新型フルバランス・パワーアンプ“MASTERS BA―225FB/MOS”は、おかげさまで、大変好評をいただいており、日々、製作に励んでおります。
設計者サイドでは想定していなかったことですが、このアンプはチャンネルアンプシステム愛好者様にも注目されているようです。
その要素を書き出してみますと、
残留ノイズが極めて少ないです。通常の半導体アンプの1/4(12dB)以下のレベルですから、100-110dBもの高効率のホーンドライバーを使用されている方は、普通のアンプでは残留ノイズが気になって困っておられると思います。このような方にもご満足いただけるものと追います。
更に、ホーンドライバーの保護を兼ねて、当社発売のバイファイラー巻きマッチングトランスを、アンプとドライバーの間に入れれば、ノイズレベルは更に10dB下がり、そのレベルは0.02mVと、世界最高といっても過言ではないローノイズで聴けます。
アンプやCDプレーヤーのS/N比スペックに書いてある数値は、聴感補正値です。聴感補正値とは、メーカーの都合の良いように、低域・高域をカットして、S/N比を表示するものです。ちなみに、プロオーディオ業界では、聴感補正なしで表示しています。
聴感補正といいながら、実際のヒアリング感覚とは合いません。マスターズではノイズ表示は補正フィルターなしの、実体を表すのに適した値を表示しています。
上記のアンプは、バランス増幅、バランス電源アンプを構成しています。「それでは、もっとローパワー、ローノイズで、音質も良く、お買い求めやすい価格のアンプは作れないものか?」と思案していました。思いついたのは、“MASTERS BA―225FB/MOS”を半分にして、10Wのアンプとすることです。具体的には、パワーユニットを1個にして、ブリッジバランスをやめて、通常の、いわゆるハーフブリッジ構成アンプです。早速、試作してみました。
結果は、パワー10W、残留ノイズは0.040mVと、驚異的な値となりました。価格はシンプルになった分、お安くできます。おそらく、10万円以下でご提供できると思います。
肝心のサウンドはクリア、ローパワーながらきっちりとスピーカーをグリップします。
近いうちに発売できると思います。バランス入力にも対応する製品になる予定です。ご期待ください!
現在、5998を使ったオーディオアンプはMASTERSブランドだけでないでしょうか?
5998は、本来、レギュレータ管ですが、増幅率が6080の2倍あり、内部抵抗は280Ωと非常に低く、6080と300Bの中間に位置すると思います。
アナログ誌VOL16(音元出版刊)の記事で使われた試作機は、ノグチ・トランス(秋葉原・ラジオデパート地下)にしばらく展示して、真空管ファンに見ていただきました。
そこでいただいたご意見に、「トランスカバーをたたくと、カン、カン、響く」というものがありました。このトランスカバーは、美的にするだけで、特にサウンドには影響しないです。
しかし、そのあたりを指摘される方々のご意見はよく理解できましたので、「それならば、出力トランスをこのケース内に充填しよう」と思い立ちました。
アメリカから取寄せた昔ながらの充填材があります。これは溶かすと臭いので、「危険」「汚い」「きつい」の3K仕事です。このため、今やほとんどのトランスメーカーは2液性の樹脂充填材を使っています。しかしこの昔ながらの充填材は適度の柔らかさを備え、トランスはケース内にフローテイングされ、振動問題からフリーになります。小型ガスコンロでなべに入れた充填材を溶かし(もちろん外でやらないと臭くてたまりません)、出力トランスをトランスケース内に入れ、充填材でフロートさせるのです。
ちょうど、受注いただいたアンプに搭載し、できあがりを聴いてみました。
いやはや効果があるものです。すっきり、そして、出るべきところは出る、といった、さらに素敵なサウンドになったようです。
元々、低内部インピーダンス管と通常のインピーダンス(5kpp)の出力トランスとで真空管アンプを作ると、ひずみは著しく改善され、また、切れ味もよくなることが知られています。とくに低音の自然さは特筆ものです。
¥105,000のリーズナブルなアンプですが、あえて、この3K作業をやっていくつもりです。
アメリカ製充填材。
これをなべに入れて溶かします。
充填材をトランスが入ったケース内に注ぎ込みます。熱くて、湯気が立ってます。
冷えてきた充填材。これでトランスはケース内にフロートされ、振動からフリーになります。
このところ、マスターズブランドのアンプの製作に注力しております。
お客様からしてみれば、「オーダーしたら、すぐ欲しい!」というのがごく自然なご要望と思います。
しかし、マスターズ/イシノラボでは、お客様のお財布にやさしいアンプとするために、在庫負担の少ない受注生産方式を採っております。製作は文字通り“ハンドメード”です。
大好評の“BA―225FB/MOS”の内部を見たお客様から、「物凄い材料費の掛け方にびっくりした!」とのご感想をいただきました。
何しろ、4台のアンプを搭載し、幻のMOSFET、東芝オーディオ用MOSFETが8個も入って、メイン電源トランス2個、フェーズインバーター用トランス1個、それに大容量バランス電源と、満載の内容です。シャーシはメーカー品では採用が難しい1.6mm厚の鋼板を採用して、堅牢な構造です。
このような意味もあって、価格表示も“発売記念特価”としています。
さて、このフルバランス・パワーアンプの基本的な動作を、わかりやすく、再度ご説明させていただきます。
ほとんどのトランジスタアンプはSEPP回路を採用しています。SEPPとはシングル・エンド・プッシュプルの略で、その言葉が示すように、基本的にシングル動作です。従って、常にグランドに対して、信号の反サイクルは電流を吐き出し、もう半サイクルで電流を吸い込んでいます。いわば、列車を1台の機関車で押したり、引いたりしているのです。これでは、スピーカーのドライブ力に力不足かもしれません。自動車に例えれば、4個の車輪のうち、2個を駆動しているのが、通常のトランジスタアンプといえます。それで、充分という考え方もありましょう。
フルバランス・パワーアンプは、常に、2台の機関車で前後から、押したり、引いたりしているようなものです。自動車でいえば、四輪駆動方式ともいえます。
このたび発売になったフルバランス・パワーアンプは、さらに電源までのバランス動作を配慮しています。オーディオアクセサリー誌の紹介記事で“画期的アンプ”と評されたのは、書かれた評論家の方が、動作をよく理解されているからだと思います。