West-Riverアンプは、その優れた理論と原音再生を目指したアプローチから高い評価をいただいており、私が製作を担当しております。けれども、昨今のデフレ、雇用不安から、SEコンなどの高価音質パーツ搭載機種の販売は苦戦しております。
皆様にもその良さは認めていただけるものの、それに振り向ける費用となると躊躇せざるを得ないようです。
オーディオ・音楽を愛好する方に、経済的負担の少ないWest-Riverアンプがございます。
これが、現在、特別提供品として販売中の“WRP-α6/HCMOS”です。価格もサービスプライス¥60,900(税込)に設定しています。
とりあえず1台のみのご提供ですが、ご好評ならば継続販売も検討中です。
バランス対応なしのバージョンの製作も可能です。この場合、価格は5万円台になります。
現在、このアンプを聴きながら書いています。ウエスタン・エレクトリック製のブロックケミコンを追加投入したせいか、サウンドの重心が下がり、音楽で大切な中低域がしっかりしています。それに、極めてスムーズなサウンドで、聴き疲れしません。
どうぞご注目下さい。
詳細は“West-River WRP-α6/HCMOS”のページをご覧ください。
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フォノイコライザーアンプとAPI改良型アンプユニットについて
このところ、零細規模ゆえに多忙で、なかなかブログが書けなかった状況でした。
今年の景気の悪さは昨年よりもひどいという状況と感じているお方は多いのでないでしょうか。特に、わたしの周辺でも雇用関係で大変になっている方も少なくありません。
そのような状況でも、オーディオを楽しみたいという方は減るという感じではありません。むしろ、少しづつ増えている感じがします。
その代わり、価格の高いものはなかなか売れないようです。イシノラボは、ずっと、良心的な、コストパフォーマンスの高い製品の提供を心がけております。最近は、お財布の負担が比較的軽いフォノ・イコライザーアンプのご注文が増えています。例えば、フォノイコライザアンプ“MASTERS PH-102シリーズ”です。
また、アナログ・レコードを楽しむ団塊ジュニアの方も少なくありません。
MCカートリッジの価格がせめて、DL-103並みの価格であれば、もっとアナログレコードファンは増すでしょう。
ご注文を受けたフォノ・イコライザーアンプのアンプユニットはAPI改良型を指定する方がほとんどです。
このフォノ・イコライザーアンプのサウンドは音楽の乗りが良く、POPSやジャズ系の音楽に向いていると思います。
その秘密は、当たっているかどうかは別として、差動2段+差動プッシュプルという、回路技術者が判断すると、3段増幅回路という難しく、ユニークな回路を採用しているところにあると考えています。
3段増幅回路は普通に設計すると、発振安定度に問題を起こします。そのあたりを綿密な位相補償回路の分析と計算により克服して成り立たせています。
このあたりが、IC OPアンプと全く異なることですし、一般的に広く採用されている2段差動回路とも違うところです。あえて、この回路を考えたAPI創業者のエンジニアに敬意を表します。
この回路に類似するものと言えば、おおげさに言えば、サンスイの07シリーズアンプ以外にないでしょう。
初代のAU―607/707はAPI回路と共通点があります。同じように、3段増幅回路といえましょう。さらに、専門的に言うと、2ポール位相補償回路という自動制御に採用される回路で動作安定度を確保しています。
サンスイはその後、ダイアモンド差動回路、スーパーフィードフォワード、Xバランス回路と発展しましたが、その基本の3段増幅回路と2ポール位相補償という基本は最後まで継続して終りました。このような意味からもAPIモジュールの入手が困難なとき、この回路ユニットを改良して作りたいという努力は、少しは皆様に評価されたかな?と思っております。
これから、11月もあっという間に過ぎ、年末になることでしょう。イシノラボは、価格に応じた特注アンプにも応じられます。“これだけの予算で作って!”というリクエストもどうぞお寄せください!
