新製品MASTERS BA-225FB/MOSについて、早速のお問い合わせをいただいております。
皆さんに興味を持っていただき、開発者としては嬉しい限りです。
オーディオアンプは、一般的に、グランドに対して増幅作用があるように作られています。これをグランドアンプとか、ハーフブリッジアンプと呼びます。
これは、スピーカをつなぐときに、一方をグランドに、片方をアンプの出力に接続します。そして、入力も同じようにグランドに対して入力されます。したがって、普通のアンプは、入力はグランドに囲まれ、心線に信号が流れるケーブルがつながれることになります。
ところが、プロオーディオのように長い距離を延ばす場合には、これでは、ノイズが混入して、オーディオ信号の品位が落ちてしまいます。そこで、オーディオシグナルを2本用意して、そこに、マイナスとマイナスの信号を用意して、周りをグランドで囲む方法が、バランス伝送と呼ばれるものです。この方法ですと、入力ラインにはノイズが入ろうとしてもキャンセルされて、外部からノイズが入らなくなります。
「MASTERS BA-225FB/MOS」の商品のページに、ブロックダイヤグラムを掲載しました。
ブロックダイアグラムを眺めていただくと、入力3がこれに相当します。
通常の「バランス対応アンプ」というものは、入力部でバランスを通常回路(アンバランス)に変換して、通常のアンプで増幅して、上記のように、スピーカーを動作させるものです。
今回は新製品で採用している、「バランス伝送」についてご説明しました。
次回は「バランス増幅」について、その次は「バランス電源」について解説する予定です。
間もなく、フルバランス構成のパワーアンプ”MASTERS BA-225FB/MOS(仮称)”を発売する予定です。
バランス回路というと、古くはサンスイのXバランスアンプが知られています。バランスアンプの概念を私が提唱したのはスーパーフィードフォワード回路のアンプが浸透して、次の新回路をどうしようかと検討していた1980年の初頭でした。その経緯については、連載「日本オーディオ史」の第29回-31回頃にご紹介する予定です。
アンプの音質に影響を与えるのは電源の影響が大きいのは常識になっていると言って良いでしょう。と言っておきながら、今のオーディオ界では、電源ケーブルや、壁コンセントなど、部品にその関心が移っています。確かに、これらを交換して音色の変化を楽しむにはオーディオ趣味の重要部分であることは否定しません。
アンプの電源が交流から直流に整流して、アンプの電源を構成しますが、ここにある問題点があります。直流にするためには、交流分(リップル)をどう始末するかが重要なのです。今回、製品化に際して最も留意したのもこの点です。通常のアンプでは、このリップル帰着ポイントとアンプのグランド(アース)とが一緒(混入している)になっています。しかも、このグランドは、接続するスピーカーの一方(マイナス)の端子につながります。NFBによって、このリップルを含むノイズはかなり低減されますが、十分ではありません。
その解決の一方法として、2構成のパワーアンプを用意して、一方をスピーカーのプラス側に、一方をマイナス側とすれば、スピーカーにリップルなどのノイズが混入することは格段に少なくなります。バランスアンプ誕生の必要性がここにあります。
具体的には、電源トランスの中点タップには、バランスアンプとすれば、電流は流れません。即ち、電流は、プラスからマイナスと電源トランス中点を通ることなく、アンプグランドも通ることなく、流れて、必要なオーディオシグナルだけがスピーカーに供給されることになります。
先ほど、電源トランスの中点に電流が流れるかどうかを測定してみましたが、定常状態、音楽再生(トランジェント)において、全く流れていませんでした。
従って、電源トランスの中点タップはアンプ電源全体の電位を規定するだけでよく、高抵抗を介して、センタータップとグランド中点がつながっています。つまり、グランド(アース)に関係ない、ピュアは増幅が出来るアンプなのです。他社のバランス構成アンプは多分そこまで考えていないと思います。
このあたりは、オーディオアンプに詳しい方でもすぐにはご理解いただけないかもしれません。実際の新製品をご覧になって、ご理解いただければと思います。
バランス構成アンプというと、とかく超高額アンプになりがちですが、マスターズではリーズナブルプライスをいつも心がけております。予価として、15万円以下とだけ申し上げておきましょう。もちろん、ステレオアンプです。まだまだ、言い足りないことがいっぱいありますが、今回はここまでとします。次回は、より詳細な回路構成を示して、ご紹介する予定です。
昨年12月は完成品アンプの注文を頂き、今年になってからは、部品関係のお問合わせ/ご注文を多く頂いております。
俗にいう2007年問題の年を迎えて、この方々のお財布をあてにしている会社も多いようですが、今後の暮らし、日本の行方、長寿社会を考慮すれば、そんなにお金をオーディオには注げないでしょうし、そうすべきではないでしょう。
イシノラボ/マスターズは、ぎりぎりの価格設定で、皆さんがオーディオを有意義に楽しんでいただくことを望んでいます。
さて、当店は真空管アンプを主体としていますが、盟友、川西氏主宰のウエストリバーアンプ(WRアンプ)の製作も担当しておりますので、トランジスタアンプの設計・製作にも多くの時間を費やしています。また、他にない魅力あるアンプの開発・商品化にも注力しています。
発表したばかりの「MASTERS BA-215TM/STAX」EL34pp(3極管接続)アンプは15W+15Wにパワーを抑えて、良好な音質と、ロングライフを狙った設計です。この方向は真空管アンプの老舗、ウエスギアンプの思想に近いものです。ユニークなのは、長年構想を温めてきた、STAXのイヤースピーカを使えるようにしたことです。今から40年以上以前にSR-3を購入して以来、ずっと愛用しています。その、さわやかで、耳を圧迫しないナチュラルなサウンドはすっかり気に入っています。
また、(有)STAX社長、目黒氏とはサンスイ以来の友人付き合いさせていただいております。
今回、いろいろ試行錯誤を重ねる中で、静電型スピーカはクーロン力で振動するわけですが、そのリニアリティの良さを改めて認識しました。また、DCバイアス電圧によって、サウンドが変わってきます。様々な検討の結果、DC5-80Vが最適と、STAXは判断されたようです。かつてのSR-3はDC300Vくらいで、そのせいか、サウンドが柔らかいです。静電型スピーカは高圧をかける必要がありますが、高抵抗(5M以上)がシリーズで接続されるので、仮に人体に触れても、流れる電流は無視できるほど小さく安全なことも分りました。(但し、実際の製品は、漏電しないように厳重になってます。)
感電を感じても、人体への危険の程度は、人体に流れる電流で決まります。電圧ではありません。ちなみに静電気でパチとなりますが、これは電圧は1万Vくらいありますから、指先から金属へ火花が飛びます。しかし、特別危険というわけではありません。
このパワーアンプ「BA-215TM/STAX」のネーミングは、「ステレオの2chで15W」を表わし、「TM」は「タムラトランス」を搭載していることを表しています。タムラのトランスはUTCトランスの流れをくむせいか、刺激的なサウンドはしません。極めて、スムーズで、さわやかです。その秘密は巻き線方法もあるでしょうが、外装ケース内部にはトランス本体をしっかり固定する金具があり、それでサポートされてから充填されているといいます。このような手間のかかる作業をやれる職人ワザやれる方はもはや数少なく、貴重なものです。