オーディオアンプの電源サポートシステムとして、大げさに言うと、世界初の装置が完成の域に達してきました。さっそく、問い合わせがあり、受注生産のもと、見積りしてみました。
DLCAP(600F/2.5V)そのものが、まだまだ高価で、これを12本搭載する必要があり(±15V電源にする)、それだけで、かなりのコストを占めます。さらに過電圧保護回路を投入し、しっかりしたケースに収めるとなると、その価格は¥15万を超えてしまい、ある意味、アンプより高価になってしまいます。
そこで、上記回路を省略できる定電流・定電圧充電回路を検討してきましたが、開発のメドが立ちました。さらに、収納するケースを秋葉で売っている試作ケースに入れ込むことによって、大幅なコストダウンが可能となる見込みです。この方式ですと、¥9万台で製作できます。ご興味を持たれた方は、是非お問い合わせ下さい。バッテリードライブとは一味違うサウンドが楽しめるはずです。
但し、この装置が使えるアンプ電源電圧は±12-16Vくらいのアンプで、MASTERSのBA-225FBシリーズやWestRiverアンプWRP-α3が最適マッチングします。なお、WRP-α3は既にディスコンになっていましたが、1Fの大型ケミコンの代わりに160000μFのケミコンでよろしければ、カスタムとして、お安く製作できます。お問い合わせ下さい。
更に、電源電圧をお望みの場合はDLCAPを増強しますので、DLCAP本数は増えてコストアップします。目安として、±18-20Vくらいが限度と予測します。
ケミコンレスプリアンプ“MASTERS CA-225/APIシリーズ”については、サイトに掲載後、2-3日で3名の方からの問い合わせがあり、先週は立川方面から、視聴してみたいというお客様が当工房にお越しになられました。工房ですので、きちんとしたリスニングスペースがあるわけでなく、アンプのヒアリング用スペースというべきもので、定員1名です。
強いて良いところを挙げれば、3部屋が空間的に解放されているので、低音がこもらないところでしょう。
さて、ケミコンレスプリアンプは、さらにフィルムコンを追加して、所定の電気的性能(ひずみ,残留ノイズ等)が良好になりました。
また、音質もさらに透明に瑞々しく、奥行き感も良く表現できるようになってきました。電源的にはバッテリーをメインにするのがベストでありましょうが、バッテリには充電という作業が必要で、メンテナンスフリーにするには高価な充電器(約¥5万)が必要という経済的問題があります。
そのポイントからは、電源の整流問題はイオン反応による電解コンデンサより、静電作用だけによるフィルムコン,オイルコンを採用することによって、かなり解決できます。
これまで長くアンプに携わって、どの部分が一番重要かというと電源部分ではないかと思います。なぜなら、アンプは、スピーカに電源から流し込む機械だからです。アンプ増幅回路は、送り込む電流をコントロールする役割ですから、肝心の電源が汚れていたり不安定であったりすれば、いくらアンプ増幅回路が優れていても限界があります。このあたりのテクニカルバランスがアンプ設計においては重要でしょう。すなわち、大局的にオーディオシステム全体を考慮することが大切です。オーディオでも、趣味となるとごく一部について拘るお方がおられますが、これは趣味としては重要ですから、それは良しとしましょう。
話が横にそれてしまい、すみません。
立川方面から来られた方をお迎えして、さっそく視聴いただくことにしました。部品はある程度時間経過しないと安定性能にならないので、20分程度は耳慣らしです。ウォームアップの音楽は、このところ、WRアンプの主宰者・川西氏が録音したクラシック・ストリングスを用いています。デジタル録音ですが、メジャーレコード会社の音源のように、あれこれとデジタルプロセッサ処理をされていないので、非常にフレッシュです。
このサウンドがいかにフレッシュに(臨場感溢れ)聞こえるかで、ケミコンレス・プリアンプのヒアリングではかなり役に立ちます。
次に、お客様が持参されたジャズCDでのヒアリングです。小編成(トリオ)なので、各楽器の近接音がいかにリアル(ここでは非日常的)に感じられるかが聴きどころです。
この音源にはかなりのフレッシュさを感じ取ることができました。この音源はかなり楽しめます。さらに、ジャズ・ボーカルと3曲ほど聴き終わったところで、使用したパワーアンプは、WRアンプのスーパーカスタム・EMeバージョンでした。
日立MOSバージョンはベストに近い歯切れ良さがありますが、EMeバージョンもなかなかすぐれ、いわゆる“こく”のあるサウンドです。
お客様は、パワーアンプは真空管アンプで聴いておられるというので、このときまであった(このあとすぐに販売完了になりました)5998パラシングルアンプを接続しました。5998は今や貴重管で、低内部抵抗・低ひずみ・ある程度の増幅率があり、非常に優れています。但し、その低内部抵抗を生かす出力トランスがないというのが困ったことでした。このアンプはカスタム設計シングルパワーアンプ用バイファイラー巻き(800Ω:4,8Ω)を搭載しているので、5998を十二分に生かすことができたのです。
このアンプと組合わせるとさらにスムーズサウンドになり、お客様は、“まったく違和感がない”と感心してくれました。わたしは、ある意味、天国的な癒し感を感じました。
お客様はそれなりに納得されて、お帰りになられたようです。
今後は、アナログレコードにも力を入れているので、ケミコンレス・プリアンプのフォノイコライザー入りを希望されていました。もちろん対応できます。
いずれ、このアンプはバランス対応まで拡張整備するつもりでおります。
皆様、まだまだ厳しいご時世が続きますが、せっかくの人生ですから、生活を確保した上で、オーディオ趣味で生きている喜びをかみしめましょう。
“生きていて良かった!”と思えるように!