カスタムパワーアンプ“MASTERS BA―5000M”の完成・納入
少し遡り、カスタムアンプがようやく完成し納入できたお話を致します。
今年6月にお話があって、少しづつ仕様を固めつつ設計・製作を進行したカスタム・パワーアンプがようやくでき上がり、先日10月3日(土)に納品することができました。
このカスタムアンプは、回路構成はBA-225FB/MOSをベースにカスタム化をしたもので、そこにはパワーアンプにベストな性能を発揮するような内容とご注文いただいたTさんの思い入れがたくさん詰まっています。
まずは、このアンプのデザインスケッチをご覧下さい。
アンプの型番はいろいろ悩んだ末、BA-5000Mとしました。Tさんにも了承いただきました。
以下に、このカスタムアンプに取り入れた内容をご紹介します。
【1】 モノラルアンプ構成にする。
ステレオ構成にすると、スペース、コストの面で有利です。しかし、アンプの電源を考慮すると、理想的な方式はモノラルにたどり着きます。片chアンプの動作による電源変動の影響も受けず、常に入力された信号だけに反応して、安定して動作します。この程度はわずかなことかも知れませんが、オーディオ・ファイルの方ならば、感知できると思います。デメリットは、スペースを食うのと、コストアップすることです。Tさんは当初からモノラル構成をリクエストしていたので、理想の形態を採ることになりました。
【2】 シャーシ・ケースを銅製にする。
シャーシ、ケースを銅製にすることは、鉄のような磁気、鉄成分に電気が通ることによるひずみがないので、理想のシャーシになることは確かです。山水でも、かつて、銅メッキシャーシとか、最高級セパレートアンプの入出力端子やケミコンベースに銅板を採用したことがありますが、全面的に銅板を採用したことはありません。
銅は素材として、導電率に優れ、比重も8.9と鉄より重く、共振しにくいです。欠点としては、素材価格がひどく高価であること、機械強度が鉄より弱いこと、塗装の塗料がうまく下地処理しないと、きれいに塗装できないことです。
デザイン担当の大友氏、シャーシ屋さんの社長さんも、銅製シャーシについては、かなり大変という見解でした。しかし、何とか、やってみようということで、構造的に強度がとれるように工夫したりして、何とか、完成にこぎつけました。
具体的メリットは、外部からの電磁誘導・高周波ノイズは銅シャーシ・ケースがショートコイルのかたちになって、遮断されます。この効果は銅の電気抵抗が低いことによるメリットです。電源トランスのコイルに銅バンドが巻いてありますが、この処置は電源トランスの漏洩磁束を外部に出さないように、銅ベルトで遮断する効果です。
【3】 音量調整をトランス式ATT方式にする。
抵抗式ATTは商品化されていますし、その原理はボリュームの代わりに抵抗を切り替えるもので、原理は変わりません。トランス式ATTはトランス巻線の電圧変化効果を応用するもので、ボリュームのような抵抗によるロスがなく、そのサウンドは一味異なって、フレッシュといわれています。けれども、製作するとなると、良質のコアを選定したり、コイルの巻線作業においてたくさんのタップを出さねばならず、非常に製作が大変です。このカスタムアンプには、12接点のタップをつけることとして、減衰比の計算をして、特注に応じてくれた橋本電気の設計スタッフと協議を重ね、立ち上がり特性の優れたパーマロイ・コアに注意深く巻いていくことで、設計が進み、製作に際しては、設計者がトランス巻線の達人と一緒に作業を進めてくれました。でき上がってATTはひずみは検出できず、減衰比は計算どおりぴたり(±0.05dB以内)となりました。
さて、このカスタムアンプはBA-225MOS/FBy回路を使うので、バランス式ATTにしなければなりません。合計4個が必要になります。
このATTはそのままでは外部からの磁界の影響を受ける可能性もあるので、小型のカスタムシールドケースを作り、その中に収納した上で、アメリカ製の充填材を流し込み固定致しました。銅製シャーシとあいまって、外部からの磁束の影響、高周波ノイズの影響もまったくありません。ATTの切換スイッチは最高級セイデンロータリースイッチを採用しています。
