というコメントでした。
このアンプには特に高価な個性のあるようなパーツは採用しておりません。
したがって、今後、リーズナルブルな価格(それでも部品値上がりは凄いですが)でお分けするつもりです。