前回(2009年5月5日)のブログでご紹介した、カスタムアンプ“MASTERS BA-999FB/MOSM”を納品したWさんのマンションにお伺いしました。
Wさんは、きらきら輝く相模湾を眺め富士山も仰げる湘南地区にお住まいです。カスタムアンプのバッテリーをお買いになっていただくために、秋葉原にご一緒しました。密閉型バッテリー(20A/h)を購入して、お宅に向かい、バッテリーとカスタムアンプとの接続を行いました。極性を間違うと、アンプ、バッテリー双方にダメージを与えるので、何度も確認をした上で、接続を完了しました。そして、ヒアリングです。
Wさんは秋葉のヨドバシカメラ、オーディオ売り場で、テレサ・テンのCDをご購入されました。これがなかなかのスタジオ的サウンドで、オーディオ的快感があります。
最初はAC電源で聴き続けました。すばらしく気持ちよいサウンドです。なお、WさんのスピーカシステムはALTEC 604系(最新モデル)のものです。効率は100dB以上あります。
しばらくして、電源切換スイッチをバッテリー側に倒すと、バッテリドライブサウンドになります。彼女のサウンドが、側にいるような、肉声のような感じなのです。彼女が生き返って、プライベートで、直ぐ前で唄ってくれているような味わいなのです。
何故そうなるのかは、推測の域を出ませんが、どなたにも理解いただけることとして以下のことが挙げられます。
- 電磁波(スイッチング電源:パソコン電源、インバータ:蛍光灯・冷蔵庫、高周波電磁波:携帯電話機電波・放送電波・その他無線通信電波)が、バッテリには入り込まないこと。
- 整流された直流でなく、完全な直流であること。
- 今回、使用したバッテリーは鉛バッテリーで、電流容量が充分大きければ、トランス電源やスイッチング電源では及ばない低内部インピーダンス特性にもよること。
短所としては、電源電圧が±12Vが標準となるので、ハイパワー対応が難しいことが挙げられます。バランス増幅アンプで20W/8Ωがくらいが限界です。また、充電に際しては、ある程度の電気的知識と充電作業が必要です。但し、おまかせ充電器(¥5万くらい)を購入すれば、この作業はほとんど軽減されます。事実、私がご存じのお2人がこの充電器を使っておられます(主なる用途はフォークリフト、電動トラクタ用とのことです)。
“やっぱりAC100V電源には、何か、ノイズ的なものがあるな!”と感じてしまったのは私だけではなかったようです。そして、バイファイラ巻きマッチングトランスを通すと、更に爽やかになります。これはパワーデバイスへの負荷が軽くなって、ひずみが少なくなり、リニアリティも向上したからだと考えます。
オーディオの趣味は非日常的な体験が貴重でもあると思います。一概に、バッテリドライブのほうが良い/悪いとは申しません。ユーザーの方の好み、これまでの体験等にも左右され、聴覚にはある意味、絶対ということがありません。ともかく、バッテリー電源アンプのサウンドは、“聴き捨てならないサウンド”であることは確かです。
そのあと、充電器の取扱等の実習を行って、自宅に戻ったのは23時過ぎとなりました。