電源トランスは漏洩磁束が少ないトロイダルタイプにして、さらに、シールドケースに収め、トランスの振動がシャーシ内に伝導しないように、これもアメリカ製充填材を入れて、振動を吸収しています。
【4】 マッチング・トランス方式とする。そのうえで、Aクラスアンプとする。
これまで、BA―225FB/MOSのアンプにおいて、マッチング・トランス(M-BF8030)の採用で素晴らしい結果が報告されています。私も現地に赴いて、そのユーザーさんの素晴らしいサウンドは3度も確認しております。(3度もお邪魔することは、それだけ聴きに行きたくなるサウンドなのです。近々、その様子はどこかのオーディオ誌に紹介されると聞いております。)
このお話を依頼主の方にお話したところ、即座に、“それでお願いします!”と、言うことで決まりました。このマッチングトランスは80Ω:8Ωと巻線比3:1になっていて、残留ノイズは1/3に少なくなります。その上、アンプの負荷は80Ωとなるので、アンプの負荷は10倍軽くなり、パワーデバイスのひずみが極小となります。4Ωスピーカー使用の場合では40Ω:4Ωとなりますが、この場合でもパワーアンプにとっては軽い負荷となり、ひずみは極小となります。
最大出力は3倍→10dB(1/10)に減衰することになります。
依頼主の方は良質なサウンドを目指されているので、パワーが低下してもまったく構わないということです。今回は8Ω負荷では35Wの実力あるアンプを3.5Wのパワーで使うことになります。極めて贅沢な、マージンが有り余る使い方になります。
また、このマッチングトランスはおそらく、マッキントッシュ真空管アンプ以外にないバイファイラー巻き(1次と2次巻腺とを一緒に巻く、このトランスではさらに3分割巻き)を施しています。
メリットは、このように負荷抵抗が高くなると、その分、Aクラス領域が広がってきます。このアンプで、80Ω負荷において、フルパワーまでAクラス動作にすることがそれほどのヒートシンク温度上昇もなく実現することができました。
【5】 パワーアンプ回路はバランス入力・バランス増幅方式とする。
この回路については、MASTERSアンプのメインになっているので、改めての説明は省略しますが、パワーを小さくしましたので、驚くほど余裕のあるアンプ部・電源部となりました。なお、このカスタムアンプの入力・増幅・出力はすべて、バランス方式になっております。
【6】 さらに、音質優良パーツを採用する。
アンプ内の配線は、シグナル・電源・グランド等のメイン部はご指定により、テフロン被覆・金メッキ・OFC単線ケーブルを採用しています。電源インレット・キャノン端子はフルテックのロジウムメッキ品です。SP端子はこれも超優良大型端子の採用です。
電源スイッチはヒューズの影響を避けるため、ヒューズなしとして、オーディオ用ブレーカースイッチを採用しています。
【7】 グランドへの配慮と振動対策
御依頼主の要請により、スピーカーシステムのユニットグランドとアンプのシャーシグランドを接続できるようになっています。
アンプのボンネットにはラバーを要所に貼り付けて、共振を防止しております。脚は特注して、削りだした鋼製のピンタイプを採用しています。
このように、全体にわたり、カスタム化を加えたカスタムアンプの電気的特性は当然素晴らしく、さらに、極めて素敵なサウンドに仕上がりました。今後、長くお使いになっていただけると確信しています。
できれば製作者も欲しいところですが、昔から“紺屋の白袴”といわれるように、なかなか手が回りません。
お客様のご満足に一番の嬉しさがあります。
“BA-999MOS FBMカスタム”(仮称)のデザイン画
“BA-999MOS FBMカスタム”(仮称)のレイアウト案
(注) “BA-999MOS FBMカスタム”とは、BA-5000Mの開発途中の仮称です。
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